トリコロールに燃えて

Head in the Clouds

 

制作年度 : 2004年

上映時間 : 121分

監督 : ジョン・ダイガン

出演 : シャリー・セロン、ペネロペ・クルス、他

学生  A・N (2007.1.14)

感想

 私は今回スペイン語・スペイン語圏文化Uのレポートを書くにあたって、アメリカ、イギリス、カナダ、そしてスペインの4カ国合作である映画『トリコロールに燃えて』を鑑賞しました。この映画を選んだのは、スペイン一国だけではなく「ヨーロッパ全体としてのスペイン」を見ることで、今まで知らなかった面を見て各国との比較をすることができると思ったからです。

 この映画は第二次世界大戦前後のヨーロッパが舞台となっています。1933年、英国の貧しい大学生ガイ・マリオンは、名高い上流階級のギルダ・ベッセと出会い、強く惹かれていきます。しかしギルダはガイの愛の告白を受け入れずに、単身パリへと旅立っていくのでした。その3年後大学を卒業したガイは、ギルダからの手紙を受け取りパリへと渡ります。そこでギルダはスペインの内戦を逃れてきた友人のミアと暮らしていて、女優をはじめ、カメラマンや芸術家と、あらゆる才能を発揮し、華やかな生活を送っていました。ヨーロッパ各国で起こっている“戦争”という現実に背を向けたまま、3人は同居生活を始めます。そんな中、ミアは故郷であるスペインの内戦で看護婦として国の力になるため、そしてガイはレジスタンスとしての活動をするため、ギルダを残して内戦の激化するスペインに渡っていきました。この内戦中にミアは看護車に仕掛けられた爆撃によって命を落としてしまいますが、これはガイとの再会を果たし「2人無事にパリへ戻り、また3人で暮らそう」という約束を交した翌朝の出来事だったので、あまりの残酷さに胸が痛くなりました。

 時が経ち、ナチス占領下のパリに再び戻ったガイは、ドイツ人将校と街を歩くギルダの姿を目にします。ギルダはその将校と愛人関係深にあったために近所のフランス人からは「敵国の将校と関係を持つだなんて...きっとスパイに違いない。」などと非難を受けていました。しかし実際は国のためにドイツ人将校から情報を盗み出そうとしていたのです。ある日国外への脱出を試みたフランス人の家族のうち、ただ一人妹だけが取り押さえられ、ドイツ将校の手下によって命を奪われてしまいます。それを知った家族は「ギルダは敵国に自国を売った、そのせいで妹が命を落とした。」などと言い、ギルダを殺してしまいます。戦争が終結に向かいドイツからパリが戻され、ガイはギルダの元へと急ぎますが、2人は永遠に会うことの出来ないまま、物語は終わりを告げるのでした。

 映画全体を通して戦争前の美しいヨーロッパと、戦争中の激しく争い合う荒々しいヨーロッパを比較することができ、“戦争”という出来事を中心とした社会の様子を比較することができました。また場面によって英語、フランス語、スペイン語を使い分けていたので、ヨーロッパの言語を楽しみながら鑑賞することができました。

 次は過去に内戦や他国との戦争によって様々な被害を受けたスペインが、あるいは奴隷や差別の被害を受けたスペイン語圏の国メキシコが、どのように立ち直り、どのように各自の歴史や文化を創り上げていったのかなど、学んでいけたらと思います。

 

学生  S・K (2009)

感想

 この映画はスペイン内乱と第二次世界大戦の時代のラブストーリーで、ロンドン、パリ、スペインが舞台となっている作品である。監督はジョン・ダイガンで2004年に製作された。

 この物語の主人公はスチュアート・タウンゼントが演じるガイという真面目な青年である。奨学金でケンブリッジ大学に通っていた。そこで出会ったのがシャリーズ・セロンの演じるギルダという魅力的な美女であった。身分が高く自由奔放で男遊びが激しく、ガイとはまったくの正反対の性格であった。二人はすぐに恋に落ちたが、ギルダは突然アラビアへ長期旅行をするといって離れ離れになってしまう。ガイは大学を卒業し、教師となりナチスの反対運動に参加していた。ある日、連絡の途絶えていたギルダから手紙が届き二人はパリで再会を果たした。ギルダは写真家として有名になっていた。そこでモデルとして雇われていたのはペネロペ・クルス演じるミアというスペインの亡命女性であった。実はギルダとミアはお互いに愛し合っていた。ガイは教師を辞め、ギルダの仕事のアシスタントとして働くようになり、三人で共同生活をするようになった。不思議な三角関係であったが、幸せな日々であった。

 しかし、そんな幸せは長くは続かず、ミアの祖国であるスペインで1936年スペイン内乱が勃発した。ガイとミアはこの戦争を黙って見ていることができずガイは共和国の志願兵に、ミアは看護師として戦地に赴くことにした。ギルダは戦争に命をかけるのは無益だとしてひどく反対をしたが二人の決意は固かった。ガイとミアは戦場で落ち合い、お互いのギルダに対する気持ちを打ち明けあった。しかし、翌朝ミアは戦火の犠牲となってしまう。

 1939年、スペインの内戦と入れ替わりに第二次世界大戦が勃発する。1940年ナチスはパリを占領する。ガイはスパイとしてフランスにもどってきて、ギルダとよりを戻そうとしたがギルダはそれを拒んだ。ドイツ軍の将校の愛人となっていたのだ。はたからみれば自分の幸せだけを追い求めるように見え、ギルダは住民からひどく憎まれていた。やがてドイツ軍は降伏するが、ドイツ人と関係を持っていた女性は制裁を加えられた。ギルダはその一人として犠牲となってしまう。しかし、実のところギルダは愛人となることによってドイツ軍の情報を集めスパイとしての役割を担っていたのだった。結局三人は離れ離れになってしまい、二度と再会することなく終わってしまう。

 この作品は俳優が豪華であったが、少し期待が外れであった。前半は分かりやすいが後半は内容が難しく話しの流れについていけずとても疲れてしまった。時間の流れが荒く話の展開が速かったように感じる。

 前半はラブストーリーという感じがしたが、ギルダに感情移入していけず何を考えているのだろうと理解に苦しんだ。本当にガイとギルダは愛し合っていたということを分かりやすく描いてほしいと思った。後半は別の映画だろうかというくらい戦争がメインとなっていた。歴史的な背景が分からないと理解が難しいので、あらかじめスペインの内乱などについて知っておいてから見るといいと思う。後半はとにかく時間の流れについていくのに疲れてしまう。また、ミアが亡くなるときもギルダが亡くなるときも何だかあっけない感じで、もっと感動できるようにならなかったかなあと思った。

 悪い点ばかりを述べてきたが、シャリーズ・セロンとペネロペ・クルスがとても綺麗であった。レズビアンという設定には少し驚いたが、二人でダンスをするシーンなど本当に魅力的であった。

 この映画は少し難しいが、二回三回と見ていけばもっと理解が深まると思う。まだ一回しか見ていないので理解ができていない点がたくさんあるだろう。スペインの内乱や第二次世界大戦を学んでからまた見てみたいと思う。