教科別紹介第9回
 〜道徳と保健体育,その他の学校に関連する発信

 市川 尚(岩手県立大学ソフトウェア情報学部助手)

はじめに

 前回まで様々な教科を扱ってきましたが,教科という枠を使って紹介するのは,今回で一区切りとなります.今回は,これまで本連載で一度も紹介してこなかった道徳と保健体育のホームページを紹介します.また,特別活動や,その他の学校に関係する情報発信も合わせて紹介します.本稿を通して,こんな発信もあったんだなと新たな発見をして頂けたら幸いです.

道徳

 道徳のホームページは,授業のネタ(指導案)を公開しているホームページがあります.また関連するページとしては,福祉・ボランティア団体のホームページなど,その幅は広く,授業で使うネタをホームページから探してことができます(ホームページ自体を教材としても利用できます).
岩井先生による「My Moral Education」(http://www2.wind.ne.jp/iwai/;図1)は,道徳指導案集が複数公開されています.また,なりきり討論のテーマ例や授業記録が紹介されています(例えば動物園は必要かというテーマで,必要であるチームと必要でないチームに別れて討論するように,ある立場になりきって討論させるもの).
長崎道徳教育研究会による「楽徳ネット」(http://rakutoku.ndk-inc.co.jp/)では,道徳の教材をインターネットで検索することができます.検索は,礼儀,思いやり・親切..といった詳細な項目に分かれており,ほしいものをすぐに見つけることができます.検索された教材は,その概要や絵・写真,指導案等を見ることや,登録者に許可をもらえば授業で利用することもできます.
暁図書のページ(http://www.akatsuki.co.jp/)にある「道徳ホットライン」では, 道徳教育のあり方や,授業の実践記録などが公開されています.またこのページには,保健体育に関連する,スポーツのルール改正の情報なども公開されています.

保健体育

 保健体育の発信は,授業に関する(実践例などの)発信はほとんどないのが現状です.体育の側面で言えば,あらゆるスポーツのホームページが関連しますから,活用できそうな資料はインターネット上に多く存在しています.実技面としては,例えば,郵便局の簡易保険のページにある「ラジオ体操ガイド」(http://www.kampo.mpt.go.jp/event/radio/guide.html)のページが,そのやり方の画像や,ラジオ体操のムービーを載せているように,どうやったらうまくできるかを教えるページは存在はしているものの,非常に数が少ないです。しかし,実技の面だけではなく,そのスポーツの歴史的展開・現状・ルールなど,スポーツの背景にある情報を学ぶことには,現状でも十分(すぎるくらい)にできます.例えば,日本オリンピック協会のホームページ(http://www.joc.or.jp/)では,最新のオリンピックの情報から,これまでのオリンピックの歴史を見ることもできます.授業外への展開(広がり)として,体育の授業で興味を持ったスポーツを自分で実際にやってみたいときに,団体やイベント情報などをインターネットで探すことは可能です.
 保健の側面では,健康に関することや,応急処置の方法など学校とは別のところから多くの情報が公開されています.学校からの保健に関する情報としては,保健室からの発信があります.高校の養護教諭であるKEIKO先生 による「みんなの保健室」(http://www01.u-page.so-net.ne.jp/jb3/k-selena/;図2)では,健康チェックのコーナーがあり,肥満度をはかるページ(数字を打ち込むと判定してくれる)や,その他の健康チェックができるページへのリンクがあります.さらに病気・けが・薬やストレスに関するリンクも提供されています.また,「ハートにバンドエイド」(こころとからだの相談コーナ)では,送られてきた悩み・相談に丁寧に答えています.そこでは性教育に関連する部分も取り扱っています.こうしたインターネットだから普段言えないことを相談できるということは,匿名性の大きなメリットではないかと思います(匿名の相談に真剣に答える人がいてくれればの話ですが).さらに,養護教諭は1校に一人しかいませんから,保健室のホームページをきっかけとして養護教諭のネットワークが広がることもあわせて期待できると思います.

特別活動など

 学校の生徒会活動や委員会活動,クラブ活動などのページもありますが,本連載で紹介してきたので,ここではそれ以外のホームページを紹介します.
■進路について■
 進路指導は,主に情報収集のためにホームページを利用しており,主にリンク集を作成・活用しているようです.進学を希望する人たちにとって,もし自分の行きたい学校のホームページがあれば,その学校の状況をいろいろ知ることができ,選択材料のひとつとなることでしょう.ホームページを公開している学校は,このような利用を見越して,各学校の特色など,入学者を対象とした情報公開をしていくべきです.私立学校は,入学者集めのための宣伝としてのホームページの使い方もできます.進学の選択に関連するページとしては,例えば,
株式会社インサイトインターナショナル による「Knowleage Station」(http://www.degi.co.jp/)は,大学,公立高校などの簡単なデータとホームページがあれば,そこへのリンクが提供されています.
神奈川県教育庁による「はいすくーる・わんだーらんど」(http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kokokyoiku/syokai/top/wonder.htm;図3)では,すべての県立高校が,特色を紹介するページを作成し提供しており,高校の連絡先や規模・交通案内図,そして特色(学校生活など)の紹介があります.同庁によるページでは,他にも「イベント通信」というのがあり,学校説明会や,体育祭,文化祭といったイベントの情報も公開されています.進路指導にだけでなく,高校のことを知りたいという人々全般に有用なページだと思います.
 また,将来の職業を考える上でもホームページは役立ちます.様々な企業からホームページが公開されていますので,子どもたちはより具体的な情報を得ることができるでしょう.興味ある会社のホームページを見たり,就職案内(例えば大学生用ですが,RECRUIT NAVI;http://job.rnet.or.jp/RN/)のホームページなどを利用してもよいでしょう.進路については,調べるだけでなく,その調べた結果として考えたこと(自分はどうしてその進路を希望するのかなど)をホームページで発信し,お互いの悩みや考えを共有しあえば,正確な進路選択への手助けとなるかもしれません。
■行事:修学旅行,文化祭など■
 学校のホームページでは,よく自校で行われた行事(イベント)の情報を発信しています.その中で特に力が注がれているのは,修学旅行の情報と言えるでしょう.事前調査などで役割分担をして,旅行に行く地域の様々なことをホームページで調べる(まとめてホームページに発信)ことや,現地から日々の活動をその日のうちに公開したり,事後に修学旅行で学んだことや思い出の記録をホームページに発信する場合もあります.各学校にある地域情報の発信は,事前調査の部分にも役立つことでしょう.岩田節男先生による「修学旅行にみんなで行こう」(http://www2b.biglobe.ne.jp/~iwano/annai.htm;図4)では,児童の興味の喚起や保護者への案内を意図した修学旅行案内ページを作成する実践が行われており,実際に作成したページや,実践事例を紹介した原稿,保護者の感想などが載っています.  行事の2つ目としては,文化祭があげられます.これは,子どもたちが中心となって作成できるサイトのひとつです.文化祭の日程や展示内容,当日の様子などがよく公開されています.以前紹介した,岩手県立岩泉高等学校田野畑校(http://www.michinoku.ne.jp/~tanohata/)は世界高等学校総合文化祭という,各校の文化を探るリンクガイド(インターネット上の文化祭)が提供されていますが,そこでも各校の文化祭へのリンクがあります.

その他の学校に関連する発信

 学校にある施設や組織で,仕事の裏側を覗くことができるページがあります.なお,保健室についてはすでに保健体育のところで紹介しています.
金井智恵さんによる「こちら小学校の給食室です!」(http://www.nikonet.or.jp/~kana55go/;図5)は,毎日学校でお世話になりながら,実はブラックボックス化している給食のことがわかるページです.毎日の献立と,その写真や栄養価をはじめ,一口メモや一食当たりの単価まで紹介しています.過去の給食の献立も記録しています.給食室の写真館として,調理の様子を見ることができます.給食のレシピもあり,家庭科などの授業に使えそうなページです.日本と世界の給食の歴史や,給食のQ&Aでは寄せられた質問に答えています. ここは札幌の小学校ですが,自分たちの学校との給食の献立を比較して,地域の食べ物の違いを見てみるという実践に活用できるかもしれません.

自薦のホームページ(参加呼びかけ)

荒木敏彦先生(金沢大学教育学部附属養護学校)による「インターペディア」(http://www.kanazawa-u-sh.ed.jp/iep/index/index.htm;図6)
 ここでは,養護学校の子どもたちと全国の小・中・養護学校の子どもたちとの共同活動の場としてインターネット百科事典「インターペディア」という企画を行っています。簡単に言えば,子どもたちみんなで百科事典をホームページ上で作成していこうというものです.子どもたちは,各項目(言葉)の解説を作成することになります.もちろん,まじめなものだけでなく,ユーモアがあるものや,なぞなぞなど,気軽に作れるものでもいいようです.グループごとに違う言葉について,インターネットを活用して調べてからまとめるといった実践の流れが考えられます.また,発信後にお互いの解説に意見を言うなどの障害児と健常児との共同作業によって,障害児が社会と接することができるのはもちろんのこと,健常児によっても視野を広げるのによい実践のひとつではないかと思います.興味を持たれた方は,是非参加してもらえればと思います.子どもの視点にたった楽しい百科事典ができあがることを期待します.

自薦・他薦のホームページ募集中!ichikawa@soft.iwate-pu.ac.jpまで。
ホームページ紹介記事バックナンバーhttp://www.iwate-pu.ac.jp/home/ichikawa/new/

図1 岩井先生による「My Moral Education」
図2 KEIKO先生 による「みんなの保健室」
図3 神奈川県教育庁による「はいすくーる・わんだーらんど」
図4 岩田節男先生による「修学旅行にみんなで行こう」
図5 金井智恵さんによる「こちら小学校の給食室です!
図6 荒木敏彦先生による「インターペディア」


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