学生 T・T (2009)
あらすじ
主人公の少女・オフェリアはスペインの内戦で優しかった父親を亡くした。ある日、母カルメンの再婚相手の独裁者派ヴィタル大尉の元に身を寄せることとなった。妊娠して以来、身体の調子を大きく崩していた母であったため、オフェリアは非常に心配していたが、街で暮らしていたオフェリアにとって、山の探検は大好きな絵本で読んだ夢物語そのものであった。大尉の小間使いであるメルセデスは優しく、オフェリアはすぐに彼女と打ち解けた。その夜、オフェリアはメルセデスと大尉の主治医が密談している現場を目撃してしまう。ふたりは反乱軍の協力者で、メルセデスは反乱軍の弟に情報と物資を渡すためにいつも危ない橋を渡っていたのである。
引っ越した先で出会ったカマキリを妖精だと思ったオフェリアは、深夜、家を抜け出して昼に訪れた森の迷路を進んだ。そこで出会った自然の守護神パンは、オフェリアは地底の魔法の王国のプリンセス・モアナ姫の生まれ変わりに違いないと言った。左肩にある印がその証拠で、満月の夜が来るまでに3つの試練に耐えられれば魔法の国に帰ることが出来るという。そこでパンから一冊の本と石を渡された。渡された白紙の本には不思議な文字が浮かび上がり、オフェリアには3つの試練の内容を示した。ひとつは蛙の腹から取り出した金の鍵。二つ目の試練は異界の扉を開けて時間内に帰還し、金の短剣を取ってくること。最後の試練は満月の夜に無垢なる者の血液を捧げること。試練を乗り越える中、母親が不正出血を起こし、日に日に容態が悪化する。そして出産の日、母が逝去してしまった。反乱軍である事がばれた主治医は射殺され、メルセデスは捕まるも命からがら逃走に成功する。激しくなる戦火、大尉との不和からオフェリアは脱出を決意する。大尉に追われながら、生まれたばかりの赤ちゃんを抱き、森の迷宮へと足を踏み入れる。
感想
冒頭、千と千尋の神隠しを彷彿させるような幻想的な建造物が出てきて、それをきっかけとしたファンタジックな表現が多く、非常に幻想的な情景の描写が多用されていると感じました。3DCGがとても綺麗で質感がよく表現されていると思います。現実と幻想、戦争と平和、絵本と現実の差分が非常によく表現されていて、ドキドキハラハラとするシーンは、見る人をあっという間に物語の中に引き入れます。ふわふわした非現実的なファンタジーの作品が多い中、この作品は異彩を放っているように感じました。麻酔の無い中での外科的医療や、痛みが伝わってくるシーンが印象的で、流動的な物語のアクセントとして非常に強調されていると思えます。昨今だと「うみねこのなく頃に」のように、愛がなければ視えないものがあるという事が、伝わってきて、まさにダークファンタジーの王道といえると思います。あと、スペイン映画はファンタジー要素があるほうがもろにリアルでグロイと思いました。