岩手県立大学ソフトウエア情報学部助手 市川 尚
今回は「ポートフォリオ」関連のホームページ紹介です。本誌特集と連動する形となっておりますので、ポートフォリオとは何かといった定義や意義等についてはそちらの方をご覧ください(もちろんここで紹介するホームページを見て頂いてもよい訳ですが)。
これまで本連載で紹介してきたホームページの中には、ポートフォリオ評価の視点では作られていないものの、グループ学習の詳細な記録や児童生徒のホームページ作品など、それらしきものも見受けられます。例えば、子どもたちの発信というテーマ(1999年5月号、2000年2月号)では、子どもたち自身によるホームページや、そこに作品を蓄積していく事例を紹介しました。
Web技術は、デジタルポートフォリオを実現するためのプラットフォームとして大変便利です。複数のメディアの情報をまとめられ(すなわちマルチメディア情報が扱え)、機種に依存せず、情報が劣化せず、省スペースで、再利用が容易、手軽に持ち出せるなど、さまざまな利点があります。授業の成果をすべてデジタルにしろと言いたいのではなく、最終的にまとめる際には、Web上に収束できるということです。著作権やプライバシーの問題が絡むなら、イントラネット上や非公開の個人所有でも構わないでしょう。子どもたちがひとつのホームページを持てば、そこが学校生活や授業の成果をすべて記録していくための容器となりえます。海外の学校のように、卒業作品ともなります。
ポートフォリオは、授業の中だけでなく、自己アピールの材料としても利用できます。最近は、AO入試など、自己アピールをさせる面接重視の入試を行うところも増えてきました。自分がやったことを記録していくことには、進路にも頼もしい味方となります。
ポートフォリオ関連のホームページは、定義や方法等の解説、実践報告、実際のポートフォリオを載せているところなどもありましたが、全体としての充実度はまだまだという印象を持ちました(もちろん筆者が発見できなかっただけかもしれませんが)。ポートフォリオという言葉をひとことでも使っている教育系サイトは少なからず存在するものの、日本の教育界ではこの言葉がやっと浸透してきた状態ですから、情報をまとめているようなサイトは非常に少なかったです。なお、ポートフォリオという言葉は、金融(投資)やグラフィック業界等で以前から利用されており、Webを検索すると大半の結果は教育と全く関係のないものが出てくることが現状です。今回は、そのような中でも、ポートフォリオの情報を公開していた教育系ホームページを紹介していきます。
●「かないよしあきのぽーとふぉりお」(http://www5a.biglobe.ne.jp/~kanai/;図1)
熊本で小学校の教諭をしておられる金井先生のホームページです。ポートフォリオを取り入れた授業実践をはじめとして、ポートフォリオに関するさまざまな情報が整理・発信されています。「パーソナルポートフォリオの作成」では、教育実習生に自己紹介をすることを目標に、6時間計画でポートフォリオの作成に取り組んだ5年生の実践が紹介されています。授業の要約、取り組みの流れや児童の感想、その課題が紹介されています。「肥後にわかでポートフォリオ」では、総合的な学習として熊本の伝統芸能である肥後にわかに取り組んでいる途中経過を参照することが出来ます。
また、「ポートフォリオ関連リンク」があり、ポートフォリオの実践などが載っているホームページを中心に10数件ほどリストされており、本稿で紹介しているサイトもいくつか載っています。ポートフォリオ関連のリンク集は希少なので重宝します。「ポートフォリオ関連書籍、雑誌」では、ポートフォリオのことが載っている書籍や雑誌のリストが発信されています。ポートフォリオの話題を語るメーリングリストの紹介もあります。
●takano先生による「地球市民の部屋」(http://village.infoweb.ne.jp/~fwge4929/Default.htm;図2)
「総合学習」のページでは、ポートフォリオを用いた授業実践とその記録、そしてポートフォリオの実物を見ることができます。ここでは、「グローバルシティ神戸〜多文化共生社会をめざして」という、在日外国人について学習する公民の授業の実践が紹介されています。「授業実践報告」には、授業の流れに従って、その内容やワークシート、自己評価表などの授業で利用された材料も載っています。実施の感想や反省もあります。さらに「授業分析」として、授業の概観(班別探求活動の展開,各時間のふり返りと分析)の部分が公開されており、各時間ごとの授業分析や生徒のポートフォリオの記録が載っています。記録には、自己評価の結果や、班の探求計画、ワークシート、各班のプレゼンテーション、ゲストスピーカーのメモに至るまで、授業で生徒が記録したものがほぼ網羅されています。このページは、授業の資料・記録が詳細に提示されており、特にポートフォリオ自体を参照できるという稀なサイトですので、ポートフォリオ実践の参考となることでしょう。また、「新しい評価法(alternative
assessment)としてのポートフォリオ評価法」には、ポートフォリオとは何か、その評価の方法など、ポートフォリオについてまとめられています。
●「鈴木敏恵の未来教育へようこそ」(http://www02.so-net.ne.jp/~s-toshie/;図3)
ポートフォリオ評価とは何かを知ることができるサイトです。ポートフォリオ評価について、様々なサイトからリンクが張られていました。「ポートフォリオ評価」では、ポートフォリオ評価とはどのようなもので、どう評価していけばよいか(手段)、そしてポートフォリオの本質についてなどが解説されています。「ポートフォリオ導入ガイド」では、1人の人間が持つべき3種類のポートフォリオ(課題・個人・身体)の説明や、導入の流れなどを解説した図が載せてあります。導入の流れについては、ポートフォリオの説明からスタートし、学習のプロセスを何でも一元化して時系列に詰め込んでいく「元ポートフォリオ」、そして学び全体を振り返って再構築して、重要な点だけを詰め込む「凝縮ポートフォリオ」にしていく過程が紹介されています。また、「ポートフォリオ記事」では、ポートフォリオに関連した記事を読むことができます。他にも、プロジェクト学習などの解説もあります。また、「鈴木敏恵のバーチャルオフィス」(http://www.suzukitoshie.net/)からも、ポートフォリオ評価に関わる情報が発信されているようです(メールマガジンもあるようです)。
●東京家政学院つくば女子大学「スタディーノート」(http://www.kasei.ac.jp/eco/index-j.html;図4)
既存のソフトを利用したデジタルポートフォリオ作成の例としてこのページを紹介します。ここは、スタディノートという学校教育グループウエア(商品)の情報を発信しているページです。「スタディーノートの紹介」において、ソフトの概要を知ることができます。このソフトは校内ネットワーク(LAN)に接続されたコンピュータで動作し、表現のためのノート機能と、友だちとのやりとりのための電子メール、電子掲示板、データベースの三つの機能があります。「授業実践の事例紹介」では、スタディーノートを利用した小・中学校の授業実践例がPDFファイルにまとめられています。実際に子どもたちが作成したデータベースも載っています。「子どもが作ったホームページ」では、子供達がスタディノートで作成したホームページを見ることもできます。「論文や研究会用の資料」では、スタディーノートを用いたポートフォリオ評価についての論文を参照することができるので、まずはこれらの論文に目を通してから、再びこのサイトの事例紹介等を眺めると、ポートフォリオに関連した実践であるということが見えてくることでしょう。
●Mt. Edgecumbe High
School(http://www.mehs.educ.state.ak.us/mehshome.html;図5)
ポートフォリオ評価については、英米が先進国ですから、英語圏のホームページには情報も豊富に存在しています。例えば、サーチエンジンを用いてportfolio・school・studentあたりで検索してみると、多くの実践事例や、ポートフォリオの情報が載っているホームページを発見することができました。
海外のサイトのひとつの例として、Mt. Edgecumbe高校のホームページを紹介します。このページの「Student portfolio」には、生徒たちがポートフォリオを作成していくための情報がまとめられています。この高校ではポートフォリオをWeb上に作成することになっているようで、ポートフォリオに求められる必定条件や構成要素をはじめとして、あるべきデザインやファイルフォーマットに至るまで、さまざまなことが規定されています。また、学生ポートフォリオの過去の作品(サンプル)やマルチメディア利用のサンプル、HTML作成支援ツールの紹介まであります。実際に作品を見ると、そこには学習したことや、学校生活のこと、履歴など、自分に関するあらゆることがまとめられています。
他にも、ポートフォリオの評価基準を点数化して表を載せていたサイトや、テンプレートが載っているサイトなど、検索結果を少し見てまわっただけでもいろいろな実践事例を発見することができました。興味のある方は、サーチエンジンでの検索を試されてみてはいかがでしょうか?
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図1 「かないよしあきのぽーとふぉりお」
図2 「地球市民の部屋」
図3 「鈴木敏恵の未来教育へようこそ」
図4 「スタディーノート」
図5 「Mt.Edgecumbe High School」
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