永遠のこどもたち

El Orfanato

 

制作年度 : 2007年

上映時間 : 108分

監督 : J・A・バヨナ

出演 :ベレン・ルエダ

学生 M・F (2011)

あらすじ

 ストーリーは主人公であるラウラが夫と子供を連れて自らが育った孤児院に移り住むが、ホームパーティを開いたときにラウラの子供であるシモンがいなくなってしまい、彼を探す彼女の周りで次々と不可解なことが起きるというもの。

感想

 私はホラー映画が好きで良く見るのだが、本作は久々に怖いと思えるホラー映画だった。また、怖いだけでなくストーリーも非常に凝っており、面白さを感じることが出来たし、ラストですべてが分かったときにはその事実に驚いたと同時に感動もした。よくある中途半端な映画ではなく、非常に完成度の高い作品であり、ホラー映画でここまで感動するのは初めてだった。また、こんなに多くのものを与えられたのも初めてだった。この映画には確かにグロテスクなシーンもあり、個人的にはそこは苦手だったが、この映画が与える恐怖はそういう恐怖ばかりではなく、むしろこういったものは非常に少ない。この映画は人間が本当に怖いと思うことを視聴者に与える。それが何かというのは、実際に見て確かめてほしい。また、ラウラのあまりに深く、哀しいまでの強い愛情には感動せずにはいられなかった。そこから伝わってくるものは非常に大きいものであった。その分、真実を知ったときのラウラの絶望感は計り知れないものだったというのが痛いほどに分かった。この映画は「子供」が重要キーワードである。この子供についても本作はかなり特徴的だと私は思う。ホラー映画で出てくる子供というのは大抵大人びている傾向が強いのだが、永遠のこどもたちではあくまで「子供」だった。そこが映画自体の面白さを引き出しているし、あくまで子供であることで視聴者に与える恐怖も大きくなっていると感じられた。また、本作のタイトルでもある「永遠のこどもたち」という意味は最後に判明するが、私はこの意味が分かったとき、ラウラ自身が「永遠のこども」だったのだと感じた。このことは非常に大きな意味を持つし、この映画はこの一言で全てを物語っているとも言える。つまり最初から視聴者にはこの映画の答えが与えられていたのだ。それがあったからこそ、観ている人が全ての事実が判明した最後に与えられたものはとても大きいのではないだろうか。私は視聴者に何かを伝えなければ、伝えようとしなければそれは映画ではないと思っているのだが、永遠のこどもたちは十分過ぎるぐらいに伝えてくれたし、その一つ一つがとても大きくて、とても深いものだった。

 永遠のこどもたちという映画は、是非ともお勧めしたい映画である。ホラー映画が好きな人にとってはもちろん、そうでない人にも十分楽しめる作品であり、また、様々なことを考えさせられる内容の映画である。また、日本映画の「仄暗い水の底から」が好きな人にとっては、内容が似ている部分があるため特に楽しめる作品だと思われる。是非とも多くの人に見てほしい映画の一つであり、まさに名作と呼べる作品だった。私ももう一度観たいと思う。

学生 T・S (2010)

あらすじ

 孤児院で育った母親のラウラは、長らく閉鎖されていたその孤児院を買い取り、障害を持つ子どもたちのホームとして再建しようと夫のカルロス、息子のシモンとともに移り住んでいた。シモンは一人っ子で、遊び相手のいない寂しさから空想上の友だちを作って遊ぶようになり、その姿にラウラは不安を覚える。そして入園希望者を集めたパーティーの日、シモンはこつ然と姿を消してしまう。(インターネットより一部引用)

 過去に起こった、孤児院での隠蔽された悲惨な事件との関連性や、母親の弱さと強さ、そして子供との愛が描かれているサスペンス・ホラー映画である。ラストシーンで、ただのホラー映画だと思えないような、観終ったあとに深く考えさせられるような深い余韻が残る作品だ。

感想

 ホラー映画だと全く知らずに最初は楽しく観ていたのですが、途中から物凄く怖い思いをしました。しかし観終わった後にもう一度観たい!という衝動に駆られました。映像特典でも監督のインタビューで「最低でも二度は観てほしい。」と言っていました。この映画のキーワードになっていたのが「見えないものを信じることで、いづれ見えてくる」というものでした。霊的・心理的な要素を含んでいたので、少し現実と離れてはいましたが、母親の子供を思う気持ちが凄く伝わってきました。ネタばれをしてしまうと、最終的には母親も子供も死んでしまって夫だけが残されるのですが、ありがちなハッピーエンドにしないところがまた面白かったです。子供役のシモンの優しさ、純粋さが前面に出ていて、改めて子供って可愛いなあと思いました。

 とにかく映像が綺麗だし、映画中に流れるオーケストラの荘厳な音楽も、内容にぴったりです。私はやわらかいスペイン語が聞ける字幕再生がオススメです。怖いけれど、是非多くの人に観てほしい作品だと思いました。