学生 H・S (2009)
感想
映画のタイトルにもなっているカルメンという女性とホセという男性、この二人を中心に物語は進められていく。ホセとフランス人作家との会話から過去の出来事を回想していくスタイルで話は進む。これの手法は時間軸を理解しやすくて私は好きだ。また所々に歌によって登場人物の心情を表しておりこれも伝わりやすくてとても良かった。
カルメンは自らを悪魔のようなものだ(作品中で正確になんと表現していたかは失念)と自覚しながらもそれを自分の生き方として変えず次々に周りをトラブルに巻き込み、男を破滅させていった。最後はその生き方を曲げずにホセにナイフを突き刺され死んでしまう。彼女の生き方は暴虐であり阿婆擦れと取ることはできるがそこには自分の思いに対して真っ直ぐに行動していたという事も考えられるのではないかと思った。
一方、男性であるホセは純真無垢、忠実な兵士でありその人生のすべてを兵士であることに捧げてきたがカルメンとの出会いによりその人生は変わり行く。中尉まで上り詰めたにも関らずカルメンをわざと逃がし歩哨へ降格、ついには上司を殺し山賊に成り下がる。しかし、この行動はすべてカルメンを求めるがための愛であり様々な苦悩の末、愛し合う仲となった。彼はこの時には完全にカルメンによって狂わされていたのだと思う。
互いに愛し合う関係も長くは続かずカルメンはまた別の男に惹かれてしまう。それに激怒したホセは浮気相手を殺しその後カルメンにも関係を拒絶され、自らだけのものにするためカルメンを刺殺する。
ホセはカルメンが一生をささげられるような女では無いことは理解していたが自らの人生を省みてその生き方を悔いることはしなかったように私には見えた。カルメンとホセの人生が交じりあったのは一瞬であったが互いにその人生に後悔はなく自らの生き方を全うしたのではないだろうか。
ホセがカルメンに惑わされ、はまり込み最後には処刑される、という人生はよく描かれていたし理解することもできたが、カルメンの人生について詳しいことは明かされず、女性としてなぜそのように奔放、特に異性に対して奔放的であってしまうのかは映画を見ただけでは分からなかった。確かに多くの男性がカルメンの魅力にはまっていくがカルメンから男性に近寄った結果そうなったように見えた。
映画のほかにオペラや小説があるようなのでそちらだとまた違った視点から話を見ていくことができるのではないだろうか。