学生 Y・T (2010)
あらすじ
すべては離陸からはじまった…わけではなかった。
パリで暮らす25歳の大学生グザヴィエは経済を専攻する大学院生。目下、卒業を来年に控えた彼の悩みは就職。かつては作家に憧れていた彼も、やはり安定が恋しい。父親のコネを使って面会したお役所の大物ぺラン氏が言うには「スペイン語とスペイン経済を勉強しなさい」。そうすれば「将来性のある仕事をみつけてやろう」。かくしてスペインはバルセロナへの留学を決意したグザヴィエは早速、欧州交換留学プログラム“エラスムス計画”を利用するため、登録準備を開始する。
いよいよ出発の日。すすり泣く恋人マルティーヌと母の前では男らしさを見せたグザヴィエだったが……空港のゲートをくぐり、ひとりになった瞬間、涙がとまらなくなってしまう。
バルセロナの空港におり立ったグザヴィエは、ワイルドな街の雰囲気に若干おびえつつも「1年後パリに戻れば、苦労も楽しい思い出だ」と自分を必死に励まし、母親に紹介されたアパートへ向かう。が、しかし。そこは長く滞在できるような環境ではなかった。アパートを飛び出し、空港で知り合った男の部屋で居候をしながら、自分のアパート探しを開始。苦難の果てに見つけたのは彼にとっての“理想の部屋”。その部屋にはヨーロッパ各国からやってきた5人の若者たちが(家賃をうかすために)一緒に暮らしていた。イタリア人のアレッサンドロ、ドイツ人のトビアス、デンマーク人のラース、英国人のウェンディ、スペイン人のソレダ。5人による“面接”にパスしたグザヴィエは晴れて“スパニッシュ・アパートメント”のメンバーとなる。とはいえ、その暮らしは混乱の極み。冷蔵庫内の置き方から、お風呂場の掃除の仕方、恋愛、友情、喧嘩に挫折…。1年間の期間限定国際交流が始まった…。
感想
私は観る前には、国籍の違う学生達の暮らすアパートの中でのドタバタや恋愛などを描いた作品だろうと思っていたのだが、これはいい意味で期待を裏切られた作品だ。映像がスタイリッシュで面白いと感じ、冒頭から興味をそそった。
パリに残してきた彼女との関係、飛行機で偶然知り合った新婚夫婦との関わり、アパートでの国籍の違うそれぞれの人たちとの関わりも、コメディーの要素が強いながらも説得力のある作品だった。勢いでバルセロナに来てみたものの言葉も殆ど解らず土地感もない。そんな中でそれぞれ国籍の違う男女達と高い家賃を分割して同居することになるのだが、それぞれの国民性や、それぞれの性格があり、ただでさえ6人もの同居となると色んな問題も出てきていた。若さゆえの暴走も多少はあるとは言え、基本的にはみんなニュートラルな考え方を持っておりとても好感を持った。作品は恋愛や初めての留学生活を経て成長するグザヴィエの精神的な成長の話だが、とてもさわやかな印象を残し、後味のいい作品だった。少し羨ましいような気分にもさせられた。気軽に楽しめるなかなかの映画だった。