岩手県立大学ソフトウエア情報学部 市川 尚
新年度号となるにあたりまして、誌面のレイアウトを変更するとともに、今回からしばらくは、教科別の紹介を行っていく予定です。その第1回目は、理科関連のホームページ紹介です。1997年5月号や、1998年10月号でも取り上げた内容ですので、これが3回目ということになりますが、理科関連のホームページは量的にかなり充実していますので、何回でも紹介できそうな教科のひとつです。
理科関連のホームページは、教育機関(博物館等)、政府機関、学校、教師、企業などさまざまな人・場所から公開されています。特に教師個人からの公開が、他の教科よりも多いとという印象を持ちます。公開されている内容についても、データベース、授業実践例、教材、研究情報、共同学習、リンク集などさまざまです。インターネットを媒介として、教師によるさまざまなコミュティもできあがっているようです。また、近年では技術の進歩により、Web上のインタラクティブな教材が増えてきたようにも感じます。
今回は、これまで紹介していないページを中心に紹介していきます(以前紹介したものにつきましては、バックナンバーのページをご覧ください)。
●JST;科学技術振興事業団(http://www.jst.go.jp/)
JSTは、科学技術に関する情報の配信や、研究・促進など、科学技術振興の総合的な実施機関です。 このサイトからは、科学に関する膨大な情報が公開されています。その中から、今回は特に、「JSTバーチャル博物館」を紹介します。このページは、いくつかの部屋に分かれています。
「デジタルコンテンツ体験室」(サイエンスくるくる)は、宇宙・生命・化学・物理などの分野別に、さまざまなマルチメディア教材が用意されています。例えば、化学なら、「さびの世界を見てみよう」という教材があり、アニメーションを見ながら、さびについて学ぶことができます。
「資料室」には、科学の理解に役立つ資料が公開されています。「科学今日は何の日」は、月日を選択することで、ちょうど同じ日に起こった科学に関する過去の出来事の年表を見ることができるようになっています。授業の前に調べておけば、授業のネタとして使えるかもしれません。他にも、「最進化学技術用語の説明」として、生命、地学、化学、宇宙、コンピュータ等の分野に関する最新の用語の解説を見ることができます。また、「科学技術史に残る科学者100名」として、歴史に残る偉大な科学者を紹介しています。
「QAひろば」は、誰もが参加できるインターネット上の科学クラブとして、子どもが会員登録を行うことで参加できるキッズフォーラム(科学に関する話題を話し合う会議室)や、Q&Aをジャンル別に探すことができる「なぜなに百科」(2000件以上の登録数)があります。
「科学館めぐり」では、日本全国の科学館のホームページ探し出すことができます。他にも、全国各地において、科学実験教室を開催している方々の活動の様子を紹介している「工作・実験室」や、流れ星や月やオーロラなどについて学べる「プラネタリウム」などが公開されています。
●インパク(http://www.inpaku.go.jp/)
インパクという言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、2000年12月31日から2001年12月31日まで開催されるインターネット上の博覧会のことです。パビリオンは、当然ながらWebサイトとなります。総務省大臣官房管理室新千年紀記念行事推進室が進めており、政府、自治体、企業、NPO、個人がパビリオンを出展しています。その中から、いくつか理科に関連するパビリオンを紹介してみたいと思います。各パビリオンへは「インパクマップ」から行くことができます。マップはテーマ別に分かれており、「自然」「科学」などが理科に関連します。
大日本印刷株式会社が提供している「Cloud Works」は、日本全国各地に設置したカメラ(空の様子を映している)とひまわりの画像を連動させたものです。ひまわりの画像と現在の天気を比較しながら見ることができます。3時間ごとに更新されています。
長崎県による「海のお魚大百科」は、名前・すみか・色・形・キーワード等から魚を検索できる図鑑です。特に魚の3D画像を様々な角度から方向を変えて見ることができるので面白いです。
群馬県による「星空と宇宙」では、誕生日の星空を見ることができたり(星座うらないと自分の本当の星座は地軸の傾き等から違っていることがあるらしい)、日付や場所を選んで星空や星座を表示することができます。また、星に関わる用語等を解説している宇宙の大事典、プラネタリウムにいるような解説をしてくれる星空シアターなど盛りだくさんです。
茨城県による「いばらき未来科学館」には、身近な科学の実験の紹介や、インターネット自由研究として、いくつかの学校が調べ学習などに参加しているようです。ウルトラ科学クイズもあります。
インパクには面白そうなパビリオンがたくさんありますので、開催期間中に一度訪れてみてはいかがでしょうか。
●「こうのあきらのがらくた箱」(http://www2.hamajima.co.jp/~nisiki/indexgara.html)
杉並区立科学教育センターの指導員によるホームページで、さまざまな実験等が紹介されています。
「もっと身近にサイエンス」では、実験、工作、モノ活用術の3テーマに分けて、身近に出来る実験・観察が紹介されています。例えば実験には、リモコンの赤外線を見てみよう、空気で空き缶をつぶすなどがあります。図や動画を使って詳細に解説されていますので、再現しやすいと思います。
「理科実験室/準備室」では、生物・物理・化学をはじめとする理科室での実験が紹介されています。実験の中には、ワークシートが公開されているものもあります。学校内の使用に限り、自由に利用できるそうです。
同サイトでは、理科関連のホームページを収録したCD-ROMの販売を行っています(収録数は84サイト)。環境が整っていない、有害情報や接続料金などを気にせずにできるというメリットがあり、面白い試みです。
他にも別館として、「禁断の分解」や、「花の分解」などもあります。デジタルカメラによる顕微鏡撮影のテクニックも紹介されていて参考になります。
●「楠田純一の[理科の部屋]」(http://member.nifty.ne.jp/KUSUDA/)
ニフティーサーブの教育実践フォーラム「理科の部屋」の開設者よるホームページです。「理科の部屋案内」には、理科の部屋のことが詳しく紹介されています。その中で、理科の部屋の利用に関して、いくつかの提案が行われており(実践報告やネタの交換など)、通信を使うことの利点を知ることができて勉強になります。
「実践DB」では,物質とイオン光の学習など、理科の単元リストがあり、いくつかの実践事例が紹介されています。Web上に「教科書」を作っていく取り組みもはじまり、「天気の変化」などが公開されています。
「お薦め実験」として、物理や化学の実験(例えばクリップモーターづくりなど)が紹介されています。
「私の100人リンク集」では、理科の部屋等で知り合った人々のホームページへのリンクが100人分あります(このリンクをたどっても理科関連のホームページが見つかります)。ヒューマンネットワーク(コミュニティ)のすごさや重要性が伝わってきます。
他にも、総合的な学習の時間や、自由研究、ご自身の研究に関する情報なども公開されています。
●RICHOによる「Abstract Club」(http://www.ricoh.co.jp/abs_club/)
Abstract Clubでは、英文技術専門誌の論文・記事の和文要約を行っています。そのコンテンツのひとつとして、Scienceという米国の科学雑誌を、出版社の許可を得て、1995年度の号から和訳しています。和訳については、有志が業務外で行っているとのことです。査読協力者のリストを参照することもできます。内容としては、英語のアブストラクトを翻訳しているものと、英語のアブストラクトとは独立に本文内容から日本語要約を作っているものとがあります。
Scienceの和訳を参照するには、各号のリストがあるので、それを選択すれば表示されます。蓄積されている情報(論文の和訳)に対して、キーワード検索をかけることもできます。
英語が苦手な方には、まだまだ翻訳ソフトは心もとないでしょうから、こういった言葉の壁の橋渡しをしてくれるページは、とてもありがたいものです。科学の最新の研究動向に興味のある方は、このページを利用してみてもよいかもしれません。
●WISE(http://wise.berkeley.edu/)
海外のサイトをひとつだけ紹介したいと思います。WISEは、the Web-based Integrated Science Environmentの略で、カリフォルニアバークレー校の研究チームを中心として、製作・運営されています。
このシステムは、教師が教材を準備し、それを使って児童・生徒が学習し、その評価を行うという一連の流れのすべてをWeb上で行うことができるように設計されています。そのために、教師へのさまざまな機能が用意されており、教師がそれを利用しながら、環境をカスタマイズして利用できます。マラリアや、遺伝子組み替え作物、地震、蛙の奇形などいくつかのプロジェクトがあらかじめ用意されているので、それをそのまま利用することもできますし、編集することも可能です。
システムを利用するには、ユーザ登録が必要で、必ずログインする必要があります。教師が登録すると、自分の生徒の分は、その教師が自由に登録することができます。
すべて英語ですが、完成度が高い取り組みですので、興味のある方は、覗いてみてください。
●内山裕之動物探険ワールド(http://homepage2.nifty.com/hirouchi/index.html)
中学校の理科の先生によるホームページです。自然やとりわけ動物(野鳥)に関心があるそうで、環境に関わる情報が多く公開されています。特に身近な自然へ目を向けて取り組んでいる姿勢がうかがえます。
「自然:兵庫動物探検」では、足かけ3年に渡り、神戸新聞で連載をしたエッセイを見ることができます。また、甲子園干潟に訪れる水鳥(シジキドリなど)についての紹介や、自然観察日記もあります。
「附属住吉中学校の自然」では、勤務校の自然写真アルバムや、そこで出会える動物、草木の一覧表など、学校の生徒たちのために役立ちそうな情報が公開されています。
また、理科授業の実践として、「環境教育授業」というタイトルがついた3つの実践が紹介されています。各実践の内容と関連するページへのリンクが提供されています。「環境テーマ一覧」では、総合的な学習の時間を見据えての環境学習のテーマ設定に関する情報も載っています。
以上、理科関連のホームページを紹介してきました。3回目ではありましたが、充実したページが多く、どのページを載せようかと悩むことができたことは、うれしい限りです。
理科という教科は、特に世の中の動きと関わりが深いので、常に変化し続けているもののひとつです。また、教材に地域差が存在することもあります。そういう意味では、インターネットの時間的・空間的・社会的な制約を乗り越えて情報をやりとりできるという性質は、授業のために役に立つと思われます。さらに、今回紹介した理科の部屋をはじめとして、教師たちのヒューマンネットワークが通信を通して形成されており、少しでも授業をより良くしていこうという熱心さや、そのために外部から見える形で開かれたコミュニティを作っていこうという姿勢が非常に伝わってくる教科でもありました。
本連載では、自薦・他薦のホームページを募集しております。教育に関するものであれば分野は問いませんので、 ichikawa@soft.iwate-pu.ac.jpまで気軽にメールをお送りください。バックナンバーのページ(http://www.iwate-pu.ac.jp/home/ichikawa/new/)も用意しております。
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