El Sur
学生 E・S
時間:95分
製作国:スペイン
監督:ビクトル・エリセ
出演:オメロ・アンティヌッティ、ソンソレス・アラングーレン
配給会社:東北新社
推薦度:★★★★☆
あらすじ
「父はもう帰ってこないと予感したのは15の秋でした」という少女エストレリャの回想から物語は始まります。政治的意見の相違から彼女の祖父と父は大喧嘩をし、一家は南から逃れるように北へ移り住みました。振り子で水脈を見つける能力を持ち、村人から尊敬されていた父はエストレリャの自慢でした。しかしエストレリャが8歳になった頃、父の心の奥深くに沈む、苦悩と孤独を感じ始めます。父は南に住む忘れることの出来ないかつての恋人への想いに苦しんでいたのです。それはエストレリャにも大きな影を落とし、父を奪う大きな不安へと膨らんでいきます。
感想
この映画の原作は、監督のビクトル・エリセの夫人である、アデライダ・ガルシア・モラレスの短編小説だそうです。全体を通して静かな雰囲気の映画で、スペインの北、バスク自治州を舞台に美しい映像が続きます。その中で私が特に印象的に思ったのは、光と影の対比です。この映画の設定には「スペイン内戦の深い傷跡」というのが根底にあるのですが、南部と北部、その二つの異なる風景や生の感じ方が光と影でもって効果的に表現されていました。冒頭で窓から射す光とエストレリャの暗闇の部屋、父アグスティンが逃避を試みた駅のホテルで横たわる部屋と窓に映る列車の光、教会の柱からふっと浮かび上がる父の姿、といったような感じで、光と影を対比させながら物語は進行していきます。そういう絵画のような美しい映像が、登場人物の微妙な心の動きを表現しているように感じました。最後は主人公のエストリャが北の地から南の地へと旅立つところで終わっているのですが、原作の小説では彼女が南に着いてからの話もあるそうなので、そちらのほうの映画化も期待したいところだなぁと思いました。