音楽科と図工・美術科関連のホームページ

岩手県立大学ソフトウエア情報学部 市川 尚

はじめに

 今回は、音楽科と図工・美術科関連のホームページ紹介です。本連載では、1999年7月号(音楽科)と、1999年10月号(図工・美術科)で取り上げた内容となります。以前紹介したサイトは、現在でも充実した情報を公開しているようですから、まだ見たことのない方は、今回の紹介と合わせてご覧になってみて下さい。
 音楽科や図工・美術科関連のホームページは、同じ芸術系のためか、発信もとの傾向が似ているように感じます。教師や学校、教育機関、研究会、関連企業だけでなく、個人の趣味のページが大多数を占めます。音楽も美術も役立つページは無数に存在します。
教育という視点に限定すれば、授業実践例や、作品展示、教材(鑑賞、器材解説、技術の習得、作曲家や芸術家等の紹介、歴史学習など背景知識を深めるもの等)、リンク集などです。図工・美術であれば、美術館のページはかなり関連が深いですが、今回の紹介には含めませんでした(1999年8月号で若干取り上げました)。
 今回も、これまで連載で取り上げていないページを中心に紹介します(以前紹介したものにつきましては、バックナンバーのページをご覧ください)。

音楽科と図工・美術科関連のホームページ紹介

●オンライン音楽室プロジェクトによる「オンライン音楽室」(http://www.ongakushitsu.net/)
 このサイトは、平成12年度文部科学省教育用コンテンツ開発事業として委嘱・開発されたWeb上のオンライン音楽室であり、平成13年4月1日から平成16年年3月31日までの3年間運営される予定です。
 「オンライン授業」では、小学校5・6年生用の歌唱と器楽の自習教材が用意されています。例えば歌唱教材では、最終的に合唱ができるようになるために、いくつかのステップを踏みながら学びます。まずは曲全体を聴き、次いで歌声のガイドに従って練習をし、伴奏のみで歌い、表現の工夫をし、最後は合唱の練習として低いパートを覚えます。実際に歌を聞いたり、コンピュータと一緒に歌ったりしながら、歌の習得を目指していく教材です。個人に合わせて音程の高さ等も設定できます。
 また、「音楽年表」では、年代別に作曲家の紹介を参照でき、代表曲を聞くことができるものもあります。「日本の音楽」では、全国各地の郷土音楽を聴いたり、筝・雅楽・長唄のビデオを見ることができます。「世界の音楽」でも、世界各地の民族音楽のビデオを見ることができるようになっています。

●本郷先生による「小学校音楽科「ミニ実践集」」(http://www.interq.or.jp/japan/thon/)
 全国の小学校音楽科の実践を集めているサイトです。できるだけ多くの人から、多くの実践例を収集・公開し、その実践に対する感想を募り、執筆者による改良なども加えながら、それらをみんなの共有財産とすることが目的です。本稿執筆時には、42件の実践が掲載されていました。
 「実践目次」では、これまで投稿された実践の内容を見ることができます(数人の先生が投稿されています)。例えば、「新しい旋律を覚える」「合唱での発声・発音に関する小ネタ集」「音楽会へのコンピュータ利用」「CDを聴いて歌詞を黒板に書こう」「楽しくリコーダー」など、様々です。目次部分には、実践タイトルの横に、感想の投稿数や改訂を行ったかどうかのしるしや、対象学年が付記されています。実際に投稿された感想を踏まえて、改訂された実践もあります。投稿を行うために、実践投稿フォームや感想投稿フォームが用意されています。
 他にも、「資料室」には学習指導要領等の情報が載っており、「リンク集」にもいくつかの音楽関連サイトがリンクされています。

●有限会社ディプスによる「音楽教育チャンネル」(http://www.dipss.com/edu/)
 音楽の授業でコンピュータを活用したいと思っている、音楽の先生方のためのDTM情報サイトです。
 「コンピュータミュージック講座」では、「コンピュータミュージックをはじめましょう」と題して、コンピュータを使って音楽授業をするメリットなどが、参考ページへのリンクと共に解説されています。セッティング編では、コンピュータミュージックを準備する方法が載っています。また、「YAMAHAの学校用シンセサイザー SDX3000講座」として、基本的な操作方法や、ちょっと便利な機能、トラブルへの対処法などが解説されています。「ミュージックプロ基本講座」も徐々に出来つつあるようです。「ホームページ作成講座」では、音楽の流れるホームページの作り方が載っています。
 また、「音楽教育関連リンク集」として、指導案や論文、音楽データ、クラシック作曲家、民族音楽、楽器メーカーなどへのリンクが提供されています。決して大きなリンク集ではありませんが、見やすく厳選されているので、使いやすいです。

●ごんべ007さんによる「なつかしい童謡・唱歌」(http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/warabe.html)
 コンセプトは、「(なるべく)きちんと歌おう鼻歌を」「一人で(可能なら二人で)歌おう鼻歌を」であり、なつかしい・心に残る童謡・唱歌・寮歌・わらべ歌・民謡・歌謡曲・フォークソング等を約1100曲ほど収録しています。JASRACへ届出の上、非営利・無料で著作物の配信を行っているサービスです。
 このサイトの収録曲は、すべて歌詞と演奏がセットで提供されており、歌詞を見ながら、演奏(MIDIデータ)を実際に聞くことができます。また、索引がいろいろと用意されていることが特徴的で、50音から曲名を探す「曲名索引」、歌い出しから探せる「歌い出し索引」、歌詞中に出てくる動物名から検索できる「動物索引」、植物名からできる「植物索引」があります。ジャンル別の目次もあり、こもり歌・童謡・唱歌等に分類されています。
 「たずね歌♪さがし歌」は、思い出せない歌をたずねることができる掲示板で、かなりのにぎわいを見せています。また、歌に関連する切手などを紹介しているコーナーもあります。

●美術教育研究会による「A.E.NET」(http://homepage2.nifty.com/aenetoita/index.html)
 美術教育に携わる教師たちによる研究会のサイトです。この研究会は、大分市の教師が中心となって構成されているようです。研究会の活動を通して出てきた実践報告等が発信されています。美術教師には参考になる情報も多いことでしょう
 「題材・実践」には、教師たちが持ち寄った実践が紹介されています。例えば、「風を集めて」「私の心・カタチ」「毎日の地図」「石と話そう」など、多くの美術教育の実践があります。
 「実習記録」は、教師が実技講習を実施した報告(教材研究)や、そこから発展して、実際に学校で取り組んだ実践が報告されています。例えば、「七輪陶芸に挑戦」「ピンホールカメラに挑戦」などの取り組みがあります。「作品保管庫」には、そういった実践等を通して出来上がった作品が保管され、参照することができます。
 また、「話し合いの記録」では、研究会で行われた話し合いの記録を掲載しています。「研究誌」では、活動の成果を研究誌としてまとめたものをWeb上で公開しています。研究会の「活動計画」なども提供されています。

●「ARAI ART MUSEUM」(http://www.bekkoame.ne.jp/i/yasurou/)
 中学校の美術教師によるサイト(仮想美術館)です。「展示室」には、先生自身の手による、板にアクリルを使った作品やCG作品が公開されています。生徒たちは、美術を教えてくれる先生が、どんな作品を作っているのかに、少なからず興味があるのではないかと思います。そういった生徒たちにも作品を見てもらえばよいと思います(実物を美術室に飾れない場合などに)。
 「美術室」では、短時間教材や授業実践、文化祭の取り組みについてのアイデアと実践を紹介しています。授業実践では、写真のフイルムケースとゴム版画用のゴム版を使ってスタンプを作った「フィルムケース・スタンプ」の実践、グラフィックスソフトを使用して自分の写真を加工する「CG」の実践などがあります。また、文化祭の学年発表で、クラス合同で作成した「垂れ幕アート」や「特大サイコロアート」などが紹介されています。
 その他、「図書室」にはおすすめ本が、「リンク」にはいくつかの美術教師によるサイトが紹介されています。

●沢先生による「SAWAS」(http://member.nifty.ne.jp/sawas/)
 小学校教師によるサイトで、小学校の教師のための、ちょっとした、あーてぃすてぃっく・くりえいてぃぶな空間とのことです。図工の時間等に使えそうなネタが紹介されています。
 「楽しく作っちゃおう!!」では、作者自身がこれまでに作ってきたものを紹介しています。メッセージカードやかぶりもの、プレゼントボックスなどの作り方が詳しく紹介されており、図工の時間だけでなく,お楽しみ会,学級活動などにも参考になります。「ちょっテク」では、飾り文字の書き方や、学年だよりのサンプルなどがあります。「誰でも描けるはずのマンガ講座」には、どうぶつ編とじんぶつ編があり、それぞれの書き方が解説されています。
 「しりとり・あにめ」は、しりとりにそって画像が変化していくもので、どうやって作ったのかが紹介されています。「明るいトイレ・おぺれーしょん」は、トイレのドアをキャンパスに見立てての、お絵描き作品集です。
 また、「SAWAS kids」という子ども用のページも用意されています。子どもたちにも読めるように、上記のコンテンツの一部が、ひらがなで提供されています。

●Taguchi先生による「イタリア美術を調べたい」(http://www2s.biglobe.ne.jp/~toshiyat/)
 このサイトは、現在の中学校美術の教科書のうち、イタリアに関する美術の部分を解説しており、鑑賞学習の発展やおさらいを,中学生ができることを目的としています。
 「美術の歴史」では、イタリア美術の歴史(作品の時代背景)を学ぶことができます。美術のはじめ(旧石器時代)、ギリシャ・ローマ美術、ルネッサンス、バロック、現代美術までが解説されています。堅い解説ではなく、全体的に語り口調であり、キーワード解説も付記されています。
 「作品解説」では、レオナルド・ダ・ビンチの「受胎告知」「最後の晩餐」やミケランジェロの「ダヴィデ像」など、イタリアを代表する芸術家たちの作品紹介があります。作品の画像を見ることができるサイトにも、リンクが張られています。
 「イタリアって」では、感じたままのイタリアが紹介されています。「リンク」には、美術の教科書にのっている作品を見ることができるサイトへのリンクがあります。iモード版のページも用意されています。

●「学校を変えたいあなたへ!!」(http://shinjo.dewa.or.jp/shinyatk/)
 今回のテーマとは直接関係ありませんが、他薦のホームページとして紹介します。かなり長期に渡って連載を続けて来ましたが、他薦は初めてということになると思います。中学校の先生から推薦して頂きました。
推薦理由としては、このサイトは、中学校の現場の先生によって開設されているもので、今学校が抱えている悩みに、さまざまな実践で挑戦的にトライしており、現場の教員が大変参考になるとのことでした。
 このサイトでは、現状の教育の問題に対応していくために、授業改革や人間関係作りの指導の必要性を挙げており、学びの共同体としての土台作り、楽しい授業、これからのPTA活動、生徒会活動、そして人間関係作りのトレーニングの模様など、新しい公教育の姿を、実践事例を通して紹介しています。
 実践事例は、「生徒集会での人間関係づくり」「もっと楽しいPTA活動に変えましょう」「生徒会活動活性化差作戦」「ものにこだわった楽しい授業」「学級・学校通信の書き方」など、さまざまな実践が多数公開されています。

おわりに

 以上、音楽科と図工・美術科関連のホームページを紹介してきました。Web上では、実際に音楽を聴いたり、美術作品を画像で見たりと、実物を見る・聴くには及ばなくとも、作品に接するチャンスは増えたように思います。また、すべてはデジタルデータですから、データの受け渡しや加工を行いながらの共同作業が容易に行えます。
 一方で、音楽や図工・美術の両方とも、著作権の問題が密接に関わってきます。今回見て回ったところでは、JASRACの規定を受けて、音楽のMIDIデータを削除しているという例を多数見かけました。もちろん、許諾を得て運営しているというサイトもありました。通常、他人の作品を勝手にネットから取ってきて加工したり、再配信するようなことは、出来ません。これらの教科では、特に他人の作品を尊重することを、教えていく必要があります。また、子どもたち自身の作品の著作権についても、Web上に公開する際には留意していく必要があるでしょう。


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