パヒューム ある人殺しの物語

Perfume: The Story of a Murderer

 

制作年度 : 2006年

上映時間 : 147分

監督 :トム・ティクヴァ

出演 :ベン・ウィショー、ダスティン・ホフマン

学生 M・M (2011)

感想

 まずタイトルが衝撃的である。「ある人殺しの物語」と銘打ってあるからには、やはり殺人鬼に関する映画である。

 この映画のグルヌイユという青年は、常に陰のある表情をしていて晴れやかな顔をしたことがない。これは劇中で描かれている彼の出生も関係してくるのだろうが、彼のこの無表情で無口な様子が衝撃的なラストを納得させる大切な要因である。

 ストーリーの肝を簡単に述べると、グルヌイユは自分が理想とする香水を作るために何人もの少女を殺害し少女たちから香料を得ようとする。そうして作られた香水は人々の心に「愛」を作り出すものとなった。グルヌイユの連続殺人が明るみになり、彼は多くの市民が見守る中斬首刑となる。その刑場に赴いた彼は、殺害した少女たちから得た香料を用いて作成した香水をしみこませたハンカチを大衆の中へ落とすのだ。するとたちまち人々の中に「愛」が生まれ、何百人もの男女の性行為が始まる。これはこの映画でもっとも衝撃的なシーンのうちの1つだろう。その混乱に乗じ処刑を免れたグルヌイユは一人、自分が産み落とされた汚らしい市場へと足を向ける。彼はそこを墓場に選んだのだ。グルヌイユが人生をかけて作成した香水を、彼はすべて自らのからだに振り掛ける。そうして人々の「愛」を一身に受けることとなったグルヌイユは、そのありあまる愛ゆえに、人々に欲されすぎるがゆえに、大衆に己の体を食べつくされてしまうのだ。これが殺人鬼の末期である。

 この簡単なストーリー解説だけでも衝撃的な映画だということは伝わることと思うが、この映画はストーリーのみではなく、映像のショッキングさがかなりのスパイスになっている。話自体も刺激的な上に残虐なシーンや官能的なシーンがところどころ見られるので、苦手な人は本当に苦手だろう。私個人としては好きな作品であった。

 とにかく暗い話ではあるのだが、作品を観終わった後に芸術作品を観た!という実感が得られる。音楽的にも美術的にも優れているし、ストーリーも哲学的な印象を受けるので文学好きなど芸術が好きな方はなかなか楽しみながら観れるかもしれない。