WWWホームページはどのように設計したらよいか?
〜小中高ホームページの内容調査・分析の観点から

 ホームページの設計を考えたとき、レイアウトやHTMLなどは重要ではあるが、すべてのホームページの基本は、発信内容にあるのではないか?
 今回は、小中高のホームページの調査・分析を通して、どのような内容を発信したらよいのかを提案する。
キーワード: ネットワーク、WWW、ホームページ

1.はじめに

 インターネットブームにより、毎日新しいホームページが随所で公開されている。このような状況下で、教育機関のページも増加の一途をたどっている。
 いったい各ホームページではどのような情報を発信しているのか。ホームページをつくろうとしている人たちにとって、気になるところではないだろうか。
 また、いろいろなホームページをまわっていると、どうも見る人のことを考えていないようなページに出会うことがある。
 そこで、WWWホームページの設計について、発信内容の調査を行った。

2.調査目的

 ホームページを作る際、どんな内容を発信するかは頭を悩ませるところである。
 ここでは、小中高の各学校のホームページの調査・分析を通して、現状を明らかにし、学校で立ち上げるホームページの内容についてのチェックポイントを提案する。

3.調査方法

 各学校のホームページをひとつひとつ見てまわり、その内容をあらかじめ用意しておいたカテゴリ表(表1)と照らし合わせた。
(1)実施期間
1995年8月16日〜18日(3日間)
(2)調査準備
 ホームページの内容を分類するためにカテゴリ表(表1)を作成した。本調査に入る以前に約40のホームページを調べ、その内容をもとにカテゴリ分けを行なった。また、カテゴリに入らないその他の内容に ついては、調査途中で新たなカテゴリとして加えていった。
(3)調査手順
 図1の東北学院中学高等学校のホームページを例に、調査方法を具体的に述べる。
 「学校案内」にはリンクが張られていて、その先にはその内容である「校長挨拶」などの項目があらわれ、さらに「校長挨拶」を先に進むと、実際に校長先生による挨拶があり、そこでリンクはなくなっていた。これは、カテゴリー「学校紹介」の「挨拶」という項目に該当するので、このホームページの情報内容の1つとしてチェックした。
 「学校周辺案内」は工事中と示され、その先にはなにもリンクされていなかったので、「地域情報」の「学校周辺案内」に予定としてチェックした。
 また、下にある「東北インターネット協議会」のリンク先には、東北インターネット協議会というまったく別のサイトから公開されているホームページに行ってしまったので、そこから先へは進まず、「リンク」という項目の「関連ネット」としてチェックした。

4.調査結果

(1)調査件数
 各学校で公開されているホームページの所在を知るために、大阪教育大学新潟大学富山大学の3つのリストと、WAVE Searchの検索を利用した。
その結果ホームページは全部で98件となった。 内訳は、
 ・小学校…30件
 ・中学校…22件
 ・高校 …46件である。
 また、異なる教育課程にまたがる学校に関しては、例えば中学高等学校は高校扱いというように、一番上の課程に所属する学校とみなした。対象にした学校のうち100校プロジェクトは54校、アップルメディアキッズは13校あった。
(2)ホームページの内容
 調査の結果、最終的に表1のようなカテゴリ表ができあがった。表のなかの数値は各項目の件数である。各ページで公開されている大体の情報はこの項目のうちのどれかに入る(入らないものはその他)ためこのカテゴリ表が、現在小中高で公開されているページの発信内容の概要といえる。学校紹介の項目数がかなり多いが、それだけ発信されているということを示す。
 各項目をみると、「学校紹介」は7割を越え、特に「概要」は群を抜いていた。ついで「リンク」や「行事」「クラブ活動」が高い。「その他」が4割を越えていたのは、ホームページがかなりバラエティーに富んだものであるということを示し、この項目に入ったものは質の善し悪しにかかわらず、かなりユニークな発信といえる。
 また、教育課程別の傾向としては、高校は形式的な紹介が多いのに対し、小・中学校はあまり形式のないページ構成である。課程が上になるにしたがって、ページに個性的な部分が少なくなる傾向が見られた。
(3)責任者の提示の有無
 ページ責任者の所在が明らかになっているかを調べた。
全体小学中学高校
責任者あり(%)80778280
 8割のページが責任者の表示をしているが、それよりも注目すべきは2割近くが責任者名を表示していないことである。
(4)更新日
 ページの更新が行われているかを見るために、更新日の表示があったものに対して、調査日当日からの差をチェックした。
全体小学中学高校
表示あり(%)43533243
1ヵ月以内22231826
3ヵ月以内1010910
それ以前112057
 結果として、4割近くが更新日を表示していた。また、全体で22%は更新より1ヵ月以内であり、かなり頻繁に更新がおこなわれているか、新しいものであるということがわかった。
(5)言語
 各ページで使用している言語を調べた。
全体小学中学高校
日本語のみ(%)68737259
英語のみ98515
日本語と英語23202326
 一番多いのは、日本語のみだった。海外との情報交換のために、英語を用意している所も多かった。


5.ホームページの発信内容をどうするか

(1)内容分析から
 カテゴリ表が現在の学校のホームページの内容を網羅するものとなっている。もし、内容に何を載せたらいいのか迷ったときは、この中から選べばよい。また、他の学校とはちょっと違うページにしたければ、カテゴリ表にない項目を探せばよい。
 このカテゴリ表の中から発信件数の多い項目をホームページの基本型とすれば、それは、学校の概要を説明し、行事やクラブ活動について紹介し、他のサイトへのリンクをはるというものになる。
 それだけではあまりにも寂しいので、それにさらにいろいろな項目をプラスすることになるが、ホームページに個性を出したいなら、「活動」、「クラス」、「個人」「作品」の項目の中から選ぶといいようである。これらの項目は、生徒や教員がつくるレベルである。小学校なら児童にHTMLは難しいので、絵などの作品を載せ、中学高校レベルなら生徒にページを作らせるのが妥当である。どの課程でもクラスやグループといった集団でテーマを決めて発信するのがいいようである。
 また、責任者の提示は必ず忘れないようする。さらに、次にまた来る人のため、更新したら最新情報の項目や更新日も載せるとよい。所在地、学校案内図は学校への交通などは始めて訪問する人達にとって必要な情報である。特に、学校で行われるイベントの案内をのせるなら必要である。
(2)よりよい情報を発信するには?
 小中高のホームページの内容で、面白いと思ったページを、キーワードごとにいくつかリストした。
(a)自分たちが行っている実践
 項目:「活動」
 実践の紹介は、これからやろうと思っている人達にとって参考になるものである。
●環境教育の実践
 新居浜市立東中学校
(b)コミュニケーションを広げる
 項目:「活動」など
●全国発芽マップ
 宮崎大学教育学部附属小学校ほか
 WWWページ上で行われているプロジェクトで、画像、音声、動画を張り付けられる利点をいかしている。
さまざまな学校と共同して行い、発表する面白い企画である。
●こんなのいるかな?
 こんな生物は皆さんの近くにいますか?
 岡山芳泉高等学校
 このような提案はもしかしたら他校とのコミュニケーションのきっかけとなるかもしれない。
●世界の子供美術館
 赤羽台西小学校
 誰でも情報発信できるというインターネットの利点をいかし、さまざまな学校から送られてきた作品を公開している。
(c)子どもが学外にむけて情報発信をする
 項目:「クラス」「作品」「個人」など
 世界に向けて情報が簡単に発信できるのは素晴しいことである。子どもも学外へ発表するとなればはりきるのではないか。
●HTMLを小学生が書いた実践
 「地球を救おう」
 新潟大学附属新潟小学校
●学級通信をインターネットにのせる
 中川西小学校
●生徒(グループ)での発信
 城北中学校
(d)自分たちにしかできないオリジナル
 項目:「活動」「クラス」など
 サンプルホームページみたいなのがあって、5つぐらいほとんど内容が同じホームページを見つけた。これでは面白くない。
自分たちにしかできない発信をしよう
●ないものねだり
「山吹にあって他校にないもの」
 新宿山吹高等学校
 まさに、自分たちにしかできない情報発信のひとつである。
(e)ホームページを見に来る人への配慮
 項目:「アナウンス」など
 アクセスしに来る人のことを考えているページがある。誰のために発信するのかを明確にすればおのずとみえてくると思う。
●言語選択で「ひらがな」がある
 大薮小学校
●学校周辺案内
 山梨大学教育学部附属小学校
 宿泊施設までのせているところがよい
学校を訪問する人のための情報である

6.おわりに

 今回はホームページの内容分析からホームページの設計にアプローチをしてみた。
小中高のホームページの情報発信のなかではWWW上で各学校が取り組んでいるプロジェクトが一番印象に残った。特に、インターネットが、人と人との新しい出会いののきっかけをつくるという所に、学校のホームページの可能性があると思う。
 また、さまざまなページを見て行くうちにインターフェースの観点からも設計ポイントがかなり言えることがわかった。今後はこれに取り組んでいきたい。



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