授業で役立つホームページ

第7回
 国際理解教育関連のホームページ


市川 尚(東北学院大学大学大学院人間情報学研究科)
鈴木 克明(東北学院大学教養学部)

1、はじめに

 前回は総合学習のうち環境教育のページを紹介しました。世界的規模の調査から、小中高独自のとりくみ、そして公的機関や企業などによる情報の発信などがありました。今回も続けて総合学習についてですが、特に国際理解教育に注目して紹介していきます。国際理解教育の情報は、小中高から多く発信され、他には教育関係機関(関係者)等から発信されているようです。
 三浦(1997)は、小中高のホームページが、国際理解教育のためにどのように使われているかを調査しました。調査には、筆者らが96年8月に収集したデータ582件(小学175件、中学157件、高校249件)を使用して行いました。図1に、小中高ホームページに見る「国際理解教育」の項目とその件数を調査結果から引用して示します。何らかの形で国際理解教育に結びつく内容が含まれていたホームページは、件数では高校が132件と多く、校種別の比率で見ると、小学校で約39.2%(67件)、中学校で約46.9%(76件)、高校で約48.9%と僅差だったようです。

figure1
図1 国際理解教育に関連するホームページ利用数(三浦、1997)

 この調査では、一番多いカテゴリは「英語表示」でした。どの校種においてもホームページを世界のインターネットに発信しているという意味で、日本語の他に英語の表示をしている学校が多く、これだけでも国際理解教育のきっかけをつくってくれるでしょう。次に多かったのが、先月紹介した「環境教育」のカテゴリ。とくに、小学校で約27.6%と割合が高かったようです。グローバルな視野で地球規模の問題を扱う環境教育は、国際理解教育の柱の一つでもあります。そのことが,この調査からも読み取れます。  三浦(1997)は、ユネスコ『教育勧告』には、国際教育でとりあげるべき諸問題として、平和・人権・開発・環境などに関してグローバルな視点からの諸問題をあげられている一方で、小中高のどの校種においても国際交流活動の段階にとどまっている事例が多かったと報告しています。まさに「総合学習」の名前が示すとおりに,様々な領域にまたがるテーマを国際的視野で取り上げることが求められています。しかし、今回の紹介では,様々な領域にまたがって展開されていたり、あるいはそのように展開すべきであるものを便宜的に何回かに分けて扱います。
 今月は,先月紹介した環境教育の例を除外して、また,平和や人権は来月に紹介することとして,国際理解教育と明示していたり、海外と交流または海外に向けて発信しているホームページを中心に、三浦(1997)が特色あるホームページとして注目していた例も含めながら,いつもの分類に従って紹介したいと思います。


以前紹介したページのうち、国際理解教育の情報が載っているところをいくつか紹介します。
群馬県前橋市立第四中学校(http://www.daiyon-jhs.maebashi.gunma.jp/)
 「四中から世界へ」では、国際理解に関する発信をはじめとして、総合科目全般の取り組みがあります。
APICNET(http://www.apic.or.jp/)
 GeoTouchプロジェクトを紹介しましたが、ここには他にも姉妹校をマッチングさせるなど、国際理解に関するプロジェクトがあります。

2、アーカイブ的な発信

奈良県高取高等学校(http://www.takatori-hs.takatori.nara.jp/;図2)
 このホームページには「国際理解教育から」と題したページがあります。その中の「1995姉妹校体験記」には、14名の生徒たちが約1か月間アメリカへ姉妹校派遣に参加した体験を綴ったものです。生徒たちの不安とそして喜びや楽しさが伝わってくるとともに、文化の違いを体験したことも書かれています。逆に「Shaker Students News On-the-Web」として、海外から派遣されてきた生徒たちの紹介もあります。「マレーシア見聞録」では、1990年4月から1年間、生徒が留学生としてマレーシアでホームステイした際に、30回にわたり日本へレポートを送り続けたものを載せています。大変すばらしいレポートでマレーシアの詳しい紹介から、異文化の習慣の違いを意識させてくれるものなどたくさんあります。このようにアメリカ姉妹校との交流や留学生の体験などから得られた国際理解教育のさまざまな成果を紹介しています。また、日米高校授業時間数比較 などもあります。
京都府紫野高等学校(http://web.kyoto-inet.or.jp/org/murasaki/index-j.html;図3)
 この学校は留学や 国際理解教育、国際交流に力を入れているそうです。「紫高生フォーラム」には、「オーストラリア短期留学記」があります。留学の様子が見れる画像や、生徒の体験記が載せられていますが、かなり膨大な量なので、「RECOMMENDATION」というおすすめのページをリストしているところを参照してもよいかと思います。「PHOTO GALLERY」では、ひとりひとりがお気に入りの写真を載せています。また、留学地オーストラリア関連情報のリンクもあります。ホームページで前もって簡単に異国の様子を調べておけるなんて便利な世の中になったものです。もう期日は過ぎていますが、国際交流イベント情報掲示板として、ホームページを使って交流校を募集していたようです。「海外研修報告レポート集」では、留学帰国後のアンケート結果があります。「事前研究冊子」では、日本の紹介するために英語で作成された冊子の一部が紹介されています。「生徒作品」では、国際理解の授業での、レポートの優秀作品の紹介や、「紫校生 talk about 日本文化」として、日本文化、若者文化について英語で紹介しています。「国際理解」インタービュー課題優秀作品 を紹介しています。
愛知県西陵商業高等学校(http://www.nagoya-seiryo-chs.nishi.nagoya.jp/;図4)
 「国際交流」のページでは、「全世界に広がる交流の輪」と題して、世界各国の旗がずらりと並んでいますが(14個ほど)、そのすべてと交流をしているようです。旗をクリックすると、交流相手校の紹介が出てきます。「ホームステイの英会話」といった簡単な英会話を教えてくれるページも準備されています。また、「研究紀要」では、これまでのインターネットを使った活動が紹介されています。例えば英語科の実践例では、電子メールを使って海外の学校と交流をしている活動内容や実際にやりとりした電子メールなどを紹介しています。電子メール例文集というのも用意されているようです。他にもCU-SeeMeを使用したり、ホームページを作成した実践例もあります。また、この学校は地域情報交換プロジェクト(L.I.E.P.)というものに参加しており、生徒たちが情報発信を行っていたようです。
兵庫県赤塚山高等学校(http://www.city.kobe.jp/kobe-city/cityoffice/57/050/akatsuka/home.html;図5)
 このページは英語のみで書かれています。内容もまさに海外向けにつくられているページです。「万葉集」「ことわざ」など、日本の文化的な紹介が載せられています。特に「Students' Reports on Japanese Life」では、バレンタインデーについてや、食生活、お正月や歌などが紹介されています。また、「What Are We Eating '95 NGS Project」として、日本の伝統的料理を紹介しています。海外の人達に日本の文化を知ってもらう上でも、有用なページです。また、海外に紹介することで、日本(自分たち)のことを深く掘り下げて考えることもできることでしょう。生徒ひとりひとりの自己紹介をはじめとして、核実験や地球環境に対する意見も載っています。

3、コラボレーション的な発信

静岡県清水国際高等学校(http://www.skg.shimizu.shizuoka.jp/index.html;図6)
 この学校は様々なプロジェクトを海外の学校と実践しています。ほとんどは日本語のページではなく英語のページの方に書かれていますので注意してください。「Snowman Project」として、海外の子どもと雪だるまの絵をお互いに出しあっていたようです。なるほど日本とロシア、フランス、フィンランドでは若干違うものが書かれていました(日本は雪だるまの丸がふたつなのに、ロシアは3つ)。また、「Will you add your story to my pictures? Part 1」として絵にストーリーを加えていってくれるところを募集しています。地球について海外の子どもたちと絵を出しあったり、絵本を作ろうというプロジェクトもあるようです。「Hello to South Africa!」では、アフリカの学校との交流のために自分たちの学校を紹介しています。
埼玉県吹上小学校(http://www.kumagaya.or.jp/~knk/elementaryschoolj.html;図7)
 この学校はモンスターエクスチェンジプロジェクトに参加しています。このプロジェクトは、まずそれぞれの学校のグループが怪獣の絵を考えて書きます。その後それら書いた絵を文章のみの説明文を作り、電子メールで相手校に送ります。子どもたちは送られてきた説明文だけを頼りに絵を再現しいき、最後にお互いの絵を交換しあって比べるというものだそうです。このページには、プロジェクトで実際に送られてきた説明文や、こちらから送った作った絵と説明文が公開されています。また、この学校はアメリカの小学校と電子メールの交流していたそうですが、その後ビデオレターによる交流にかわっていたようです。コラボレーションの成果をホームページ上に載せている例としてここに紹介しておきます。(ホームページだけでなく,いろいろな手段を目的に応じて使い分けているこ とも,参考になると思います。)
バーチャルクラスルーム ・オン・ザ・ネット・プログラム(http://www.kids-commons.net/vc-j/index.html;図8 )
 AT&A Jenが主催するこのプロジェクトは、世界各国の学校が参加しています。応募者多数のために参加の審査もあり、大盛況のようです。日本各地の学校が参加しています。同じ校種の違う国の学校どうしが3校でひとつのグループとなり、そのなかでなにかひとつWeb上の作品を共同で作りあげていくというものです。そして、最終的には完成品に対して審査があります。96年度の結果はすでにでており、日本のある小学校と海外の2校のチームが作成した「Web Odyssey」という作品が優勝していました。作品はこのページから参照することができます。また、校種別にも賞がおくられ、入選した作品には絵本など様々なものがありました。今年(97年度)のプログラムが、9月ごろに発表予定ということです。この号がでる頃には、まだ締め切られていないかもしれませんので、一度のぞいてみて、参加表明をしてみてはどうでしょうか?ただし参加資格は、インターネットにつながっていること(東京、大坂等はPPP接続口を提供)とのことです。
日本人学校プロジェクト(http://www.ak.cradle.titech.ac.jp/ngp/)
 東京工業大学の赤堀研究室が中心となって活動しているプロジェクトのホームページです。活動内容をはじめ、アンケート調査の結果や研究の論文なども参照することができます。世界インターネットカルタ大会の作品も見ることができます。本誌97年8月号に紹介されたばかりですので、詳細はそちらをご覧下さい。

4、収集

 小中高のホームページには、国際理解教育のホームページへのリンクリストは見つけることができませんでした。ここでは、小中高以外のページを少し紹介します。
エスアイシー国際交流情報ネット(http://www.joho-shimane.or.jp/cc/sic/index.htm;図9)
 島根国際センターが提供するこのページは、国際交流に関連するページがジャンル別にリストされています。ジャンルは、国際交流をはじめとしてNGOや留学生など多数存在しています。7月時点での登録件数は294件にのぼっていました。国際理解は4件しかないものの、すべてのジャンルが国際理解に関わってきていると言ってもよいと思います。また、リンク集へのリンクもあり、そこを拠点として、他のページを見つけていくこともできます。
オーストラリア情報ホームページ(http://fish.miracle-wave.or.jp/w-marian/;図10)
 ここは、国際理解教育に関する学習指導案を集めているページです。また、リンク集も用意しています。しかし残念なことながら、まだ開始したばかりのようで、学習指導案が2件、リンク集も1件しか入っていませんでした。今後どうなっていくか期待を込めて、紹介しておきます。また、ここは本来はオーストラリアに関する情報が満載のページで、特に生活情報が大変充実しています。それもそのはずで、文部省の派遣プロジェクトREXでオーストラリアに派遣された中学校の先生が作成しています。REXについての情報も載っています。オーストラリアに行く方々にとっては、向こうの文化等を知る上でも大変役に立つことでしょう。

5、おわりに

 今回は国際理解教育関連のホームページを紹介してきました。次回は総合学習の最後として、平和や人権等に関するホームページを紹介する予定です。

参考文献
三浦実知子(1997)「インターネットを活用した国際理解教育の現状調査〜小中高ホ ームページの調査研究〜」東北学院大学教養学部卒業論文(鈴木克明研究室)

図2 奈良県高取高等学校
図3 京都府紫野高等学校
図4 愛知県西陵商業高等学校
図5 兵庫県赤塚山高等学校
図6 静岡県清水国際高等学校
図7 埼玉県吹上小学校
図8 バーチャルクラスルーム ・オン・ザ・ネット・プログラム
図9 エスアイシー国際交流情報ネット
図10 オーストラリア情報ホームページ


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