アメリカK-12ホームページの特徴
〜Web66のホームページ調査を通して

市川 尚
東北学院大学大学院人間情報学研究科
鈴木 克明
東北学院大学教養学部

研究の概要:アメリカK-12から公開されているホームページにはどのような内容が公開されているのか。日本の小中高ホームページ活用のヒントを得る目的で、Web66のページ上にリストされているホームページから無作為抽出し調査・分析を行った。日本との相違点が顕著な部分を中心に、アメリカK-12ホームページの特徴を明らかにする。

キーワード:インターネット、ホームページ、K-12、調査研究

1.研究経過と本研究の目的
(1)研究の背景
 小中高のホームページの増加はとどまることを知らない。しかし、教育界へのインターネット導入がはじまってから2年以上経った現在でも、学校のホームページをどのように構築・利用していけばよいのかは、試行錯誤を繰り返している状態である。各々が独自のセンスでホームページから発信を行っており、事例の中に活用のヒントも点在している。全体を網羅したような実態調査を行い、体系的にまとめる必要が出てきている。
 小中高を対象とした代表的なホームページ調査には、100校プロジェクト事務局と大阪大学人間科学部教育システム学講座が、1995年11月に100校プロジェクト対象校に行ったアンケート調査がある(山内、1995)。この調査はインターネット全般が対象であるが、ホームページについても、発信内容をはじめ作成に携わった人などについてが質問項目に含まれていた。また、越桐(1997)は自らが公開しているリンクリストに登録されている学校を対象としてWeb調査を実施している。件数等の数量的調査と、ホームページ管理者へのアンケート調査が中心であった。米国のK-12を対象とした調査としては、西森(1995)が130校を対象として実施したものが報告されている。技術的側面と内容的側面にわけたカテゴリを作成し、発信内容の傾向を捉えていた。
 これまで行われてきたホームページ調査は、アンケートが中心であり、ホームページ自体の発信内容を対象としたものは少ない。ホームページの発信内容や活用法に関しては、今のところ事例紹介がほとんどである。
(2)筆者らの調査研究
 筆者らはこれまでに、教科ごとの発信についての事例紹介(市川・鈴木、1996-97)に加えて、日本の小中高ホームページの悉皆調査を実施してきた(市川・鈴木、1996a)。ホームページをひとつひとつ手作業で見てまわり、発信内容を調べて行く調査は、95年8月、96年1月、96年8月の合計3回実施した。また、96年12月と97年8月には件数のみの調査を実施した。
 97年8月18日時点での検索の結果、日本の小中高のホームページ数は、2,085件に達していた。この件数は、同窓会のホームページや、学校にほとんど関係のない所から簡単な紹介だけ公開されているホームページを除いたものである。これまでの件数の推移は、図1のようになる。各調査間の増加率は、古い順に(95.8〜96.1から)、1.0件/日、1.7件/日、3.6件/日、4.4件/日と徐々に高まっていた。特に最近の増加は「こねっと・プラン」によるところが大きい。


 図1 日本の小中高ホームページの件数推移

 調査には、日本全国の小中高校で公開しているホームページをできるだけ多く見つけるように、インターネット上で検索した。利用したのは大阪教育大学の「インターネットと教育」(図2)*1 GLOCOMの「日本の学校」*2、Yahoo!の「YAHOO! Japan」*3であった。特に、大阪教育大学のものは、ページの充実度、更新の頻度からみても、有用なリストである。


図2 大阪教育大学「インターネット教育」

 調査では、発信内容のカテゴリ分けを行った。各カテゴリの件数から、校種別の特徴をつかみ、一般型を作成・提案した(市川・鈴木、1996b)。また、調査を行っているなかで、発信内容を分析するための枠組みが見えてきた。豊福(1996)の「ホームページの意義」をとくに参考にし、広報、アーカイヴ、コラボレーション、収集、個人の5つに分類した結果として、広報(93%)とアーカイブ的な発信(73%)が多いが、コラボレーション(15%)や収集(18%)のための発信も若干行われていたことがわかった。
 ホームページの授業レベル(広報と個人を除く部分)の発信内容は、情報の流れによって単純に図3のように分類できる。発信(見てもらうことが)目的のものはアーカイヴ、受発信(情報をやりとりする)目的のものはコラボレーション、収集(情報を収集するためのリンクリストのようなもの)目的のものは収集として整理する枠組みを提案できた。教科(課外活動も含む)ごとの発信の度合では、クラブ(23%)が最も多く、情報(19%)、理科(15%)、社会(15%)、図工・美術(15%)の順となっていた。
 発信内容以外のホームページに関する項目としては、ファイル数(平均は141個)や容量(平均は2,031Kbyte)、あるいは責任者の提示の割合や更新の頻度など、量的な実態も明らかになった。


図3 ホームページ発信内容の分類

(3)本研究の目的
 上記のように、これまでは日本の小中高を対象に調査を実施してきた。しかし、インターネット先進国アメリカでも同じような結果が出るのか、という疑問を持った。そこで、本研究はこれまで使用した分類枠(カテゴリ、分析するための枠組、教科利用等)をアメリカK-12ホームページにあてはめ、日本との相違点を明らかにすることを目的とした。そこから、日本の小中高ホームページ活用のヒントを得るというねらいがあった。

2.Web66調査概要
(1)調査方法  Web66ホームページ(図4)*4上にリストされているホームページから無作為抽出し調査・分析を行った。これまで筆者らが蓄積してきた調査データと照らし合わせながら、日本の小中高との相違点が顕著な部分を中心に、アメリカK-12ホームページの特徴を明らかにした。アメリカK-12のホームページは膨大であり、悉皆調査ではなく、無作為抽出による調査となった。


図4 Web66ホームページ

(2)調査期日
 ホームページ検索作業に使用したリストは、97年8月18日時点のWeb66ホームページである。実際の収集は、9月上旬に行った。その後、数週間を補充・分析期間にあてた。
(3)調査対象
 Web66のホームページにリストしてある、アメリカ50州のK-12ホームページを無作為に50件抽出した。Web66は世界各国のK-12にリンクを張っているアメリカ有数のサイトである。Web66は、アメリカK-12リンクリストを各州ごとに分類し、小学校・中等学校・学区・教育組織・リソースの5項目に分けてリストしている。今回の調査では、小学校と中等学校にリストされているホームページのみを対象とした。
(4)調査手順
 調査対象がそろったら、これまでの国内調査と同様に、オートパイロットソフト(波乗り野郎ver2.02)を使用して、対象ホームページをすべて収集した。このソフトは、指定したホームページをローカルディスク上に再現してくれるものである。ひとつのホームページの収集(調査)範囲は、同一サイトから公開されている情報すべてとした。
 その後、収集されたかどうかの確認をしながら欠損箇所を見つけ次第、随時補充した。補充作業には、「Local Internet Builder ver.0.83」を使用した。ホームページは常に変化し続けるものであり、再び同形のホームページには出会えない可能性があるため、収集をしておく必要があった。それらのホームページの発信内容を一つひとつ見てまわりながら分析した。

3.調査結果
(1)件数
 リストされていたK-12ホームページの件数は図5のように、小学校が2,711件、中等学校が3,207件の合計5,918件であった。そのなかから、相対的な割合があうように、小学校を23件、中等学校を27件、無作為に層化抽出した。抽出したもののうち、存在していなかったものが5件、存在を確認できなかったものが5件あり、新たに他の学校を無作為に加えた。
 州別にみると、カリフォルニア州が圧倒的に多く、小学校と中等学校あわせて660件、ついでイリノイ州の321件と続いていた。
(2)発信内容(特徴)
K-12ホームページの発信内容(特徴)等の結果は当日報告する。


図5 Web66ホームページの州別リスト件数


参考文献
市川尚・鈴木克明(1996a)「小中高ホームページの調査研究」『日本教育工学会第12回大会講演論文集』pp.133-134
市川尚・鈴木克明(1996b) 「WWWホームページはどのように設計したらよいか?〜小中高ホームページの調査・分析からの提案〜」『IMETS(メディアと授業の改善)』120号、24 - 32
市川尚・鈴木克明(1996-97)「(連載)授業のためのホームページ案内(1)〜(5);(連載)授業に役立つホームページ(1)〜」『NEW教育とコンピュータ』1996年11月号〜連載中
越桐國雄(1997)「インターネットの教育利用の現状'97.1 -学校・学級のWebページから-」http:// www. osaka-kyouiku.ac.jp/educ/ enq97/ enq97.html
豊福晋平(1996)「学校ウエブをつくる」http:// KIDS. glocom.ac.jp/eduwoods/schoolweb /index.html
西森年寿(1995)「米国の初等中等教育におけるWWWの利用に関する調査 -各校のホームページを対象として-」『日本教育工学会第12回大会講演論文集』pp.133-134
山内祐平(1995)「インターネット活用調査アンケート集計結果」http://www.hus.osaka-u.ac. jp/esthome/ymauchi/100/~AL.html


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