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2010 オペア体験談    2010年3月  岩手県立大学盛岡短期大学部国際文化学科  似里 彩 

●はじめに

幼い頃からアメリカに留学することが夢だった私。高校時代にアメリカでの研修を経験した後、以前に増して「将来は英語に関わった職業に就きたい」と思うようになりました。2006年4月、卒業後はアメリカの大学に行こうという目標を胸に、短期大学部国際文化学科に入学しました。しかし日々の学校生活の中で留学への思いは高まり、「卒業後ではなく、短期大学在学中に何らかの方法で留学できないだろうか」と考えるようになりました。

●オペアプログラムとの出会い

 私がオペアプログラムを知ったのは2006年の夏でした。日々インターネットや資料などを通して情報収集をしていた中、三宅先生が「オペアプログラム」という素晴らしい留学方法を教えて下さったのです。これはホストファミリーのお宅に住まわせていただき食事など生活に関するサポートを受ける代わりに、ホストの子どもたちのお世話をするというプログラムです。このプログラムは高校卒業以上の学歴を持つ18歳から26歳までの方なら参加できるため、当時は「卒業してからでも間に合うかな」程度にしか受け止めていませんでした。しかし実際にエージェンシーの説明会に参加したり、以前オペアをしていた方や当時オペアであった方のお話を聞いたりするうちに、さらに興味を抱き始めるようになりました。「語学力アップだけではなく、何か新しいことにチャレンジして視野を広げたい」ということを目的としていた私にとって、オペアプログラムはとっておきのものでした。また他の留学プログラムに比べて参加費用や自己負担が軽いことも魅力的な要因の一つでした。

●オペアになることを決意

母や先生方とも相談し、悩みに悩んだ結果、短期大学在学中に休学しオペアプログラムに参加することを決意しました。学校には1学年を終える2007年2月に休学届を提出し、4月からオペアプログラム参加に向けての準備が始まったのです。

●保育実習&アプリケーション準備

 オペアプログラムに参加するにあたって、200時間以上の保育経験を持っている必要があります。当時保育に関する経験が全く無かった私は、地元の託児所において朝から夕方まで0歳児から6歳児までの子どもたちの保育実習をさせていただきました。保育実習は毎日が発見の日々で、子どもたちから新しく学ぶことや気付かされることが多かったのが印象的です。

保育実習を行うと同時にエージェンシーを通したアプリケーション準備(英語のテストや面接、書類準備など)を進め、7月の終わりにはすべての書類を提出しました。

●ファミリー探し@

 8月に入り、エージェンシーやウェブサイトを通してのファミリー探しが始まりました。想像していた以上にファミリー探しは簡単なものではなく、お互いに興味を持ってコンタクトを取り合ったとしても、あと一歩のところで「この話は全てなかったことに・・・」ということも多々ありました。

そんなある日、ウェブサイト上で「仕事が忙しい9月から12月の3ヶ月間だけ子どもたちのお世話を手伝ってくれる人が必要だ。3ヶ月間だけうちで生活しないか?」というシングルファーザーのアメリカ人ファミリーと出会ったのです。当時ファミリー探しに手ごたえを感じていなかった私にとって、このオファーは「アメリカで3ヶ月間オペア体験をしながらファミリー探しができる」という最高のプランでした。相手の方は他にも各国からのオペアとコンタクトを取り合っていたようなので、私も毎日メールや電話のやり取りを重ねて猛アピールをしました。次第にお互い安全である(犯罪者などではない)ことが確認でき、信頼をおける存在であると実感できたため、そのファミリーと私との間で「3ヶ月間限定オペア体験」が成立しました。子どもたちへの教育の考え方や趣味が同じであることなども、決意にあたっての重要なチェックポイントでした。

●3か月限定オペア体験

 このファミリーはアリゾナ州在住で、シングルファーザーと、4歳の女の子、6歳と12歳の男の子からなる4人家族でした。仕事内容は主に子どもたちを起こしてご飯を用意し、学校に行く準備をさせ、バスストップまで連れていく。その後は家の掃除などを済ませて、フリータイム。子どもたちが学校から帰ってきたら、宿題をやったり一緒に遊んだりし、夕飯後はお風呂や寝る準備を手伝うことでした。

初めのうちは子どもたちに受け入れてもらえず、ぶつかり合ってしまうことも多くありました。さらにはもともと自信があったはずの英語が全くと言っていいほど通じなかったので、子どもたちのお世話だけでなく自分の英語力に関しても何度も悩みました。しかしホストファーザーと話し合いをして悩みを聞いてもらうことで、子どもたちとも次第に分かり合えるようになりましたし、アメリカ人の Language Exchange Partner を探して日本語と英語を教え合ったり、近所の大学の学生向けイベントに参加したり、図書館で行われている無料のクラスに通ったりと、毎日積極的に行動し勉強を続けたことで、自分の英語力にも自信を持てるようになっていきました。

アリゾナ州滞在中にはNBA観戦をしたり、セドナやグランド・キャニオンを訪れたりと、他にも貴重な体験をすることができました。ここでの体験が刺激になり、「もっともっと成長したい!」と私のやる気にさらに火を付けるきっかけとなりました。

●ファミリー探しA

 12月の終わりにアリゾナ州から帰国し、再びファミリー探しの日々が続きました。いくつかのファミリーとコンタクトを取っている中でとても魅力的なファミリーと出会い、こちらの方々ともメールや電話を重ねてマッチングが成立しました。首都であるワシントンDCやヴァージニア州に近いメリーランド州に住む、当時1歳の男の子のいる3人家族の家庭でした。

●オペア1年生活スタート

 3月から再びアメリカでの生活が始まりました。前回の砂漠地帯アリゾナ州ではなく、東海岸でまだ肌寒いメリーランド州。学校に行く年齢の3人の子どもたちのお世話ではなく、年齢の低い子ども一人のお世話。シングルペアレントではなく、両親揃うファミリーとの生活。同じアメリカでの生活ではあっても、至る所で前回とは正反対な生活だったため、最初は戸惑うことも多くありました。

●仕事&日常生活

仕事内容は子どもが起きてから両親のどちらかが帰宅する夕方5時までの間の、子どもに関する全てのお世話でした。おむつを替えることも、離乳食や特製ミルクを作ることも、トイレ・トレーニングも、外でのアクティビティも、全てです。最初のうちは子どもがまだ13カ月の赤ちゃんだったので、お世話をすることに自信が持てず、他のお母さん方と自分の姿を比べてしまって落ち込んでばかりいました。

ファミリーと意思疎通がうまくいかずに辛い思いをしたこともありました。しかしアメリカはYESかNOかの国です。「そのうち分かってもらえるだろう」と相手に気付いてもらおうと期待し待っていても、時間の無駄です。「一人で考えているだけでは何も解決しない!」とできるだけ思っていることを伝え、分からないことはどんどん質問するようになったことで、ホストファミリーとの仲も近くなって行きました。また子どもも次第に私を信頼してくれるようになり、ファミリーから「あなたが私たちのオペアで良かった!私たちの子どもをあなた以外の人がお世話するなんて考えられないよ!」と言われた日は、嬉しくて涙が出ました。

●学校生活

 オペアはエージェンシーに認められた学校組織(近所の大学・短大やESLなど)で6単位相当の授業を受ける義務があります。私はスケジュールの関係で最初の5ヶ月間は学校に通うことができませんでしたが、8月からはESLにて夜間の集中英語クラスに通っていました。基本夕方5時か6時までは子どものお世話なので、その直後6時から9時までの授業に疲れを感じてしまうこともありました。しかしモチベーションの高い各国からのクラスメイトとの授業は毎日刺激的で、日々の疲れなど吹き飛んでしまうほど、充実した生活を送ることができました。授業内容はレベルによって異なりますが、私のクラスでは教科書を基にした文法などの授業ではなく、毎回様々トピックについて討論会を行ったり、ロールプレイをしたり、圧倒的に「話すこと」が中心の授業でした。

●休日&自由時間

 休日にはファミリーとどこかへ出かけたり、パーティーに参加したり、映画館に行ったり、図書館で本を読んだり、友達と一緒に勉強をしたりと、時間を有効的に使っていました。またファミリーや学校の友人などを通して、たくさんのかけがえのない人々と出会うことができ、何にも変えられない私の宝物となりました。他にもファミリーの親戚の結婚式に出席したり、バスでNYCに旅行したり、オバマ大統領の就任式に行ったりと、ここでしか味わえない経験を沢山することができました。

●その後

 オペアプログラムは1年生活した後、最高2年間まで延長することができます。私も2008年3月から2009年4月の1年間オペア生活の後、延長したい思いは山々だったのですが・・・短期大学は最高でも2年までしか休学が認められないので、2009年4月1日に帰国し、その直後から2学年として復学しました。久しぶりの日本は新鮮に感じ、何より学校生活はとても懐かしく感じました。1年生の頃味わっていた新しさとはまた別の“新しさ”を感じる毎日は、大変刺激的なものでした。

 在学中は多くの学生さんたちが「留学したい!」と相談を持ちかけてきてくれて、「こんなに多くの子たちが留学したいと思っているんだなぁ」と驚きを感じながらも、私が1年生だった頃の気持ちを思い出したことを覚えています。当時はよく三宅先生から「海外に行きたいなら行っちゃいなさい!」と言われ、先生の「どんな経験でも、将来絶対あなたのプラスになるから!」というお言葉に何度も励まされていました。私自身この2年間何度も失敗と挫折を繰り返し、少しくらいのことではへこたれなくなりました。また、挑戦すれば必ずそこから何かは学べるということを実感しました。私も先生のアドバイスと同じように「少しでも海外に行きたいと思う気持ちがあるなら、絶対に行って経験したほうがいい!必ず何かを得ることができるはず!」という言葉を贈りたいと思います。

●最後に

私はアドバイスだなんてかっこいいことを言えるほどではありませんが、一つだけ言えることは「まずは挑戦!」です。失敗を恐れて挑戦しなければ、何も変わりません。もしかしたら成功していたのかも、分かり得ません。でも、もし挑戦して失敗してしまったとしても、立ち上がったらいいのです。そこから何かは必ず見えてくるはずだし、周りを見渡せば支えてくれる人は必ずいるはずです。考えるときは沢山考えて、悩むときは沢山悩んでください。そのあとにちゃんと行動を起こせたならば、考えた期間も悩んだ期間も無駄になるなんてことは絶対にありません。私もここに留まることなく、これからも更なる成長のために様々なことに挑戦していきます。一緒に頑張りましょう!