学生 T・Y(2011)
感想
主人公のハンナ(サラ・ポーリー)は製造工場で働くマジメで物静かな女性。耳が悪く補聴器をしているが、仕事への影響はない。今日も始業の合図と共に淡々と作業に浸り、誰とも付き合わず、言葉を交わすこともなく、一日はただ単調に過ぎていく。だが、そんな生活を逆に心配した上司は、半ばむりやり彼女に有給休暇を取らせる。「どこか旅行でも行って来い」。言われるままに訪れたのは、とある港町だった。ハンナはここで、海の真ん中にある油田掘削場で火災事故が発生したことを知る。そして、油田では火傷を負った男性がいまも看護を待っている、という話を聴きつけ、自らその役目を引き受ける。彼女はそのむかし、看護士だったのだ。さっそくヘリに乗り込み、ハンナは油田掘削場へと上陸。そこで、事故で一時的に視力を失った患者ジョゼフと出会う。寝たきりながらも陽気に言葉を交わそうとするこの男と、この海の孤島に住む不思議な住民達と一羽のアヒルとに挟まれながら、ハンナは少しずつ心を開き始めていく。冒頭から、文句たらたらだったけど、結構楽しめてしまった。ハンナの変化が楽しくて、食い入るように見てしまった。
自分が一番気に入ったシーンは、ハビエル・カマラ演ずるサイモンと、サラ・ポーリー演じるハンナがブランコに乗るシーン。青春を思い出した自分はとてもやってみたくなりました
このあたりになるとハンナもだいぶ笑顔をみせるようになっているが、最初のころは威圧的で、誰にも心を開かない状態をずっとみてきているので、なんとも幸せな気持ちになれた。
時に未来を阻むかもしれない彼らの過去の苦痛も、次第にふたりを苛む時は少なくなるだろう。
いつしか、人生は楽しいと心から思えるときがやってくる。そんな穏やかな希望を感じさせる強靭な愛の物語だった。