第7章 経営情報システム

1.経営情報システムとは

コンピュータの発達により、「経営のためのコンピュータの利用」が可能となった。
(初期のコンピュータは、性能が低く、主にデータ処理で利用されていた)
このような経営のためのコンピュータシステムを、「経営情報システム(Management Information System;MIS)」と呼ぶ。

MISの定義

効果的な情報システムの最終目標は、経営管理のあらゆる階層に影響を与える経営内のすべての活動を、それらの階層にたえず完全に知らせること
組織における様々なオペレーション機能、管理機能および意思決定機能を支援する情報を提供するための統合化されたマン・マシン・システムである。
業務管理や組織の意思決定に使われるコンピュータ化された情報システム。

MIS導入のための提言

トップマネージメントはコンピュータが企業の国際競争力強化の有力な道具であることを理解し、MISの確立に自ら積極的に取り組むとともに、それに伴う企業組織の改革に前向きな姿勢で対処すべきである。
企業のMISは、それぞれの業種・規模などに対応した固有のものであり、これを開発するにあたっては、長期的・総合的計画の下に、まず日常業務の分野から最も効率の上がる個別業務を選んでサブシステムを開発し、逐次総合的なMISへと発展させていくべきである。
MISに必要な基礎的資料を迅速かつ的確に収集・蓄積・加工するために、生産、販売、会計などの基本的業務の簡素化と標準化を推進し、情報環境の整備・改善を図るべきである。
企業は経営の各階層に対するコンピュータ教育を計画的・継続的に実施し、トップマネージメントが自ら新しい経営管理技法を理解・修得するとともに、次代の後継者の育成を図り、またコンピュータの専門技術者の養成に努めるべきである。

2.経営管理システムと経営情報

1.経営管理ステム

経営活動の種類(図7-1)

表7-1:経営管理システムにおける活動の例

戦略的計画:組織の目的、目的の変更、目的のために用いられる諸資源、資源の取得、使用、処分に際して準拠すべき方針を決定する。

トップマネージメントが責任を負う
会社目的の選択
組織計画
人事方針の設定
財務方針の設定
マーケティング方針の設定
研究方針の設定
新製品品種の選択
新工場の取得
臨時資本支出の設定
マネージメント・コントロール:マネージャーが、組織の目的の達成のために資源を効果的かつ効率的に取得し、使用することを確保するプロセス。
ミドルマネージメントが責任を負う
予算の設定
スタッフ人事の計画
人事手続の制定
運転資金計画
広告計画の作成
研究計画の作成
製品改造選択の選定
工場配置換えの決定
経常的資本支出の決定
オペレーショナルコントロールに対する決定規則の作成
経常実績の測定、評価および改善
オペレーショナル・コントロール:特定の課業が効率的かつ能率的に遂行されることを確保するプロセス。
ロワーマネージメントが責任を負う

雇用のコントロール
各方針の実態
信用拡張のコントロール
広告配分のコントロール
生産スケジュールの作成

2.経営情報

組織活動に関わる情報の性質を特徴付ける7つの指標

情報源:情報が組織のどこで発生するのか
範囲:情報がどの程度構造化されうるか
集約の度合い:情報がどの程度集計レベルにあるか
時間の広がり:情報がどの時点にかかわるものであるか
現在性:情報がどのぐらい即時的なものであるか
正確性の要求度:情報としての正確性がどの程度要求されるのか
使用頻度:情報が参照される頻度はどれくらいか

これらの指標は、オペレーショナルコントロール、マネージメントコントロール、戦略的計画により、その内容が異なってくる。

表9-2
情報特性 オペレーショナルコントロール マネージメントコントロール 戦略的計画
情報源 ほとんど内部
外部
範囲 明確に定義される範囲が狭い
かなり広い
抽象の度合い 具体的
抽象的
時間の広がり 歴史的
将来的
現在性 非常に現在的
過去的
正確性の必要性 高い
低い
使用頻度 きわめて頻繁

経営活動の特質による経営情報の分類

企業内・外のいずれで発生したか:社外情報と社内情報
管理サイクルのどの段階で発生したか:計画情報、実施情報、統制情報
その機能分野で発生するか:生産情報、販売情報、在庫管理情報、会計情報、営業情報、人事情報、給与情報
権威付けされているかどうか:公式情報、非公式情報
数量化されているかどうか:計数情報、非計数情報

3.経営情報システムの全体像

1.経営情報システムの対象領域

組織活動

経営管理システムの各階層:

(1)戦略的計画

(2)マネージメントコントロール

(3)オペレーショナルコントロール

(4)日々繰り返される職務(手続きや照会など)であるトランザクションが組織活動に含まれる。

経営の機能:

マーケティング、生産、ロジスティック、人事、財務会計などの機能に分けることができる。

2.経営情報システムの構造

経営情報システムの代表的な2つのモデル

(1)デービスのモデル:図7−3

1:経営機能に対しそれぞれに対応する、情報システムがある。

2:特定の機能に対応する情報システムは、戦略的計画、マネージメントコントロール、オペレーショナルコントロール、トランザクション処理に対応できるようになっている。
3:各機能は独自の情報ファイルを保持している。
4:各機能間で共通に利用される情報については、データベース化しておく。
5:各機能で共通に利用されるモデルやアプリケーションを共有プログラムとして保持している。
6:経営情報システム全体は、4つのレベルの情報処理を行う機能別サブシステムの連合体。

(2)エメリのモデル:図7-4:垂直的次元と水平的次元からなる

垂直的構造

業務サブシステム:(オペレーショナルコントロール+トランザクション処理)

ルーティン的な手続きを処理する。
データの収集を行い、データベースに蓄積する

戦術的サブシステム:(マネージメントコントロール)

人間の判断や介入を伴いながら、比較的構造が明確な意思決定問題を処理する。
データは、データベースから引き出す。

戦略的サブシステム:(戦略的計画)

会社全体の命運に関わる、長期で、問題の構造がその時々の状況によって変化するような意思決定問題を処理する。
データベースにないような非公式な外部情報の依存度大

水平的構造
経営機能の各分野に対応した、アプリケーションが開発される。
各アプリケーションが、互いに関連付けられていることが望ましい。

3.経営情報システムの基本機能

(1)トランザクション処理

日々の経営活動の中で発生する、取引などを処理すること。
トランザクションデータは、データベースに蓄積される。
蓄積されたデータは、経営分析するためのデータとなる。
経営情報ステムの中心的な処理機能

(2)ヒストリ・ファイルのメンテナンス

社内情報ファイルを更新処理すること。
基本的な処理機能の一つ

(3)報告書作成および問い合わせ機能

オペレーション機能、管理機能、意思決定機能を支援する情報を、必要なとき、必要な形で提供すること。
中心的な機能

(4)会話処理機能

ユーザがコンピュータと会話的に接することで、ユーザの問題を解決する手助けを行うこと。
ユーザは、コンピュータの操作に長けているとは限らないので、会話的に接することで、ユーザのコンピュータ技術力に左右されなくなる。

4.経営情報システムの現実

1.経営情報システムに対する反省

(1)意思決定プロセスと情報のかかわりについての理解不足からの誤った仮定

管理者に対してより多くの情報を与えることが、よいシステム
管理者は厳選された情報や重要な情報が必要であり、全ての情報を欲しているわけではない。
管理者の必要な情報と情報システム設計者の考える情報は、同じである。
管理者が情報システム設計者と情報処理能力や技術を持ち合わせてはいない。
説明的なモデルなどを用いて、管理者の必要とすることを導き出さなければならない。

管理者に必要なデータを与えれば、優れた意思決定ができる。

必要なデータから情報を導き出せなければ、利用することが出来ない。

部門間の情報は多ければよい

部門間のやり取りが多くなり、全体としての成果を損なう。

管理者は情報システムの仕組みを知る必要はなく、操作方法を理解すればよい。

内容のわからないシステムでは、信用して利用することが出来ない。

(2)情報システム設計のアプローチの不適切さ(ボトムアップ的アプローチ)

システム設計のアプローチとして、情報化が簡単な下位層のトランザクション処理から情報化し、その後上位層に向かっての情報化と対象を広げていくアプローチがとられた。

下位層からの情報化では、各階層により必要な情報に違いが発生するため、全体的な経営情報システムを構築することが困難となる。

2.MISのその後の展開

実現された、経営情報システムは、トランザクション処理、オペレーショナルコントロールレベルの処理を行うものが、一般的となった。

経営者の立場として、戦略的計画レベル、マネージメントコントロールレベルの情報システムや組織全体の情報システムが求められるようになった。

→DSS(意思決定支援システム)

半定型的な問題解決において意思決定者を支援するコンピュータシステム

→SIS(戦略的情報システム)へ

企業戦略の達成のために直接的なかかわりを持った情報システム

インターネットの利用