第8章 事例6:KQED

KQED

URL:http://www.kqed.org/

1.はじめに

KQED- Public Broadcasting For Northern Californiaは,北部カリフォルニア州域のPBS放送局である。KQEDのホームページを図8.1に示す。図8.1の左側にあるKQEDのサイトのメニューは、テレビ(TV9)、ラジオ(88.5FM)などのように、いくつかに分かれているが、特にここでは、教育に関連している「KQED EdNet」を中心に紹介する。

図8.1 KQEDホームページ


2.Webサイトについて

(1)KQED EdNet(http://www.kqed.org/ednet/)

 KQED EdNetは、KQED Education Network の略であり、テレビやラジオを効果的に利用しながら、革新的なメディアの理解・制作・利用を通して学習を促進することを目的としている。教師、保育関係者、親、地域に対して、ワークショップやイベント、学習活動等を通して、サービスを提供している。
 EdNetのホームページを図8.2に示す。発信内容は、「Ready To Learn」「School Services」「Adult Learning」「Media Literacy」の4つに分類されている。以下では、この4つに分けて、各ページを紹介する。

図8.2 EdNetのホームページ

1)「Ready To Learn」

Ready To Learn(RTL)は、低所得層や教育が行き届いていない地域の子どもたちを仕事の対象としている大人向けに、子どもたちの世話の中で、KQEDの9チャンネルの番組で学習をするための方法を教えている。RTLは、Bay Areaの親や保育者に、教育環境を高めるための子供向け番組や、ワークショップ等を提供している。

Ready To Learnのページ(図8.3)では、PBSの子供向け番組表のページへのリンクや、ワークショップの紹介、絵本のコンテストの開催要項&過去の作品(図8.4)が提供されている。

図8.3「Ready To Learn」のページ

図8.4ワークショップの紹介と、絵本のコンテストの開催要項&過去の作品

2)「School Service」

School Service(学校へのサービス)として、毎年1200以上の学校に対して教育番組(Instructional Television)を提供している。Bay Areaの学校(教室)での使用のために、毎年100を越える教育番組のシリーズ(1000を越える番組)をPBS局から獲得している。それに加えて、教師がテレビや他のメディアを教室で利用するスキルを提供するワークショップも開催し、KQEDの番組で浮上した問題に対して公共セミナーを行っている。

School Serviceのページ(図8.5;8.6)では、放映されている教育番組の紹介が主に行われている。教育番組の番組表や、各番組のスケジュールなどの詳細を見ることができる。

図8.5「School Services」のページ

図8.6 番組を分野ごとに分類したリストと、番組の解説例

3)「Adult Learning」

 Adult Learningプロジェクトとして、よりよいキャリアの可能性を個人に提供し、自分の子どもたちと本を一緒に読むことができるようにするために、成人としてのリテラシーを身に付けることに焦点をあてている。

 このページ(図8.7)からは、成人教育に関するPBSのページが紹介され、そこへのリンクが提供されているのみである。

図8.7 成人教育に関するPBSのページへのリンク(Adult Learning)

4)「Media Literacy」

メディアリテラシープロジェクト(Media Literacy Project)として、1週間の集中的なメディア教育講習会を教師に提供している。また、KQEDのメディア教育のシンクタンクであるメディアサロン(Media Salon)が、メディア・教育・文化に興味のある教育者、芸術家、メディアプロデューサー、研究者の集会を、月に一度提供している。さらにYouth Media Corpsは、さまざまなグループの若者に、大衆向けのメディアについての共同学習や共同作業をさせる、革新的な教育のイニシアティブである。

 Media Literacyのページ(図8.8)では、各プロジェクトの紹介や、Youth Media Projectによるページ(若者の視点によるページで、注目した人物へのインタビュー記事や、芸術作品が載っている;図8.9)、メディアリテラシーとは何かを学ぶためのリソースの提示(参考文献)、教室におけるビデオプロダクションに関する情報が公開されている。

図8.8「Media Literacy」のページ

図8.9 Youth Media Projectのページ


3.訪問聴取

(1)訪問日時2001年2月5日(月)午後2:00〜午後4:00

(2)応対者: Director of Education, Rich Winefield, Ed.D 

       他各部門の責任者

(3)聴取内容:

* ワインフィールド氏は,教育部門(New Media and Educational Services)の総責任者であり,テレビ局の副局長を兼任している。KQEDに来る前は,カリフォルニアのある学区の教育長として活躍していた。ワインフィールド氏の説明のあとで,彼が管轄する教育部門の4つのセクションの責任者が交互にそれぞれの活動に付いて説明してくれた。

* 教育部門の活動は,教育ネットワークとニューメディアが中心。KQEDでは,教育番組の制作はほとんど行っておらず,PBSからの配信業務を中心に番組編成を組み立てている。番組利用を促進するために,そして,より一般的なメディアと市民をつなぐための素地を作るために,地元の教師や地域住民をターゲットに活動を展開している。そこでは,放送のみならず,あらゆるメディアの利用が前提となっており,Webも有効な一手段として捉えている。

* 「『メディアと社会』,いわばメディアリテラシー教育が我々の大きな課題。そのためにワークショップなどを開催している。将来インターネットもブロードバンドの時代になり、放送も電波だけではなくネットを通じて配信されるようになるでしょう。我々はこれに対応すべきして準備しています。」とはワインフィールド氏の弁。

* 活動のひとつが「Project for Adult and Learning Community」。これには二つの成人教育プログラムとひとつのWorkplaceがある。いわばLiteracy Projectである。

* また教員不足を補うための教員リクルートのスポットなども制作・放送している。従来教員のステータスが低いことや、イメージが悪いことから、もっと生き生きとした教師の姿等を強調したイメージスポットである。現在カリフォルニア大学などの教員養成系大学ともパートナーシップをもっている。

* 教育ネットワークではミュージアム、コンフェレンスルーム、本テレビ局、教育事務所などでメディア教育のワークショップを開催している。

* 「メディアと社会イニシャティブ」(Media in Society Initiative)ではメディアの利用と創生(use and create media)をテーマに,一ヶ月に一回メディアスペシャリスト、教師、学生などを一堂に集めて討論会を実施している。メディアリテラシーをどうやって学校に導入したらよいのか、また情報のクオリティを上げるためにはどうしたらよいかなどを議論している。

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(財)日本放送教育協会(2001)『教育目的のホームページについての調査・研究報告書』NHK学校放送番組部からの受託研究、[鈴木克明・伊藤拓次郎・市川尚の共同執筆]