校種別ホームページ紹介
最終回
〜特殊教育諸学校・小規模校・日本人学校のホームページ
市川 尚(岩手県立大学ソフトウエア情報学部)
1、はじめに
これまで、校種別編として小学校、中学校、高等学校をとりあげてきました。今回は、校種別の最後として、校種別には分けずに、その他特色ある学校ホームページを紹介します。具体的には、ホームページが数多く公開されていながら、前回までの連載でとりあげる機会の少なかった特殊教育の学校、子どもたちの人数が少ない小規模校(僻地校)、海外にありながら日本人の子供たちが通う日本人学校をとりあげます。例えば、「インターネットと教育」(http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/educ/)には、特殊教育に関わるホームページが3月14日現在で114件もリストされていました。また、僻地校や日本人学校のホームページも多数存在します。それぞれが自分たちの立場から、充実したホームページを公開しています。こういったいわば特殊な環境から公開されているページだからこそ、ホームページに大切な情報やその利点、問題点を考えさせてくれます。紹介するものの中には、これまでの連載で紹介した学校もありますが、ホームページ活用や作成をするということを念頭におきながら、読み進めていってほしいと思います。
2、特色ある3つの学校ホームページ
●滋賀県立盲学校ホームページ(http://shigapref-sb.ed.jp/;図1)
このホームページには、視覚障害に関する情報がたくさんあります。「盲・弱視用読書補装器具の紹介 」や「視覚障害者用パソコン関連機器の紹介」では、盲人用読書機やパソコン、点字プリンターをはじめ、視覚障害を持つ方々がどのような器具・機器を使っているのかがわかります。「視覚障害関連フリーソフト 」では、関連ソフトをダウンロードできるようにリンクがはられていますし、「本校のおすすめリンク」では、視覚障害関係サイトへのリンクがはられています。自分の学校の特色を全面に押し出したページ構成となっており、この学校にしかできない発信をしていると言えるでしょう。「点字の勉強」には、点字を勉強する教材があります。例えば、最初は「50音(基本中の基本)」で、点字で50音をどのように表示するのかが解説されています。われわれがよく目にする点字の仕組みを知りたいと思う人も多いことでしょう。ここを読めば、点字に関してだいたいのことがわかります。点字ボランティアの募集も行っているようです。教材を載せることは、知りたいと思う読者にとって大変ありがたいものとなります。読者のこういった知りたいという気持ちは大切にしたいものです。学校のホームページに教材を載せているところは、まだまだ少ないのが現状ですが、これまで学内だけに留まっていた教材も、ウェブ上に発信すれば、機種に依存することなく皆にやってもらうことができます。今後こういったウェブ上の教材も増えてくることでしょうし、そうなってほしいと思います。
また、「先生の紹介」として、学校の名物先生の紹介があります。その中には、例えば「マイナス志向からプラス志向へ」と題した体験談等や、先生のプロフィールがあります。一般に学校のホームページには、特にページ管理者を中心として、先生方のホームページをよく見かけることができます(先生が個人的なページの中に、学校のホームページを公開している場合もよくありますが)。そのなかで、自分の研究を紹介しているもの、楽しい自己紹介をしているもの、自分だけでなく家族の紹介をしているものなど様々です。まず生徒たちに情報発信させる前に、練習がてら自分のスペースを確保して、自ら発信していくというのも面白いのではないでしょうか。
●佐賀県厳木小学校平之分校ホームページ(http://www.saga-ed.go.jp/school/hirano-el/hirano.html;図2)
このホームページは、以前「国語」のぺージとして紹介しましたが、今回は小規模(僻地)校のホームページとして取り上げます。ホームページの最初のタイトルには「今年も全校生徒が6人しかいない」と書いてある通り、非常に小さな学校です。しかし、そんなことをみじんも感じさせないくらい充実したホームページとなっています。
この学校では、「へき地・小規模校の交流のページ」があり、「へき地・小規模校のリスト 」や会員制メーリングリストの紹介があります。地理的環境に関わりなく情報を早く送ることのできるインターネットを利用して、 へき地・小規模校の交流を盛んにしようというねらいのもとに作られています。ホームページのも、僻地校ならではの実践(考え方)がいろいろ紹介されており、僻地校ならではの悩みやインターネットがどれだけ効果的かを知ることができます。
例えば、「国語」の実践を見ると、インターネットを利用して僻地校の環境を向上しようという国語科の学習の試みが紹介されています。学級に1名しかいない子どもが、自分の考えを発表し、他の学校の子供たちと情報交換をする場としてインターネットを利用しています。ホームページはそこで実際に活用され、またその授業に関するほとんどのものを参照することができます。例えば、授業で実際に使用したワークシートや、授業の指導案などが公開され、どのように授業が展開していったのかを知ることができますし、他校の子どもたちから送られてきた意見を見ることもできます。インターネットは社会、空間を越えていくものですから、学校のおかれた環境に関係なく、他校とやりとりすることができます。子供たちにとって世界を広げるための道具となることでしょう。
「ひろば」や「図工の広場」では、子供たちの作品が紹介されています。ここは、作品を展示する場としてホームページが使われております。普段は授業のなかだけで完結してしまう作品が、僻地校ではなおさら人目には触れることが少ないことでしょう。クラスの中でお互いに作品を参照しあうといっても、人数には限りがあります。そこで、ホームページに公開すれば、外部の人たちにも見てもらえるというわけです。作品を公開することで、意欲面へ効果があるでしょうし、他からの感想をうまく得られれば、それによってさらに学習が広がりを見せていくこともあることでしょう。授業の最終目標に公開をもってくることは、ひとつの手段です。しかし、最近はホームページの絶対数が多く、何もしないでも子供や一般の人たちが見に来てくれるかというとそんなことはありません。ましてや感想を頂けるのはほんの一握りでしょう。子どもたちの作品をリストしても、全員に感想もらえるとは限りません。人数が多ければ多いほどその可能性は皆無になります。あらかじめ、教師側のコーディネート(事前に宣伝しておく、交流相手を見つけておく等)が鍵になってきます。例えば、他学校の同じくらいの人数のいるクラスのひとりひとりに、各作品を分担して講評してもらう鑑賞会を開くなどが考えられます。公開したら、やはり感想(反応)を頂けることが、次への原動力となっていきんすから、そういった意味でもインターネットの仲間をつくっていくことが、活用していく上で重要です。
●ジャカルタ日本人学校ホームページ(http://www.cbn.net.id/commerce/jjs/;図3)
海外という土地にありながら、日本語を使って発信している日本人学校のホームページです。海外のページは英語のために読みにくいですが、こちらは日本語ですから手軽に海外のことを知ることができるページです。外国に住んでいる子供たちの風景を見ることは、国際理解教育等につながってくることでしょう。海外と日本の架け橋とも言えるホームページです。
「インドネシアいろいろ」では、日本で言うところの地域(県や市)の紹介が、海外にある学校だけに、まずは国の紹介が来ています。例えば、地理、民族などの紹介でも、日本との文化の違いに驚くこともしばしばです。自分の地域の特色を紹介することは、他地域の人々にとっては有用な情報となることでしょう。様々な環境に学校があるわけですから、そのような情報をお互いに発信しない手はないと思います。また、子どもたちが製作にたずさわっているようで、その視点から書かれた非常に親しみのあるホームページとなっています。「楽しいインドネシア語講座」では、言葉に関する問題が10問出題されています。「ジャカルタの紹介」は、日本からジャカルタへ出発するところからスタートし、空港や博物館などジャカルタの紹介があり、楽しく学ぶことができます。
「本校に転入予定のお友達へ」は、転入する人たちのために、入学・退学の手続きの紹介もあり、そのやり方がよくわかります。このように学校の紹介をすることは、そこに入ろうとしてくる子たちにとって、貴重な情報源であると同時に、不安をとりさってくれる面があるということが伺えます。このホームページにはさらに、転校生の作文なども紹介されています。
「学年のページ」は、各学年のリストがでてきて、それぞれのページにリンクをはっています。学年のページの中にはクラスに分かれるものもありますが、その内容としては、日本人学校の生活を紹介したり、日記、活動の様子、調べたものなどが、子供たちの視点で書かれています。たとえば、3年生のページでは、学習の様子も紹介しています。「理科」では、ひと味ちがう理科として、ひまわりの種をまいて、芽が出るのも早いし、育つのもすごく早いそうで、日本にある成長記録とは、またひと味ちがったものを見ることもできそうです。
参考として、東京工業大学教育工学開発センター赤堀研究室による「日本人学校プロジェクト」のページ(http://akahori-www.cradle.titech.ac.jp/ngp/)では、日本人学校のリストをはじめとして、様々な情報が公開されています。
3、自薦・他薦のホームページ
●大阪府立北淀高等学校ホームページ(http://www.edu-c.pref.osaka.jp/~f10194m/frame.htm;図4)
このホームページには、「文化祭企画ネタ集」というのがあり、高校の文化祭の実例集があります。その中は「展示部門」と「舞台部門」に分かれ、例えば展示部門では、モザイクアート「僕たちの肖像」として、その材料、大きさ、色数、費用、特長、さらには感想文などが紹介されています。総合するとかなりの数のネタが紹介されており、ネタに困っている人たちにっとっては貴重な情報となるでしょう。文化祭前にまずはここをクラスでのぞいてみるのも面白いのではないかと思います。「思い出写真館」は、これまでの卒業生たちの写真を見ることができます。現在、34期生まで載っているようですが、最初の時は、カラーではなかったことから、時代の流れを感じます。ホームページを訪れる人たちには、卒業生がなつかしがって見にくる場合も多いですから、このような試みもたいへん面白いと思います。アイデアいっぱいのホームページですので、ぜひ一度訪れてみて下さい。
自薦・他薦のホームページ募集中!ichikawa@edutech.tohoku-gakuin.ac.jpまで。
ホームページ紹介記事バックナンバーhttp://www.edutech.tohoku-gakuin.ac.jp/
(コラム) 有害サイトと子どもたち(2)
前回はフィルタリングについて紹介しましたが、今回はその続編として、実際に実現しているソフトなどを紹介してみたいと思います。
現在、フィルタリングを最も手軽に試してみることができるソフトは、インターネットエクスプローラー(http://www.microsoft.com/ie_intl/ja/)です。バージョン3.0以降で、有害サイトに対してフィルタリングをかける機能が付属しています。具体的には、「初期設定」より「規制」を選ぶと、設定画面がでてきます。そこから暴力のレベルなどどこまで表示するかを決めて、「有効」にするだけで終了です。後は、例えば有害サイトに行くと「このページを表示するアクセス権がありません」という表示が出てきます。また、パスワードを聞いてきて、入力すると表示されるように設定することもできます。また、この間紹介した電子ネットワーク協議会のホームページ(http://www.nmda.or.jp/enc/enc/rating/)には、フィルタリングソフトの評価版をダウンロードできます。こちらはブラウザと一緒に起動しておいて、ブラウザの行き先を常に監視するというタイプのものです。また、同ホームページには、「日本語対応市販フィルタリングソフトの一覧」で、市販ソフトのリストを見ることができます。例えばサイバーパトロール(http://www.cyberpatrol.solution.ne.jp/)などが有名です。しかし、これらの方式は有害サイトのリストに該当すれば表示しないというものですから、インターネットのようなサイトが消えては現れという繰り返している日進月歩の世界では、やはりすべてをブロックするという保証はありません。
他にも、例えば、YAHOO!キッズ(http://kids.yahoo.co.jp/)のような子どものためのサーチエンジンやリストなどが多数ありますが、そこから飛んでいったサイトから先は保証の限りではなく、そこから検索サーバ等に行って有害サイトへアクセスされてしまうなどは多々考えられます。また、ブラウザにはもともと検索サーバへのリンクボタンが提供されています。完全に防ぐには、極端な例として、検索サーバをすべてフィルタリングで見えなくしてしまい(プロキシーでカットするなど)、安全なサイトのみをリンクだけをたどって進んで行くなども考えられます。
最近は情報が氾濫し、教育にとってあまり役にたたないサイトが多いことからも、優良サイトのみを検索、サーフィンできる空間をつくる(子どもたちにセーフティエリア)というのにも魅力を感じます。最近はテレビ業界でもVチップなどが話題となっていますし、今後ともこの手の議論は活発化していくことでしょう。
図1 滋賀県立盲学校ホームページ
図2 佐賀県厳木小学校平之分校ホームページ
図3 ジャカルタ日本人学校ホームページ
図4 大阪府立北淀高等学校ホームページ
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