教育に使える素材が提供されているサイト

岩手県立大学ソフトウエア情報学部 市川 尚

はじめに

 今回は、本誌の特集(動画やネット上のコンテンツを使ったデジタル教材の活用法) と連動する形で、デジタルコンテンツが提供されているWebサイトを紹介していきま す。ただし、Web上のものはすべてデジタルコンテンツと捉えることができますから 、ここでは教育に使えそうなマルチメディア素材を提供しているサイト(ダウンロードしてきて教材に載せるなど閲覧以外のことに使えるところ)を紹介していきます。 本連載では、授業で使えるデータ・ソフトのページ紹介(2000年4月1999年2月1998年8月)、先月号や各教科の紹介の中でも、いくつかの素材提供サイトを取り上げてきました。
 なお、素材が提供されているサイトを利用する場合は、使用条件に必ず目を通すよ うにして下さい。フリーで利用できると言っていても、何らかの条件がついている場 合がほとんどです。今回紹介しているサイトのほとんどは、著作権は放棄しておらず、 教育利用に限って利用可能というサイトとなっていますので、注意してください。
 今回も、これまで連載で取り上げてこなかったサイトを中心に紹介していきます。

教育に使える素材が提供されているサイト紹介

宮崎大学教育学部附属小学校「子どものための画像データベースプロジェクト」
http://www.fes.miyazaki-u.ac.jp/
 この小学校のホームページには、「画像データベース」が公開されています。子ど もたちが直接利用することを想定している点が特徴的で、教育利用(学校の学習での 利用)に限り著作権フリーとなっているため、授業で安心して利用することができま す。画像の登録数は600程度あるようです。また、参加型データベースとして、自由 に画像を登録できるようになっています。
 画像の検索方法はカテゴリ選択と、ひらがなによる検索の2種類が用意されていま す。カテゴリは、「おさんぽ」「いろ」「ようす」「ふるさと」「かたち」「あいう えお」(50音検索)、「どうぶつ」「しょくぶつ」「さつえい」(撮影者による検索) に分かれており、それぞれを選択することで、対応する画像の一覧が表示されます。 ひらがなによる検索は、ひらがなで言葉を入力すると、一致する画像のサムネイルが 表示されます。各画像には撮影者の情報や、キーワードとその英文が付記されており、 登録してある画像の中には、子どもたちが撮影したものや、楽しいキーワードがつい ているものあります。

NTT東日本・IPAによる「教育用コンテンツ検索サイト」
http://www.match.wnn.or.jp/
 画像・音声・動画などの教育用コンテンツを検索できるサイトです。学習・教育目 的に限り使用することができます。特徴的な機能としては、コンテンツの使用許諾範 囲を検索に指定できるので、あらかじめ想定される使用状況(閲覧のみ可・複製可・ 加工可・ホームページへの掲載可)に合わせたコンテンツを検索対象とすることが可 能となっています。
 このサイトは、平成12年度情報処理振興事業協会(IPA)の教育用画像素材構築事 業、および文部科学省教育用コンテンツ開発事業」で開発されたコンテンツを含む約 10,000点以上の教育用コンテンツが検索できるようになるとのことで、現在はその一 部のコンテンツが検索可能となっています。利用者はユーザ登録を行う必要があり、 IDとパスワードを入力してから、検索システムを使用することになります。
 コンテンツの検索には、かなり多くの条件を指定できるようになっており、ユニー クなものも多いです。指導対象者の所属(小学校1年〜高校3年)、コンテンツの素 材タイプ(動画・静止画・音声・テキスト・ソフトウエア)、表現形態(グラフ、イ ンデックス、スライド、表、図形、シミュレーション、アニメーション)、活用場面 (調べ学習・実験・観察・試験・演習・鑑賞・討論)、用途(統計資料・辞書・アン ケート・クイズ・ノート)、コンテンツの難易度(学年にあったコンテンツ・難しい 内容も含める)、コンテンツの使用許諾範囲を選択することができます。さらにここ から、教科別・特徴別、もしくはキーワードで絞り込んで検索をしていくことになり ます。
 検索結果は、該当するコンテンツのタイトルと説明文、そしてファイルサイズが一 覧表示されます。選択した各条件に対する該当数も、左側のフレームに表示されます。 また、そのコンテンツに関連するコンテンツや言葉のリストを表示することができ、 そこからさらに検索を広げていくことができます。大変充実したサイトであり、今後 の充実が期待されます。

HIROMI先生による「学校の素材集」
http://www01.u-page.so-net.ne.jp/sa2/hiromi97/sozai/sozai.html
 学校のためのホームページ素材を提供しているサイトです。執筆時点では、1327個 の素材が登録されていました。 
 素材は、「アイコン」「文字入りボタン」「GIFアニメ」「壁紙」「ライン」「特 集」に分かれています。例えばアイコンには、教科名、評価印、学校行事、学年・教 室、学校グッズなど、学校に特化した素材が提供されており、学校でWebを公開する 際に役立ちそうなものが揃っています。季節に関連したアイコンも多数あり、Webに 季節感を出すためにも活用できることでしょう。また、アイコンが表示されているペー ジの上部には、色選択のボタンがついており、自分のページの背景色に合ったアイコ ンを探すことができます。
 ここで提供されている素材は、全て使用権フリーとなっていますが、使用上の注意 を一読してから使用するようにしましょう。例えば、HTML上で表示サイズを変更する ことは可能ですが、加工は禁止となっています。また、学校の授業や教員の研修会で 素材を使用したい場合はメールで連絡する必要があるとのことです。

岐阜県生涯学習センター
http://cscns.csc.gifu.gifu.jp/syozo/center/
 このサイトでは、岐阜県に関連したマルチメディア素材を統合して提供していると ころが特徴的です。県内にある博物館等で所蔵している情報など、散在する情報に対 して横断的に検索をかけられるようになっています。このシステムは、岐阜県生涯学 習総合システムLLnet(Information Network SYSTEM for LifeLong learning)と呼ばれており、県民が何かの「学習」をはじめようとするときに「いつ でも」「どこでも」「だれでも」必要な情報を最適に組み合わせて取り出すことがで きることをねらって構築されています。
 ここで提供されている素材は、学校での教育利用(教師による教材作成、児童生徒 による学習成果物等への複製や加工しての取り込み)や公立の教育センター等内での 教員研修での利用(教材作成実習等)が許可されています。
 LLnetは、マルチメディア素材情報、所蔵資料情報、地域情報、ホームページ検索 、共通索引検索システムに分かれています。「マルチメディア素材情報」は、画像を 主体とした素材データベースとなっています。キーワードを入力し、地域や所在(博 物館名等)を選択することで、その結果として、素材(画像のサムネイル)と内容等 のリストが表示され、そこから素材を選択することになります。検索される素材の種類は、生き物(動植物)や歴史的なものなど様々です。「所蔵資料情報」は、岐阜県 の図書館・博物館等の所蔵資料を検索します。キーワードや所在(博物館名等)、分類(歴史、生活、産業等)、時代により検索をかけることができます。検索だけでな く、各館の展示内容の紹介等もあります。また、「共通索引システムLLnavi」として、 県内の所蔵施設、マルチメディア素材、地域情報を横断的に検索できるページも用意 されています。

富士通による情報教育実践サイト「FATHeRS」
http://study.nifty.com/fathers/
 昨年まで開催されていた「インパク」に出展したサイトが継続した形となっていま す。ここからは、情報教育の様々な情報が公開されています。
 素材の提供という観点からは、「教育の部屋」に「実践イラスト集」があります。 富士通が提供しているイラストと、投稿されたイラストの2種類があり、ここで提供 されているイラストは、すべて教育的利用に限り無料で利用することができます。 「イラスト集目次」からは、「行動」と「場所」に分けてイラストが提供されていま す。例えば、行動であれば、「会話しているところ」「プレゼンテーション(発表)し ているところ」「インタビューしているところ」などがあります。場所であれば、 「パソコンのあるところ」「水辺」「機器・場所」などがあります。子どもたちが活 動している様子を描いたイラストが多く、教材を作成する際に、活用できることでし ょう。また、「投稿イラスト集目次」からは、小学校の先生によるプレゼンテーショ ンや調べ学習などのイラストが提供されています。

NASA
http://www.nasa.gov/
 誰も知らない人はいないであろう米国のNASAのサイトです。ここには宇宙に関連す る情報が公開されています。大変充実したサイトでありながら、NASAの映像、動画、 音声の使用は、教育もしくは写真展、 教科書、宇宙関係の展覧会等の目的に限り認 められていることが特徴的です(NASAのロゴマークやシールなどは一般に商業目的使 用は禁じられています)。NASAの映像の中に特定の人物がいる場合は、その人物の許 可を得ることが必要となります。以前からずっと、このような方針をとってきており、 教育にとって大変有用なサイトとなっています。
 コンテンツとしては、例えば「Multimedia Gallery」に素材の種類別に提供されています。その内容としては「Photo Gallery」(写真)と「Video Gallery」(動画)「Audio Gallery」(音声)があります。
 英語が苦手な方は、NASA駐日代表部による日本語公式サイト(http://www.hq.nasa. gov/office/codei/japan/index2.html)も用意されていますので、そこを起点にする とよいでしょう。

自薦他薦のホームページ紹介

Ken's Daddy先生による「English Education」
http://www.bike.ne.jp/daddy/english-edu.html
 自薦のサイトですので、今回のテーマとは関係ありません。このサイトでは、イン ターネットを活用した英語科の授業の実践例を紹介しています。
 中学生の英語力における基礎・基本の定着には,学習者のコミュニケーションへの 関心・意欲・態度をはぐくむことが第一であるという考えのもと,様々な擬似的コミ ュニケーション活動を中心に,よりコミュニカティブな授業を実現するための工夫 (学習者重視のアプローチによるタスク,スキット,ドラマ,歌,漫画など)をして きたそうです。しかし,この実践的コミュニケーション能力は生徒が自分らしさを発 揮して,実際に外国人と英語で「真正なるコミュニケーション」をする体験を通して 培われるものなので,ALTが常駐していない現実のなかでは,「英語教育におけるイ ンターネットの活用授業」にて生徒の自己実現を図ることは,今や必須なものである という考えに至り、「英語教育におけるインターネットの活用授業」をよりグローバ ルに,より深く調査研究してみたとのことです。

おわりに

 今回は、教育に使える素材が提供されているサイトを紹介してきました。素材を利 用する場合は、著作権に配慮する必要がありますが、著作権フリーであったり、教育 に限って素材の利用を認めているサイトが存在します。教材等を作成するという作業 は、技術的にも時間的にも大変な労力となりますし、よりよい教材を作成していくた めにも、そういったサイトをうまく活用してきたいところです。例えば今回紹介した 使用許諾範囲を指定して素材を検索できるように工夫したサイトや、子どもたちが自 由に素材をダウンロードして利用できるサイトなどは、とても有用だと思います。ま た、例えば岐阜県に関連する素材を統合して提供するシステムを構築した試みのよう に、地域で関連する素材を一箇所にまとめて提供していくといった素材を統合してい く動きは、利用者にとって大変歓迎すべきことだと思います。
 教育で使用できる素材を収集・統合し、検索できるデータベースが、今後ますます 整備されることを期待したいと思います。

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