国際ボランティアの仕事をする千葉さんからのお便り
いわて県立大学のみなさんこんにちは。
私は盛岡第二高校出身で、現在は国連開発計画と国連プロジェ
クトサービスの中米における対貧困パートナーシッププログラ
ムで働いています。勤務地はエルサルバドールの首都、サンサ
ルバドールです。
私が高校生だった頃は県立大学がまだできていなかったのです
が、県立大学が出来て岩手県にも国際協力のことについて勉強
できるところが出来て、皆さんがとてもうらやましいです。
さて、国際協力の仕事に興味のある方も多いかと思いまして、
今回は、良く質問を受ける事などについてお話したいと思いま
す。
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ボランティア活動***ボランティア活動はなるべく早く思い立ったらすぐ始める事を
お勧めします。そうする中で、本当に自分は国際協力の仕事が
したいのかを考える事が出来るからです。出来ればいろんな団
体でいろんなことをはじめはしたほうがいいですね。何が一番
好きかが自分でもわかるので。私は大学の二年生の頃から東京
でいろんな団体に参加していましたが、最終的に一番共感でき
た
RECOM(日本ラテンアメリカ協力ネットワーク)に一番参加しました。
RECOMはグアテマラの先住民女性の人権活動を主に支援している団体で、今でも遠くてもいろいろとお世話になっ
ています。
それからスペイン語の習得もかねてラテンアメリカから働きに
来ている家族の子供たちに日本語を教えるボランティアもしま
した。彼らのお父さん、お母さんとはスペイン語での会話にな
りましたが、本当に彼らにはスペイン語だけでなく、日常生活
においてもとてもお世話になりました。
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留学***まずは、私のケースについてですが、まず在学中にロータリー
財団の奨学金を頂いてメキシコ国立自治大学の政治社会科学科
に1年間留学をしました。そこでは、メキシコ南東部の先住民
女性をとりまく社会状況について研究をしました。オアハカ州
やゲレロ州、チアパス州をずいぶんと回っていろんな村や、先
住民女性の地域グループの活動を手伝いながら勉強をさせても
らいました。
その後、日本で大学を出たあと数年間日本で働いて、その後オ
ランダの社会科学研究所(
ISS)で開発学(農村開発専門)の修士号をとりました。いろいろとアメリカの大学院からも合格
通知は頂いたのですが、
ISSでは奨学金ももらえることになったので迷わず、
ISSにきめました。オランダといっても授業はすべて英語です。
ISSでは専門コースに分かれていて、農村開発、経済開発、人口と開発、ジェンダーと開発、地域(都市)
開発、政策と開発、労働と開発、殻自分の興味のあるコースを
選んで受験します(詳しくは
ISSホームページを見てくださいね)。夏休みなどが無いため、修士号は18ヶ月のコースです
。
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就職***国際協力の仕事は競争率も高く、経験が問われる仕事なので、
卒業後すぐに仕事を見つけるのに苦労する人が多いと良く聞き
ます。あまりあせらずに気長に頑張る事をお勧めします。
始めは海外青年協力隊などに応募するのも
JICAなどではその後その経験が認められるようです。その後国連ボランティアにな
ったり、
JICAの専門家になったりした方を多く知っています。私は国連ボランティアから始めましたが、これは協力隊より厳
しい語学試験がありますし、年齢的にも高い(経験が長いと言
う事で)ほうが好まれるようです。たまたまスペイン語圏での
募集があったので私は採用されましたが、それはたまたま運が
良かったということのようです。
英語にかなりの自信があって、海外の大学院を出ていて、とい
う方は
JPOの試験を受けるというのもあります。これは競争率も高く
TOEFLで高得点を取らなければならないので、大変なようですが。友人で何人かJPOの方がいますが、どなたも英語のTOEFL
でかなりの得点をあげていらっしゃいますし、それだけではな
くさまざま経験をもたれています。
また、修士号を持っていれば外務省の在外大使館への専門調査
員の試験を受ける事も出来ます。試験の内容は、受ける国の社
会・経済・政治事情と、語学です。
ISSでの日本人同窓生も多くこの仕事をしていらっしゃるようです。
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国連ボランティアの仕事***私が国連ボランティアを選んだのは、プロジェクトの「現場」
でまず仕事がしてみたいと思ったからでした。オフィスで
administrationの仕事をするにしても、まず現場の様子がわからないことには
、という気持ちからです。そこに暮らしている人々の様子、プ
ロジェクトがどんな風に受け入れられているのか、そういった
ことを直に見ることはとても良い経験だったと、本当に良い選
択だったと思っています。
派遣地はニカラグアの山間の人口3万5千人、小さな町でした
。
私の仕事はニカラグアの
NGOを強化する事でした。調査、プロジェクト作成、実施、受益者とのコーディネーションなどにお
いて、
NGOが、より市民の参加得ながら、効果的なプロジェクトを実行できるようになるための手助けです。農村を回りなが
ら村の人たちとの集会もずいぶんと行いました。ところで、強
化するのはなぜ
NGOか?これは、市役所が政党政治に一生懸命すぎて、本来の機能をほ
とんど果たしていないので、地元の
NGOが市役所の代わりに市民に社会サービスを提供するしかないからです。これは、ニカ
ラグアを始め、中米ではよくあることです。市役所を強化して
も、選挙で市長が変われば市役所職員全員変わってしまうとい
うことがよくあるのですから困りものです。受益者の選択も選
挙キャンペーンになってしまいますから。
私が主に担当したプロジェクトは農村開発のプロジェクトと、
環境保護のプロジェクトでした。農村開発のプロジェクトは実
施地域調査に基づいて住人がしたいと思っている事とその地域
で出来る事、その地域に適している事を重ねて地域住民との話
し合いながらプロジェクトを作っていきました。環境保護プロ
ジェクトは資源の有効利用につなげられる技術開発のサポート
です。現在調査中なのが、米の籾殻を圧縮して薪状のものを作
る機械です。これについては繊維が多い籾殻の性質上、上手く
薪状のものが作れないのが問題です。このプロジェクトからは
直接はもうかかわれませんが、今後も情報収集に努めていきた
いと思っています。
二年間の経験は大変有意義なものでした。もともとは国際協力
のプロジェクトに懐疑的だったところもあったのですが、実際
に地域レベルで住民とプロジェクトを実施してみると、やはり
やり方次第では、良い影響も悪い影響も与えてしまうところが
あり、開発プロジェクトは「駄目」、とか「良い」などとは言
えないのだろうと思います。大事なのは柔軟な姿勢で、相手(
住民)の立場に立って考える事、日本での地域開発に関しても
良く考えて、「他人である自分」の介入とその影響について常
に注意しながら仕事をする事だと思います。だから、海外で仕
事をする前に、まずは日本でたくさんの人と議論をしたり、ボ
ランティアに参加したり、本を読んだり、する事が大事なのだ
と思います。
二年間やってみて、こういう仕事に失望したら、もう辞めよう
と思って始めた仕事ですが、良い経験をたくさんさせていただ
いたのでもう少し続ける事にしました。次の仕事は、国連ボラ
ンティアでの経験を認めていただいて、採用された国連開発計
画の貧困対策プロジェクトです。
私もまだまだ、本も読み足りないし、経験もほんの少しですか
ら、これから一緒に頑張りましょう。