はじめに <NHK学校放送番組部への提言>

 (財)日本放送教育協会がNHK学校放送番組部から受託した2000年度の研究テーマ「教育目的のホームページについての調査・研究」の一環として,われわれ調査・研究スタッフ(代表:岩手県立大学教授 鈴木克明, 国際協力事業団IECコンサルタント 伊藤拓次郎,岩手県立大学助手 市川尚)は,本年度,アメリカ合衆国を対象に先進的なホームページの活用事例を調査し,訪問聴取を実施した。その報告を次章以下にまとめたが,この「はじめに」では,調査結果をベースにNHK学校放送番組部が今後の活動として検討に値するであろうと考えられる事項を以下に6つの「提言」としてまとめた。


提言1●チャレンジ・リサーチ:教師の知恵の輪●

 インターネットを活用した調べ学習のシナリオを教師対象に公募し、NHKのホームページから提供する。対象学年及び教科、活動のねらい、子どもをその気にさせるシナリオ、リンク集、調査課題と成果物の事例などの情報提供を受け、これからインターネットを調べ学習に使ってみようとする教師の道具箱とする。教師の「知恵」の輪を広げるサイトとする。これまでの番組制作の経験から効果的なシナリオの事例をサンプルとして提示する他,各教科の専門委員にも投稿を依頼する。(キーワード:WebQuest、HP:wnet.org)

提言2●こちら総合学習企画室●

 総合的な学習の時間についてのアイディアを提供するホームページをつくる。単なる実践事例の紹介に留まらず,題材は異なるものの,子どもたちに総合的な学習が目指す実力をつけるためにはどのような共通要素を踏まえることが必要であるかを吟味し,学習の進め方のパターンを提案するサイトとする。実践事例として提供されているものをそのまま実行することから始めることも可能であるが,一部を地域の事情にあわせて変更可能なモジュール構成とし,教師のオリジナリティ志向を刺激する。教師からの提案も受け付けるが,共通のモジュールを使って企画を表現するようにする。(キーワード:project editor)

提言3●放送と教育21憲章●

 放送教育を推進してきた立場から,21世紀の教育とテクノロジー,メディアと授業づくり,映像表現と情報発信などについて指針をまとめる。今までNHKはどんな考え方で学校放送番組を制作してきたのか,今後どのようなビジョンを持っているのかを内外にアピールするとともに,制作目標を共有化・啓蒙するキャッチフレーズとして活用していく。どんな授業づくりに役立ててほしいのかまで踏み込んで訴えることで,教育改革運動の担い手となる。(キーワード:GLEF Agenda)

提言4●「こんなことができる〜メディア教育最前線から〜」●

 日本各地(あるいは世界)のメディア活用実践を紹介するシリーズ番組を制作する。新しい時代の授業をイメージさせるようなドキュメンタリー&解説型の番組とし,教育革新を体現するキーワードを実践の中に見い出す。できるだけ多くの授業実践例をもとに,「こんなこともできます。あなたもやってみませんか。」を共通メッセージとする。各地の放送局をとおして,おもしろそうな授業実践を集める。メディアを入れて何が変わったのかを振り返って比較する。(キーワード:紹介者)

提言5●インターネット子ども探偵塾●

 夏休みなどに30人程度の子どもを集めて、合宿形式でインターネットを活用した調べ学習を行い、その様子を取材して番組化する。番組ディレクターとの共同作業とし、子どもたちにはプロの仕事のやり方を見せていき、ディレクターは子どもの発想を身近に知る機会とする。番組視聴者には、総合的な学習のイメージ作りを目指す。取り上げる題材は,インターネット上の調査に加えて,合宿期間中に子どもたちが現地を取材をし,それをまとめることができる身近なものとする。例えば,都会のオアシス調べ,ハイテク最前線,番組ができるまで,文学散歩など。(キーワード:Tech Camp、WebQuest、HP:mediaworkshop.org)

提言6●メディア教育ワークショップ●

 学校放送番組やインターネットを活用した授業づくりの実例を紹介し,自分の授業を構想するためのワークショップを各地で開催する。ひな形になるワークショップを東京で試行的に開催し,その成果を「ワークショップパッケージ(資料集)」にまとめる。ワークショップの進め方をマスターした世話人を中心にして,各地の放送局を会場に,夏休み等に教師を対象にワークショップを開催し,草の根的に番組サポーター&活用実践家のネットワークを構築していく。(キーワード:ワークショップパッケージ)

 

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(財)日本放送教育協会(2001)『教育目的のホームページについての調査・研究報告書』NHK学校放送番組部からの受託研究、[鈴木克明・伊藤拓次郎・市川尚の共同執筆]