学生 O・H (2009)
あらすじ
コロンビアの田舎の花農園で働く主人公、17歳のマリアは上司とうまくいかず、また、妊娠したために仕事を辞めた。結婚について恋人と考えが合わず別れ、さらに、家族ともうまくいかないマリアはパーティーで出会った男の紹介で麻薬の運び屋になる。それは胃の中に麻薬の入った小袋を飲み込んでニューヨークまで運ぶという命に関わる危険なものであった。運び屋のひとりは空港で捕まり、同じく仲間のルーシーは体内で袋が破けたために死んでしまった。マリアは身の危険を感じ、とっさに薬を持って逃げだしたが、初めてのニューヨーク、言葉も場所もどうしたらいいのかも分からないマリアは、ルーシーの姉をたよりにクイーンズを訪れ、そこで親切にしてもらう。しかし、ルーシーが死んでしまったこと、運び屋であることが知られてしまい、追い出されることになった。ルーシーの姉の知人の助けでルーシーの埋葬や薬の件が一段落し、マリアは帰国することを一旦決めたが、お腹の子のためにアメリカに残ることを決意し、物語は終わる。
感想
この映画では、コロンビアの平凡な女の子がひっ迫した生活を打開するために、危険な仕事へ身を投じ、成長していく姿が描かれている。
この映画を観ていて、主演のカタリーナの目が印象的であった。緊張、不安、いらだち、おびえ、赤ん坊のエコー画像を見たときの安堵、そしてアメリカに残るという強い決意が、彼女の目にはっきりと表れていたと思う。そして、映画のラストシーンである強い決意のもと歩く彼女の姿から、「ひと粒のひかり」が見えた気がした。「ひと粒のひかり」とは、希望であり、お腹に宿ったちいさな命のことであると私は思う。
この映画はコロンビア人女性の話をもとに製作されており、作品自体はフィクションであっても、胃におさめて運ぶという麻薬の運び屋がいるということ、平凡な生活を送っていた者が麻薬の世界に足を踏み入れることは現実に起こっていることである。監督のジョシュア・マートンはインタビューの中で、「マリアと同じ目線で観てほしい」と言っており、この映画は現実に起こっているのだということを意識しながら多くの人に観てほしい。