最近交通をめぐる状況は変化が著しく問題も山積している。情報通信の発達と共に道路交通に情報通信技術を導入したITS(高度道路交通システム)の普及は将来の交通を変えると考えられている。都市部の交通の交通渋滞は年々激しさを増しているが、混雑を解消するために従来のインフラ整備ではなく交通の使い方を工夫するTDM(交通需要マネジメント)と呼ばれる新たな手法が各地で試行されはじめている。
一方地球温暖化で二酸化炭素の発生を抑制することが1997年の京都国際会議で定められ、車による排気ガスにも制限が設けられようとしている。交通事故の死傷者数は100万人を突破し、交通事故が日常化している。またその影で地方ではインフラ整備が遅れ、地方と都市の生活に差が開いている。
このように交通には目まぐるしく新しい問題と古い問題が錯綜し、解決の努力が求められており、土木技術者の役割は大きい。大学で教える交通工学もこれらの問題に対応し、多くの新たな項目を教える必要が出てきている。本書では交通工学の基本も述べつつこれらの社会の変化も採り入れ実務的な観点から最新の内容を分かりやすく述べることを目的として編集され、このためなるべく難解な数式は省いた。大学の半期の講義は実際は12回程度が多いが本書はそれに合わせて12章で構成され、1回で1章を進むようにして教えやすくしてある。各章の末には演習問題も採り入れ、授業の便を図っている。学生諸君には休憩用に各章末にコーヒーブレークを設けた。本書は大学、高専の教科書として書かれたものであるが、交通に携わる社会人の一般教養としても役立つものと考えている。
第1章 道路交通とその歴史
1.1 道路・交通の基本的特性
1.2 道路の歴史
1.3 道路交通の現況
第2章 道路交通調査
2.1 道路交通の発生
2.2 道路交通量調査
2.3 道路交通量の変動調査
2.4 混雑度調査
2.5 速度調査
2.6 自動車起終点調査
第3章 道路の路線計画と将来交通需要推計
3.1 道路の路線選定
3.2 将来交通量推計の手法
3.3 将来交通量推計の手順
3.4 発生集中交通量の推計
3.5 分布交通量の推計
3.6 配分交通量の推計及び道路網の評価
3.7 分担交通量の推計
3.8 非集計解析による交通需要推計
第4章 道路交通流と道路交通容量
4.1 道路交通流の特性
4.2 設計時間交通量と交通容量
4.3 単路部の交通容量
4.4 交差点等の交通容量
第5章 道路構造と設計
5.1 道路の種級区分
5.2 道路の利用者とその設計諸元
5.3 設計速度
5.4 視距
5.5 道路線形
5.6 横断面の構成
5.7 建築限界
第6章 道路交通システム
6.1 道路の種類
6.2 道路の管理
6.3 高度道路交通システム(ITS)
6.4 その他の道路交通システム
第7章 道路交通運用
7.1 交通渋滞とそのメカニズム
7.2 渋滞対策
7.3 交通需要マネジメント(TDM)
7.4 交通規制
7.5 交通信号制御
第8章 交通安全
8.1 交通安全の経緯
8.2 交通事故調査
8.3 交通事故分析
8.4 交通安全対策
8.5 交通安全施設
8.6 ITSによる交通安全対策
第9章 道路環境
9.1 道路と環境保全
9.2 道路交通騒音
9.3 低周波音
9.4 道路交通振動
9.5 大気汚染
9.6 環境影響評価(環境影響アセスメント)
第10章 道路交通経済
10.1 道路財源
10.2 中長期計画
10.3 道路の直接経済効果
10.4 道路の間接経済効果
第11章 地域交通
11.1 総合交通体系
11.2 地方と交通
11.3 防災と交通
11.4 コミュニティー道路
第12章 公共交通
12.1 バス
12.2 路面電車
12.3 新交通
12.4 タクシー、パラトランジット
参考文献
ホームページ一覧
索引