脳情報処理とソフトウェア情報学

私たちの研究室では視知覚とその脳情報処理メカニズムに興味を持って研究しています。ソフトウェア情報学と脳科学は一見関係ないような気がするかもしれませんが,脳は 高性能なコンピュータであるということが分かれば違和感がなくなるのではないでしょうか.生体が生きている間,脳では絶え間なく,そして何十年にもわたって情報処理が行われています.しかも膨大な 容量の記憶を保持するシステムです.体の中では相対的に消費エネルギーは高いですが,一般なコンピュータと比較すると消費エネルギーはとても少なく,エネルギー効率も良いシステムです. 人間を含む生き物の物体認識や感覚情報処理は,正確に瞬時に行われており,脳の仕組みを知ることで情報処理の 脳の研究は生物・医学分野だけでなく,心理学,情報学でも広く行われています.眞田研では感覚情報処理の観点から脳を研究しています.


これから視覚と脳情報処理を学びたいと思う人たちが、どのような本や論文を読めばいいのかをリストアップしました。

眞田研究室の紹介ビデオ等

  • 眞田准教授が高校生向け研究室紹介 夢ナビ ・ 夢ナビ 講義ビデオ
  • 岩手県立大学 2023年度入学案内 に眞田研究室が掲載さています➡ 入学案内
  • 岩手県立大学 2023年度入学案内 在学生の声に4年生法霊崎君が掲載されています.➡ 入学案内
  • 「色彩を科学するー色知覚を作り出す脳の仕組みー」, NIPS市民講座「脳の不思議とサイエンス」, 2016年7月, 岡崎市
研究テーマ

現在は以下に示す3つのテーマに主に取り組んでいます。

畳み込みニューラルネットの中間層の情報表現

 畳み込みニューラルネット(CNN)の階層構造は脳内における視覚情報処理の機構とよく似ていることが知られています。畳み込み層における各ユニットの特徴は、初期視覚野の受容野構造の特性をおおよそ再現しており、学習されたモデルの出力は、人の知覚と同様に入力画像特徴を高い精度で判別することができます。しかしその中間層でどのように情報表現が行われているのかは不明な点が多くあります。脳情報処理でも、初期視覚野~高次視覚野の間の中間レベルにおける情報処理については不明な点が多く、CNNの中間層の各ユニットの特徴を解析することで、脳の視覚情報処理の理解ができる可能性があります。視覚運動情報のメカニズムを探るために、CNN/RNNを用いて中間層の情報表現を解析します。


多感覚情報の統合メカニズム


視覚や聴覚、前庭感覚などの感覚情報は異なる脳領域で分散処理をされ、統合されています。脳の中で行われている多感覚情報の統合によって安定した知覚を作り出していると考えられますが、異種感覚間で思いもよらない影響を及ぼすこともあります。声と口の動きが連動しない腹話術を見ている時や、電車に乗っていて体の動きと窓に映った視覚運動が逆方向だった時などは不思議な感覚になります。 このように感覚間の情報にギャップがあるときなどは脳はどのような振る舞いをするのでしょうか?

多感覚情報の統合処理を理解するために視覚と聴覚などの他の感覚情報を与えて、脳活動(脳波)を計測することで、知覚と脳活動の相関を調べていきます。視覚情報が他の感覚によってどのような影響を受け、また脳活動がどのように変化するのかを解析することで感覚統合のメカニズムを探ります。 感覚統合のメカニズムを理解することで、 共感覚に見られるような、物理的には存在しないものが知覚される現象や、薬物や認知症によって見える幻視がなぜ起こるのかを理解できるようになると期待されます。


複雑視覚運動情報処理 / 視覚運動による質感の情報表現



私たちが生きていく上で物の動きは重要な視覚情報です。周囲の物体(時には天敵)が自分に迫ってくるのか、通り過ぎていくのかを判断することで次にどのような行動を起こすかが決定でき、また動いているものを掴むためにも運動方向や速度を知ることは不可欠です。これまでの神経科学研究で大脳皮質MT野には、物体の運動方向と、速度に選択的に応答する細胞が多数存在することがわかっています。

自然界には一方向の運動だけでなく、複雑な運動が存在します。例えば、バイオロジカルモーションのような、人や動物の骨格の連動運動から何の生き物かを知ることもできるし、波打っている水面を見た時にもそれが液体であるか判断でき、どれくらいの粘性かを知ることができます。このように、一方向の運動だけでなく、様々な運動方向/速度を持つ運動ベクトルが空間的に混在しているような複雑運動によって、私たちは動きを伴う 質感を認識することができます。その流体、もしくは粘性のある物体の質を視覚的に判断することができ、価値判断することができるのです。しかし、複雑運動の情報処理が大脳視覚高次領野のどこで、どのようにされているのかは未だにわかっていません。

視覚運動情報の高次統計量を操作することにより、複雑運動知覚と関連する神経活動を調べていきます。



過去の卒業研究リスト

眞田研究室でこれまで取り組んだ卒業研究一覧

2023年度修了

  • 浦瞬太(学士)
    皮質拡大特性を考慮した深層学習モデルの受容野サイズの偏心度依存性
    Eccentricity dependence of receptive field size on biologically-inspired deep learning model incorporating cortical magnification
  • 佐々木楓(学士)
    深層畳み込みニューラルネットワークモデルにおける彩度による色情報表現への影響
    Effect of saturation on color representation in deep convolutional neural network model
  • 新田憲司(学士)
    Tilt illusionに対する深層学習モデルの応答解析
    Response analysis of deep neural network model induced by Tilt illusion
  • 古川優介(学士)
    PS統計量を用いた動的質感情報の生成方法の開発
    Development of generation method for dynamic texture information using PS-statistics
  • 吉田寛太(学士)
    周波数バイアス画像を用いた学習によるDCNN モデルの方位選択性への影響
    Effect of training DCNN model by frequency biased dataset on orientation selectivity
  • 米川拓東(学士)
    深層畳み込みニューラルネットワークモデルにおける大きさの恒常性の内部表現に関する研究
    Research on representation of size constancy in Deep Convolutional Neural Networks

2022年度修了

  • 川崎修斗(学士)
    深層畳み込みニューラルネットワークモデル内部ユニットの色相の組み合わせに対する応答特性の解析」
    Response properties of internal units to hue combinations in Deep Convolutional Neural Network model
  • 佐竹乙晟(学士)
    脳波計測による視聴覚同時入力が運動知覚に及ぼす影響の解析
    Audio-visual interaction in motion perception measured with EEG
  • 角田遼河(学士)
    視聴覚情報処理における感覚間の知覚時間差の測定
    Time difference in audio-visual information processing in human perception
  • 法霊崎真琉(学士)
    深層畳み込みニューラルネットワーク学習過程と大脳視覚野発達過程の神経科学解析手法による比較
    Comparison between learning process of DCNN and development process of cortical visual system by neurophysiological analysis
  • 高橋 礼(学士)
    3次元運動知覚における視聴覚相互作用の最尤推定モデルによる検証
    Maximum-likelihood estimation of audio-visual integration in 3D motion perception
  • Jamal Shah ( 博士前期課程修了, 修士)
    深層畳み込みニューラルネットワークにおける2次視覚特徴の内部表現に関する研究
    Research on representation of Second-order visual feature in Deep Convolutional Neural Network