ミツバチのささやき

El espiritu de la colmena

 

制作年度 : 1973年

上映時間 :99分

監督 :ビクトル・エリセ

出演 :アナ・トレント

学生 M・F (2011)

あらすじ

 本作の舞台は1940年、スペイン内戦が集結した直後のスペインカスティーリャ地方の小さな村。そこに手紙を書き続ける母親テレサと夜中までミツバチの研究に没頭している父フェルナンド、一番の遊び相手である姉イザベルと暮らす6歳の少女アナが主人公の物語。ある時村で映画フランケンシュタインが上映される。その映画で登場する少女と怪物は死ぬ運命にあったのだが、そこにアナは疑問を持った。「なぜ怪物は少女を殺したの?なぜ怪物は殺されたの?」。そこからアナの物語は始まる。

感想

 まず評価すべきことは主人公アナ・トレントの魅力である。その可愛さや表情、存在感はありえないものとなっている。姉のイザベルの魅力も相当のものであり、お互いに異なった魅力を持っているからこそ、それが映画全体を支えており、印象を変えている。そのぐらいに際立っている。カメラワークも今の映画にはないものであり、色や光の使い方がうまく、影絵のようになっている場面が多くてそれらはとても印象深いものだった。音楽も物語を盛り上げるようなものばかりとなっていた。

 この映画はかなり奥深いテーマを持っている作品だと私は思う。そして印象深いシーンもたくさんあった。姉イザベルが猫の首を絞めたり自分の血を口紅のように唇に塗るシーン、人体標本に目を入れるときのアナの戸惑い、生まれついて人を殺すように出来ている毒キノコは無視されるか殺される運命にあるという父親の言葉など、一つのことについてこれほど違う視点で見せる映画は他にないと私は思う。特に父親の言葉は犯罪というものの捉え方自体を表しているように思う。この物語は一見、アナがどんどん変わっていっているように見える。しかし、実は変わっていない、むしろ変わることをアナ自信が拒否しているのではないかと思う。変わることに抗うアナの締めくくりとして、ひとり暗闇の中、精霊に向かって語りかけるという最後のシーンがあるのではないだろうか。そしてそこにあるものは、我々が失ってしまったモノなのではないだろうか。 この作品は先も言ったようにとても深いものであるため、私もまだ本作を完全に理解しているとは思っていない。そのため、今後何回も見てみたいと思う。この作品はそう思わせるものでもある。そして素直な気持ちで、純粋に見ることがこの作品を面白く見ることの出来る方法なのではないだろうか。とても古い映画ではあるが、それ故に我々が手放してしまったものがそこにはあると思う。『ミツバチのささやき』は、生涯で是非一度は見てほしい映画の一つである。私はこの作品に出会えて本当に良かったと思う。

学生 T・N (2011)

あらすじ

 1940 年頃、スペイン中部のカスティーリャ高原の小さな村オジュエロスに一台のトラックが入っていく。移動巡回映写のトラックで、映画は『フランケンシュタイン』。喜ぶ子供たちの中にアナと姉のイザベルがいた。その夜、映画に出てきた怪物(精霊)に興味を持ちったアナはイザベルから村のはずれの一軒家にその怪物に会えると聞いた。それからアナは何度もそこへ足を運ぶことになるのだが…。

感想

 この映画『ミツバチのささやき』は以前からとても評判があったことや、ジブリ映画で知られる『となりのトトロ』のもとになった作品であると聞いていたのでとても期待していたのですが、今回この映画を見てみて、とにかく「凄い」の一言でした。

 具体的にどこが凄いのかといいますと、まずは一番に印象に受けたのが映画シーンの描写です。普通の映画作品では一つ一つのシーンでカメラを動かしながら撮るのですが、この作品はそうではなく、ほぼすべてのシーンがカメラ固定撮影です。固定撮影では映画に迫力がでないのではないかという人もいるかもしれませんが、この映画はとても素晴らしい構図によるシーンで構成されていてまるで絵画の中に人が生活しているというように感じることができます。たまに背景描写で使われる水平移動による撮影がスペインの内戦終結直後の様子を壮大に表現していることも好印象でした。

 次に良かったのはなんと言ってもストーリーですね。隠喩・対義表現を多く絡めてくるので、国語の苦手な人が理解するには厳しいかもしれませんが、その逆で難しい話が好きな人にはきっと面白いと思ってもらえると思います。ちなみに、内部的な話としては大人と子供の世界観の狭間で生まれた空虚やキノコ・フランケンシュタインといった隠喩を用いてストーリーを描いていくことによって、内戦終結後当時の戦争・政治批判を投げかけるというものです。

 自分としては、キノコを食べるシーンがとても印象的で、戦争に対する恨み憎しみがとてもよく伝わってきて感動できました。

 まあ、感想としてはこんな感じです。全体的に映画内の世界観がすばらしい作品だと思うので、皆さんもぜひ見てみてください。