学生 F・U (2009)
感想
この作品は、海での事故により脊髄を損傷し、顔以外の体のすべてが麻痺してしまい、不自由な生活を送っているラモンという男性が主人公です。この男性は寝たきりの生活を送っており、彼の世話は彼の義姉や甥など家族たちがみています。
この作品の大きなテーマは尊厳死で、この映画はラモンが尊厳死を望み、裁判所に尊厳死を合法と認めてもらえるように裁判を起こすところから始まります。
スペインでは尊厳死を認めておらず、違法となります。そのため、ラモンはフリア弁護士に頼み、自分の死を公に認めてもらおうと活動しています。このフリアという弁護士も不治の病を抱えており、ともにラモンの死のために活動していきます。
この作品は実在した、ラモン・サンペドロさんの手記をもとにして作られた映画です。ラブストーリーというジャンルだったのですが、どちらかというとヒューマンラブストーリーな気がしました。ラモンの尊厳死という願いと様々な思いを抱えて彼と衝突していく家族や彼を取り巻く人たちの様々な思い、そしてフリアの願いという死をテーマに様々な人たちの思いが交錯しています。この映画の見所はそんな彼らの思いにあると思います。
私はこの映画を見るにあたり、尊厳死について考えました。尊厳死=自殺というくくりにはならないと思います。家族と話したことがありますが、痛い思いや苦しい思いをするくらいなら安楽死するのが一番だと考えます。自殺と何が違うといえば、はっきりと違いを言えることはできませんが、生きることは義務ではないと思います。権利だと思うからです。
ラモンは人生の半分以上もベットの上で過ごし、どんな思いだったのでしょうか。家族に支えられて生きていかなければならないこと、彼はどんな思いでその人生の幕を閉じたかったのか。彼に実際に聞いてみることはできませんが、きっと彼にとって生きることで人生の楽しみを感じることもできず、家族への重みになっているのではないかと自責の念にとらわれてしまったのだと思います。
私が一番心打たれたのは、ラモンが裁判所から訴えを却下されまた、死ぬことができない苦しみにうなされている場面でした。そのときの彼は本当に苦しそうで、こんな姿を見続ける家族も苦しそうでした。
ラモンの家族も彼に死んでほしくはないのです。でも苦しんでいる彼を見続けることはできないのでしょう。最後には彼の願いを尊重する道を選びます。
私も自分の家族がラモンのように尊厳死を望んだら、はじめは大反対すると思います。死んでほしくはないです。でも、もし家族の苦しむ姿を見たら、きっと最後にはその意思を尊重するのだろうと思います。なぜなら、本当にその人を思っているのなら、その人の意思を尊重することが正しいのではないかと考えるからです。その意思を無視して、自分のエゴを押し付けるのは違うと考えるからです。
この映画は是非、大学生に一度は見ていただきたい映画だと思います。尊厳死という言葉を聞きなれてはいないでしょうが、よく考えてほしいです。
自分なりの答えを持ってほしいテーマであると考えます。