ラテンアメリカの光と影
(計5名の学生の感想)
時間:140分
製作国:アルゼンチン・フランス合作
監督:フェルナンド・E・ソラナス
出演:ウォルター・キロス、アストル・ピアソラ
配給会社:にっかつビデオ株式会社
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
学生T・S
推薦度:★★★☆☆
あらすじ
南米アルゼンチン最南端の島であるフエゴ島の小さな町ウスワイアからこの物語は始まる。この町に住む主人公マルティン・ヌンカは国立高校の生徒。国立といっても校舎はぼろぼろで雪が入ってしまうほどの状況、おまけに授業がつまらなく主人公は授業に身が入らない様子。しかしそうしたなかでも将来何をしようかと悩む日々は続く。
マルティンの両親は彼が6歳のときに離婚をし、父親は地質学者から童話作家へと転身してブエナスアイレスに向かったという。今の父親は母親の再婚者であるが、その義父を好きになれないマルティンは実の父親に対する思いを日に日に強めていく。そんなある日、マルティンの心のよりどころであった恋人が身ごもってしまった。マルティンは喜んだが、彼女は父親に叱られ腹の中の子供を堕ろしてしまう。このことをきっかけにマルティンは人生を見つめなおす。そして「一度決心すれば人生は変わる」という実の父の言葉を胸に、以前から気に掛けていた父親探しの旅に出る決心をするのである。
この旅をマルティンは自転車でするのであるが、その旅のなかでいろいろな人物に会い、数々の体験をするのである。当初ブエナスアイレスまでのはずであったこの旅は、父が見つからないままアルゼンチンを抜け、ボリビアを超え、コロンビアを超えて、終にはパナマ、メキシコにまで至ってしまう。それらの国々での体験は、父親の作った童話となぜか同じようなものであり、ファンタジックである。そして所々に白人社会に対する批判が垣間見られる。
こうして旅を続けるが、最後までなかなか父親には会えない。しかしマルティンはこの旅で得た体験や、父親が存在していてしかも実はまだ母親を愛しているという情報をつかむと、「自分を救えるのは自分だけ」という人生の悟りを開き、父親探しに見切りをつける。すると最後の最後には父親が不思議ではあるが会いにきてくれるのである。そして感動の再会を果たしめでたく終わる。
お勧めどころ
勧められる点は、南米の国々の景色、雰囲気が味わえるところ。遺跡などもみることができました。また全体的にコメディーなところがあり結構笑えることも評価できます。
お勧めできないところ
勧められない点は、所々物語が飛んでしまうところ。それほどひどくはないですがちょっと強引だと思う部分がありました。総合的には期待していた以上に面白かったです。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
学生 M・K
推薦度:★★★★☆
あらすじ
洋画、特に、アメリカ映画をよく見ている私にとって、この作品は新鮮だった。アメリカ映画と邦画の持っている雰囲気がまるで違うように、今回のこの作品が持っている雰囲気もそのどちらとも違っていた。
この作品を見て、まず最初に驚いたのが舞台になっているアルゼンチンに、雪が積もっていたことだ。これは私の偏見でしかないのだが、南米は、雪どころか、雨だって滅多に降らない、年中暖かい、そんな地域なんだと思っていた。まあ、それはいいとして、この作品の主人公はマルティンという高校生の男の子だ。彼の通っている学校はかなり、がたがきている。屋根はあってないようなもので、生徒たちは雪の降るなか授業を受けている。人が歩くだけで、校内いたるところに掛けてある偉人の肖像画が大きな音を立てて落下る。教室内には蠅が飛び回っているという状況だ。そんな学校に通っているマルティンはある時、学校にある英雄の銅像から、英雄の乗っている馬だけを盗んだとして、停学処分になる。また、彼の家庭事情も訳ありで、彼の両親は離婚していて、母親に引き取られた彼は、母親と、母親の再婚相手と暮らしている。しかし、彼は本当の父親のことを慕っており、母親の再婚相手とは上手くいていない。学校からも追い出され、家庭でも上手くいかない彼の唯一のよりどころであった彼女ともいざこざがあり、とうとう彼は街をでていく決心をする。無謀にも彼は!!
感想
これが何年に制作された物なのか性格にはわからないが、途中でていくるティオティワカンのピラミッドが修復される前の状態だったので、ここ近年の作品ではないのだろうと思う。主人公のマルティンは南米中をたびする。洪水に悩む国、貧困に悩む国々、独裁者が過酷な税金の取り立てをする国、政府批判をする人々。そんな様子を見て、彼は口癖のように言う。「ひどすぎる」と。これがラテンアメリカの現状をあらわしているとは思えない。何年か経って、少しはよくなっているのだと信じたい。しかし、過去にこのような現実を経験してきているのだと考えても間違いではないのかもしれない。
自分が何者なのか。自分がどこから来てどこへ行くのか。そんなことを考えながら生きていく主人公が身近に感じられて、私としてはとても見やすい作品だった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
学生 R・H
推薦度:★★★☆☆
感想
主人公のマルティン・ヌンカが母親と離婚した父親を探しにラテンアメリカを自転車で縦断するストーリー。その際に今の自分と同じぐらいの年齢の人なら普通考えるであろう「自分とは何か」という哲学的な問いや、将来に対する不安を抱えながら旅をする主人公、そしてその旅で出会う個性の強いキャラに出会う旅に成長していく主人公。しかし、ラストのシーンは結局は父親に会うことなく主人公は旅を終えようとする。ストーリー重視の方にはいまいちかもしれないが、軽く哲学に関心がある人には結構お勧めだと思います。
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学生 Z・G
推薦度:★★★★☆
あらすじ
アルゼンチン最南端の島,ウスワイアに住む高校生が主人公。財政難で荒れ果てた学校,義理の父親との不和,恋人との問題などで自分を見失った主人公が,実の父親に会うために自転車で旅に出る。父が暮らすというブラジル,アマゾン川流域の町を目指して,ラテンアメリカ縦断の旅が始まる。その道中で,主人公はさまざまな困難や出会いを経験する。
感想
まじめに作られた映画という感じがして好感が持てます。単なる旅行記では終わらず,随所でラテンアメリカの抱える問題を浮き彫りにしようとしています。特に,白人による侵略の歴史,貧困,搾取,対外債務,政治の無策ぶりなどが強調されています。アルゼンチン大統領は中でもひどく風刺され,どうしようもない滑稽な役として登場します。もちろん,これら「影」の部分ばかり強調されているばかりではなく,ユ?モアもふんだんに盛りこまれ,愉快ないい人たちもたくさん登場するので,暗い映画ではありません。まさに「ラテンアメリカの光と影」が描かれている感じで,この邦題はうまくつけられているなあと感心しました。
実際にラテンアメリカを縦断してロケを行ったと思われますが,やはり映像が非常に生々しいです。美しい景色もあることはありますが,それよりも荒涼とした風景が印象的でした。
それと,よくわからなくて印象に残ったのが,主人公の住む島で,テレビの予報のあとに島が傾く,という現象が起きているのですが,これは本当なのでしょうか。常識で考えればうそですけど,なんか本当っぽく扱われていたので。それと,ブエノスアイレスに辿り着くと町は水没しているわけですが,本当に何年か前に洪水でもあったのでしょうか。この映画は時々妙に幻想的になったりもするのでどこまでがリアリティを持っているのか分かりづらいです。
楽しいことばかりではないのに,旅がすばらしいものに思える。観ると自分も旅をしたくなる映画だと思います。
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学生 S・K
推薦度:★★★★★
あらすじ
この作品は、アルゼンチンのちいさな島に住む高校生の少年が、主人公になっている。彼の実の両親は離婚しており、現在は養父と実母、そして妹と生活している。彼は、今の生活(学校生活、島での暮らし、養父や恋人との関係など)がうまくいかず、旅に出ようと決心する。旅に決心しようとしたもうひとつのきっかけは、実夫が若いときに書いた童話であった。(この童話というのは、実父が少年と同じ年のころに南米を旅したときの体験が元になっている。)
こうして、少年は旅に出るわけだがたびの最終的な目標は実父に会うということであった。その途中途中で少年は、タイトルにもあるように、南米つまりラテンアメリカの「光と影」を見ることになる。少年が見るこの「光と影」を通して私たちもラテンアメリカについてより深く理解できると思う。
感想
この映画は、ジョークがきつく、少年が最初に訪れたブエノスアイレスは、水に沈んでしまっている。これは、ブエノスアイレスの洪水対策の悪さを皮肉ったものに思える。他にも、現実の話なのかそれとも夢の話なのか本当に区別がつかなくなる場面も多々ある。そこが、この映画も魅力であり、最も挽きつけられる所以だと感じた。
南米は外国からの借金を返済するために、油田を売り払ってしまったりと苦しい財政状態にある。また、現在の南米の状況ばかりではなく、過去の歴史までも垣間見ることが出来る。奴隷として酷な労働をさせられたり、外国からの侵略を受けたりと辛い体験をしてきたことが良くわかる。
確かに、この映画は、ドキュメンタリーではないので、風刺性が強く、大げさに描かれている場面もあるが、それがまたいいところでもある。いつも授業で見る教材ビデオのような裕福な都市生活だけでなく、様々な生活スタイル、国の情勢がわかるといった点で、この映画を皆さんにお勧めしたいと思う。
ちなみに、92年カンヌ国際映画祭にて高等技術大賞を受賞している映画技術も必見。