学生 A・M (2009)
あらすじ
舞台は1792年マドリット。未だにその名が有名である画家であり彫刻家のフランシスコ=デ=ゴヤを主人公として、フランス革命やスペイン王室の様子、さらにその時代の美術もみながら楽しめる作品となっている。
感想
なかでも印象に残っているのは、やはり教会で行われていた異端審問だ。食事の際、豚肉を食べなかったというだけで異端者にされてしまうヒロイン、イネス=ビルバトゥアが拷問されるのは見るに苦しいものがあった。その時代に行われていた拷問とカトリックの宗を強制する教会が、昔といえど本当にあったことだと思うと恐ろしく感じた。
この映画は、拷問の様子や多くの罪なき市民が殺されていく侵略の光景が生々しく再現されている。残酷でショッキングなシーンもあるため、そういったものが苦手な人は見ない方がいいかもしれない。しかし、それほどまでに歴史とその恐ろしくも美しい時代を生きた人々の様子をリアルに感じることができる作品ということなのだと思う。
恐ろしい部分ばかり書いてしまったが、そのなかにも愛や友情を感じられるところもある。一つに親子愛があげられる。イネスが教会で拷問を受け閉じ込められているのを助けようと、イネスの家族は自分たちの処罰を恐れもせずに修道者のロレンゾを尋問、拷問する。娘を守るためなら手段を選ばないという家族の思いに親が子を思う気持ちの強さを感じた。また、監禁中にロレンゾの子を授かったイネスが生まれて間もなく離ればなれになった娘を正気を失ってもなお思い続ける様子からも愛をみることができる。友情は、何年経ってもイネスを見守り続けるゴヤとイネスの関係から伺える。人によっては愛情ではないかととらえる人もいるかもしれない。私は、イネスのことをどこか娘のように愛し、友として守り抜こうと決めたようにゴヤを見たので友情だと思った。それぞれの見方で楽しんでほしいと思う。
この映画を通して、この作品でとりあげられている時代は、宗教問題や戦争、そして拷問などが多く存在し、悲しい歴史をもってはいるがその分今よりも親子の愛矢友情など、人と人との絆が強かったように思えた。そして人の生きようとする強さが現れているように思う。