校種別ホームページ紹介
第3回
〜高等学校のホームページ
市川 尚(岩手県立大学ソフトウエア情報学部)
1、はじめに
これまで校種別編として小学校、中学校をを取り上げましてきましたが、今回は残る高校のホームページを紹介します。「インターネットと教育」(http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/educ/)には、高校のホームページが3月14日現在で1147件リストされていました(別の校種にまたがる学校、例えば〜中学高等学校等も含んだ値)。これら数ある高校のホームページのなかから、特色あるものを3つ選んで紹介します。これまでの連載で紹介した学校もありますが、ホームページ活用や作成をするということを念頭におきながら、読み進めていってほしいと思います。
2、高校の特色あるホームページ
●公益情報の発信、千葉県東金女子高等学校ホームページ(http://www.togane-ghs.togane.chiba.jp/;図1)
このホームページでは公益的な情報が数多く発信され、そういった姿勢を顕著に感じることができます。特に『インターネットを利用した共同翻訳プロジェクト』として海外の優良リソースを日本語化しています。日本にも役に立つリソースはたくさんありますが、海外にはもっと多くのリソースが存在しています。その海外のリソースを使用するときにわれわれの前に立ちはだかるのが言語の壁です。英語を訳すことが勉強になる場合もあるでしょうが、大抵の場合、調べものに翻訳をしている時間はありません。われわれの理解できる言葉へ変換してくれることは、大変意義のあるものと言えるでしょう。
このホームページでは、「ザ・ナイン・プラネッツ」として、太陽系9惑星系に関する詳細な解説が載っているものや、「FAUガイド&ネチケット日本語版 」として、電子メールやウェブ上の利用の指針などが解説されているものを翻訳しています。また、「ネチケットホームページ」を作成しており、そのなかでは、インターネットに関するあらゆるネチケットに関しての解説へのリンクをリストしています。このネチケットのページへのリンクが多方面から数多くされていることからも、この情報が非常に有用であることがうかがえます。
インターネットはギブ&テイクの精神の上でなりたっています。情報を受信する以上は、有益と思われる発信は、自分でできる範囲でどんどん発信していくべきでしょう。ただし、自分ではあまり有益とは思わなくても誰かにとっては有益なものがあるかもしれません。完璧な発信をめざそうとせずに、できる範囲で少しずつでもいいから発信をし、更新をしていくということが大切です。この学校は、その発信する情報の題材選びがうまいという印象をもちました。
その他、「コンピュータグラフィックアーツ展」では、過去の優秀な作品が紹介されています。「千葉県の情報」や「美術・工芸関係のサイトのリンク」では、膨大なリンクリストが提供されています。
●海外との交流、静岡県清水国際高等学校ホームページ(http://www.skg.shimizu.shizuoka.jp/;図2)
この学校は海外の学校と様々なプロジェクトを実践しています。ホームページでは英語の方が日本語よりも内容が充実していることからも、海外を意識してインターネットを活用していることがうかがえます。インターネットは世界中のコンピュータネットワークの集合体ですから、世界の国々の人たちと交流をもてることは周知の事実です。そして、ホームページも海外交流に生かすことができるでしょう。この学校は「地球クラブ」という組織を中心に、世界中の人たちと共同作業をすることを目的としてインターネットを利用しているようです。その実践を行った様子が「実施状況」で見ることができ、その結果の産物としての様々な作品をホームページ上で見ることができます。
「 Invitation to the Blue Planet」は、以前本誌でも紹介した、バーチャルクラスルーム ・オン・ザ・ネット・プログラム(同じ校種の違う国の学校どうしが3校でひとつのグループとなり、そのなかでなにかひとつWeb上の作品を共同で作りあげていく)で作成した作品です。HTMLという共通のプラットフォームに立つことで、コラボレーションを可能にしている例です。また、絵本の国際共同編集を行っていて、「The Earless Rabit 」や「International Picture Book "Hevenly Dress"」などの作品を見ることができます。「Snowman Project」として、海外の子どもとお互いに雪だるまの絵を出しあった作品もあります。このように海外との共同作業の作品が充実しており、コラボレーションの可能性をいろいろ見せてくれるホームページです。
「Will you add your story to my pictures? Part 1」では絵だけが載っており、その絵にストーリーを加えていってくれるところを募集しています。「Hello to South Africa!」では、アフリカの学校との交流のために自分たちの学校やみそ汁など日本の文化を紹介しています。
ホームページでは画像等を載せられますから、自分たちのことを相手に紹介する場合には、相手にイメージを与えやすく有効です。高校くらいになってくると、「国際交流」という言葉がキーワードのひとつとしてあげられます。これらは当然小学校、中学校でもありますが、やはりとりくみでは、高校が最も多いという印象を持ちます。そのため、高校のホームページでは、英語を準備しているページや、逆に英語だけ(日本語があったとしても、英語がメイン)のホームページをみかけることもしばしばです。
また、「学校開放講座」として、ホームページ製作基礎講座を受講した生徒たちの作品が載っています。このように講座参加者に自分の簡単なホームページをつくらせて、公開しているところもよく見かけます。特に高等学校では、このような講座の主催もよく行われ、地域に貢献しているようです。地域の子どもたちを対象にしたものから、大人、お年寄りを対象としたものまで様々な講座が行われているようです。
●中学生へむけての発信、高知県安芸高等学校ホームページ(http://kyohou.school.kochi-ed.go.jp/home/aki-h/index_j.html;図3)
このホームページは、こねっとWebページコンテストで最優秀賞を受賞しました。筆者は3月7日に行われたKONET-DAYで授賞式と、発表を見ることができました(テレビ会議で)。そこで言われていたことを踏まえつつ紹介します。
この学校は、的確(ターゲットとニーズを考える)・正確(情報を間違いのないように発信する)・速度(新鮮さを保つ)という3つの観点から情報発信を行っており、実際にホームページからその意識を読み取ることができます。
「Internet News」は、学校の行事等を紹介しており、ほぼ毎日更新されているようです。インターネットでは情報の新鮮さというのは大切な要素のひとつです。例えば、二度目に訪れた人が、まだ情報が変わっていないとわかったら、どうでしょうか。きっともう二度と来てくれなくなることでしょう。リピータのためにも情報の鮮度を保つということが必要です。また、普段は目にすることのない学校の内部を紹介することで、入学を希望する人たち、どこの学校にするか迷っている人たちへの判断材料となります。
学校紹介では、「学校案内(中学生のみなさまへ)」と書かれているように、中学生をターゲットとして発信しています。いわば学校の宣伝としてのインターネット活用と言えるでしょう。特に高校になってくると義務教育ではなくなるので、子どもたちを獲得(特に私立)しようとする時などにひとつの手段として使えます。そのうちホームページの数が増加・充実してくれば、中学校の進路指導の段階で、自分の行きたい学校のホームページを見るというのもあるでしょう(実際に行っているところもあるようです)。そういった意味でも学校紹介は重要です。実際、高校のホームページでは、学校要覧的な発信しているところが多いですが、このホームページではこれらの情報の大部分をカバーしていると言え、典型的な高校ホームページ像を見ることができます。「学校沿革」「設置学科・生徒数・教育課程」「施設紹介」などは、学校の基本的な紹介として、「道路交通案内」といのも遠方から学校を訪問してくる人たちには必要な情報となるでしょう。最低でも住所や連絡先くらいの明記は必要です。他にも「教職員紹介」では、ひとりひとりの先生のプロフィールが載っています。「校歌」(これは特に卒業生がなつかしがって聞くことが多いようですが)、「部活動のページ」もあります。学科紹介のなかでも特に「商学科」では、担当の教員が独自に作っているホームページのようで、さらに内容が豊富な学科紹介になっています。作成者側はなるべく外からは見ることのできない学校の中身を紹介する工夫が求められることでしょう。子どもたちの視点から学校紹介するというのも面白いです。入試情報なども有益な情報です。
さらに紙面が許せば、とりあげて紹介したいホームページはたくさんあります。
・岩手県立岩泉高等学校田野畑校ホームページ(http://www.michinoku.ne.jp/~tanohata/)
生徒たちが中心となってのホームページづくりを行っています。高校生くらいになると、このようなページも現れます。「世界高等学校総合文化祭」と題し、生徒会、運動部、文化部、学校行事、学科・コース等にカテゴリが分かれた、高校生活を探るためのリンクガイドがユニークです。
その他にも、広島大学附属福山中・高等学校ホームページ(http://www.hiroshima-u.ac.jp/japanese/fukuyama/)は、酸性雨プロジェクト、教科ごとの発信、教育実習生のための発信などがあります。赤塚山高等学校ホームページ(http://www.kobe-cufs.ac.jp/kobe-city/information/education/akatsuka/home.html)は、海外に向けての発信(日本文化の紹介)が参考になります。愛知県西陵高等学校ホームページ(http://www.nagoya-seiryo-chs.nishi.nagoya.jp/)は、膨大な生徒たちのホームページ、海外交流の様子などをみることができます。また、NEW97年10月号「国際理解教育関連のホームページ」では、高校のおすすめホームページを多数紹介しました。他にもまだまだたくさんあります。
これで校種は小中高を網羅しました。各校種によって、さまざまな特徴がわかっていただけたかと思います。次回も授業に役立つホームページを紹介します。
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(コラム) 有害サイトと子どもたち(1)
今回からコラムは、最近インターネットの教育利用に関して話題になっている事柄を、その関連するホームページを参考にして、皆さんに簡単にではありますが紹介していきます。学校内にインターネットが導入されてくるにつれ、授業時間や放課後に自由に子どもたちがネットサーフィンをする機会が増えています。しかし、周知のとおりホームページ上には子どもたちに望ましくない情報がたくさん公開されており、子どもたちと有害サイトに関わる議論が活発化してきました。この議論を簡単に大別すると、だいた次の2つになります。(1)子どもたちに見てはいけないということを教育する。(2)技術的に有害サイトを表示しないようにする。これらは、子どもの発達段階に応じてどちら(両方)を選択するかという話になってきますが、特に小学校あたりでは、有害サイトが表示されないような工夫が求められます。日本では、電子ネットワーク協議会(図5)等が中心となってこの問題を取り扱っており、同ホームページから情報を得ることができます。また、100校プロジェクトでも重点企画として取り扱われています。
有害サイトを見えなくする方法は、フィルタリング技術と呼ばれています。これは、フィルタを通して望ましいサイトだけ表示させようというものです。例えば、アダルトサイトでは、よく「18歳以上ですか?」という選択肢をつけているサイトがありますが、これはチェック機構がないため、実際には誰でも入ることができます。検索サーバでは故意でなくても、有害サイト中のページに直接とびこむ可能性もあります。そういった情報をアクセスする際に有害サイトかどうかをチェックして、表示・非表示を決めるのがフィルタリングです。当然、どのサイトがどれだけ有害なのかという情報を集めたリストが必要となります。また受信者側は、どのレベルまで見ることができるのかを選択することができます(例えばヌードなら、0.制限なし、1.露出的な服装、2.部分的なヌード…など)。これらの技術的仕様を規定しているものがPICS(Platform for Internet Content Selection)と呼ばれ、コンテンツに対してのラベル付けをレイティング(評価基準)と呼びます(例えばRSACi;Recreational Software Advisory Council)。
フィルタリングには、問題サイトをフィルタにかける「ブラックリスト方式」と、優良サイトのみ表示するようにする「ホワイトリスト方式」があります。フィルタリングを実現するためには、その機能が最初から組み込まれているブラウザを使う(インターネットエクスプローラ等)、フィルタリングソフトウェアを使う、プロキシによってブラウザに流れる情報を制御するなどの方法があります。大抵のフィルタリングは、アクセスの際に有害サイトかをリストをもとにチェックするブラックリスト方式となります。しかし、その有害サイトのリストを作るには限界があり、日々ホームページも変化していくわけですから、十分にカバーできない部分もあります。また、ホワイトリスト方式は、優良コンテンツのみで構成された空間(広い意味でとらえるとイントラネット的である)だけをサーフィンさせることになります。有害サイトを見せないということだけでなく、非常に情報量が膨大になってきた現状で、必要な情報のみを提示するといった方式も効果的でしょうが、当然情報が制限されるということがデメリットにもなります。どちらも一長一短があります。次回はこのフィルタリングについて、より具体的に(ソフト等)についての話をお送りする予定です。
参考:
電子ネットワーク協議会(http://www.nmda.or.jp/enc/)
100校プロジェクト重点企画「C.高度化技術企画:1.教育用レイティングシステムの運用実験」(http://www.cec.or.jp/net/h9kikaku/gijyutu.html)
図1 千葉県東金女子高等学校ホームページ
図2 静岡県清水国際高等学校ホームページ
図3 高知県安芸高等学校ホームページ
図4 電子ネットワーク協議会ホームページ
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