1、ホームページの現状・傾向を知る
(1)ホームページの概要
ホームページの現状を知るために、1996年1月17日〜23日(7日間)で第二回の調査を行なった(方法の詳細は第一回調査の報告、市川他、1995を参照)。日本全国の小中高校で公開しているホームページをインターネット上で検索し、発信内容を調べる目的ですべてのホームページに目を通した。
各学校で公開されているホームページの所在を知るために、大阪教育大学の「インターネットと教育」、佐野昭一氏による「日本の全学校のリスト」の2つのリストと、SONYの「WAVE Search」という検索を利用した。特に、大阪教育大学のものは、ページの充実度、更新の頻度からみても、筆者の一番のおすすめである(図1参照)。
図1 大阪教育大学「インターネットと教育」
今回の調査の97%をカバーするおすすめリスト
今回の調査で発見した学校の97%を網羅していた。
検索の結果、ホームページは全部で251件見つかった。その校種別内訳は、図2の通りである。前回95年8月の調査(市川他、1995)の時点では98件、発表直前(95年11月)の件数のみの調査では、181件であったから、計算すると実に1日1件の割合で増加していたことになる。251件のうち、100校プロジェクト参加校が92件あった。
図2 小中高ホームページの件数推移
異なる校種にまたがる学校に関しては、例えば中学高等学校は高校扱いというように、一番上の課程に所属する学校とみなした。
ホームページの設置方法、日本語と英語の情報提供、責任者の提示の有無、更新日についての調査結果を図3から図6に示しておく。
図3 ホームページをどこから立ち上げているのか
独自でたちあげているところは、だいたい100校か付属校であった。 |
図4 責任者の提示はされているか
責任者の提示は、ホームページには最も欠かせないことである。高校だけが若干少ない。 |
図5 更新日から何日たっているか
更新日表示なしが目立つ。 |
図6 どんな言語を使用しているか
英語は、海外の人たちに見てもらいたいなら用意する必要がある。教育課程が上になるに連れて英語が増えていくようである。 |
(2)発信内容の調査
図7の東北学院中学高等学校のホームページを例に、発信内容の調査方法を具体的に述べる。発信内容は、ホームページのリンクをたどりながら、あらかじめ用意したカテゴリ表に照らし合わせて分類した。
例えば、学校の全景写真からスタートする第一画面には、発信内容がリストされている(図7左上)。その中の「学校案内」を選ぶと、「校長挨拶」や「建学の精神」などのリンクがあった(図7右上)。「校長挨拶」をクリックすると、校長先生による挨拶があり、そこでリンクはなくなっていた(図7右下)。これは、カテゴリ「学校紹介」という項目に該当するので、このホームページの情報内容の1つとしてチェックした。また、学校案内の下にある「日本のWWWサーバー一覧」のリンク先は、まったく別のサイトから公開されているホームページだったので、そこから先へは進まず、「リンク」の項目としてチェックした(図7左上)。
図7 東北学院中学高等学校のホームページ
このようにここで言うホームページとは、「他サイトに行かない範囲の、すべてのリンク先を含むもの」とし、それが今回の各ホームページの調査範囲であった。
発信内容のカテゴリ分類の結果を図8に示す。以下、発信内容の特徴を学校レベル、授業レベル、その他に分けて紹介する。
(3)学校レベルの発信内容(図8-1)
(4)授業レベルの発信内容(図8-2)
- 学校で行なっていることなどを紹介していたものは、「子どもの活動」としてまとめた。内容は、行事、プロジェクト、授業実践、とりくみ、海外交流、生活であった。授業実践の紹介は、同じことをしようとしている他の先生方の参考になるだろう。例えば、環境教育の実践例を東中学校(愛媛県)が載せていた。また、海外交流の例として、赤塚山高等学校(兵庫県)は日本の紹介、自分の意見など、海外交流を前提にしたページづくりをしていた。プロジェクトには概要を紹介するだけでなく、実際に得たデータを記録している例もあった。例えば、ネットワーク上の共同プロジェクトである酸性雨プロジェクトは、広島大学附属福山中学・高等学校などがお互いの観測データを載せていた。また、とりくみでは、前橋市立第四中学校がインターネット上で核実験などのアンケートをとった結果を報告していた。
- 学級のレベルで、先生が子どもたちとともに作るページを、「クラス」としてまとめた。学級ごと、教科ごとのページがあった。千葉大学教育学部附属中学校では、テーマを決めて意見を交換する学校間交流の拠点として使っている。このカテゴリは、小学校が非常に得意としている分野である。
- 生徒会の活動などを紹介していたものを、「生徒会」としてまとめた。内容は、生徒会活動、クラブ活動、委員会があり、実際の活動の様子などを紹介していた。クラブ活動の紹介は、他校のクラブとの交流のきっかけとなるかもしれない。また、クラブ紹介や一覧だけでなく、クラブが自分たちでページを作っているところも見かけた(例えば、新宿山吹高等学校)。グラフをみると、教育課程が上になるにしたがって、増えていく。
図8-2 カテゴリ分類の結果(授業レベルの発信内容)
- 子どもたちが作った作品を紹介しているものをまとめて、「作品」とした。
子どもたちの絵やCGなどの作品をのせて紹介している例や、教材や学習の資料として使えそうなデジタル画像資料集がある。平野小学校(滋賀県)の琵琶湖の図鑑シリーズが大変素晴しかった。このカテゴリは、高校より小・中学校が得意としている分野であった。
- インターネットで子どもが情報を収集する際の手助けとなる項目を、「ガイド」とした。インターネット上に散らばったリソースをまとめたリンク集や、インターネットの使い方を教えるページなどがあった。例えば、教科に関係するガイドとして、和歌山大学付属中の「情報収集の部屋」や、福島県葛尾中学校の「インターネット理科の部屋」などがある。インターネットの情報量が多すぎるだけに、情報への道しるべは大切である。子どもたちがWWWをまわるときのガイドとなる。
(5)その他の発信内容(図8-3)
- 個人的に自分のページをもって情報を発信していたものを、「プライベート」とした。教員、子ども、管理者の例が含まれる。個人的に自由にできるページであるから、自分の思ったことを自由に発信しているようであった。
- ホームページの中で、新しく加わった情報について紹介している部分があった。これを「新着情報」とした。ホームページの最新情報のみを集めたページを用意する方法と、最新情報にマークで印をつける方法(図9参照)が見られた。再度来てくれた人が、ホームページの中の新しい情報をいちいち探す必要がないようにしてあげるためのものであり、非常に親切である。そのまま「新着情報ページ」の内容をどんどん蓄積していくと、ホームページの歩みの記録としても使える。本町小学校(神奈川県)はそのよい例である。
図8-3 カテゴリ分類の結果(その他の発信内容)
- 他サイトへリンクをはっているものを、「リンク」としてまとめた。おすすめのホームページ紹介、プロジェクト相互のリンク、地域の関連ホームページ、関連学校とのリンクなどの他に、自分が所属しているプロバイダのホームへのリンクも見られた。リンクを数多くはりめぐらせているホームページも多く、まさにWWW(世界規模のくもの巣状態)になっている。
- 意見感想などを入力する場所を備えてあるホームページは、「返信」に分類した。返信方法としてはアンケートと掲示板があった。アンケートは、ホームページを見に来た人たちからコメントを得る手段である。電子メールのアドレスを書いておくのとは違い、気軽に入力できる選択肢などを用意することにより返信をもらいやすくしている。掲示板は、入力したと同時にページに記録され、誰もが読めるようになるシステムである。例えば、東北学院中学高等学校のページにある掲示板を図10に示しておく。
- 上記のカテゴリのどれにも入らないものを「その他」とした。「その他」に入ったものは、質の善し悪しにかかわらずユニークなものである。他にはない自分のところだけのものを設けるのは、見に来た人にとって関心を引くものである。自分の学校にしかできないようなことを考えてみるとよいだろう。しかし、その他にこだわらなくても、カテゴリには該当するが、自分たちにしかできない内容もあるはずである。
図9 新着情報をマークで示している例
(富山県大門高等学校のホームページより) |
図10 掲示板による返信の受付
(東北学院中学高等学校のホームページより) |
ichikawa@edutech.tohoku-gakuin.ac.jp(Hisashi Ichikawa)