校種別ホームページ紹介

第2回
〜小学校のホームページ


市川 尚(岩手県立大学ソフトウエア情報学部)

1、はじめに

 前回から校種別紹介がスタートし、第1回目は中学校のホームページを取り上げました。今回は小学校のホームページです。小学校のホームページは、「インターネットと教育」(http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/educ/)に2月14日現在で926件リストされていました(別の校種にまたがる学校、例えば〜小中学校等も含んだ値)。昨年の今ごろは、小中高あわせて1000件を越えたと驚いていましたが、すでに校種ごとに届きそうな勢いです。数ある小学校のホームページのなかから、特色あるものを選んで紹介しています。これまでの連載の中で紹介した学校もありますが、その発信内容を知っている方でも、ホームページ活用や作成をするということを念頭におきながら、読み進めていってほしいと思います。

2、小学校の特色あるホームページ

●参考になる部分が豊富な、滋賀県平野小学校ホームページ(http://www.hirano-es.otsu.shiga.jp/;図1)
 このホームページは、非常に膨大で良質な情報が多数発信されています。ここを紹介するときにも、どの部分を紹介すればいいのか迷ってしまうほどです。
 「大津の空」では、小学校の屋上から見た空の風景をライブで見ることができます。この学校を中心として数校が、新100校プロジェクト重点企画の「全国ライブカメラMAP」(定点観測データの共同利用研究)に取り組んでいます。 これは、全国各地の天気の様子をライブカメラを使用して提供するもので、例えば気象衛星「ひまわり」の雲の画像(当然これもインターネットで入手)などと併せて、理科の気象の学習に役立つ情報が得られます。実際にそのMAPを見ると、日本地図に東北から九州まで9個所にマークがあり、それぞれの学校が設置しているライブカメラの画像を見ることができます。現時点での各地域の様子(生の情報)を知ることができるのは、まさにインターネットならではと言えるでしょう。これらは自動的に更新され続けるので一度設置してしまえば、トラブルがないかぎり気を配る必要がないところも提供者側にとって魅力の一つです(ただし、準備にはかなりの苦労と若干の費用を必要としますが…)。また、「ひよこライブ」といって、飼っているひよこの様子がライブで見られるというのが、とてもユニークです。こういった技術の進歩のおかげで、これまでできなかったリアルな情報を生かした新しい授業の展開ができるようになってきたのではないでしょうか。
 「環境学習」では、5年生の環境学習の指導案をはじめ、クイズ(温暖化等の問題が出題されます)、会議室、リンクなどがあります。また、「ケナフ」では、100校プロジェクトの「全国発芽マップ」プロジェクトに参加している記録を載せています。このプロジェクトは日本各地の学校で一斉に同じ種を同じ日に植え、その成長の記録をホームページ上に載せていくというもので、参加各校からその観察記録が公開されています。他の地域と比較しあうことで、自分の周りだけでなく異なる(広い)視点で物事を見る目を養い、かつ自分の周りのことをより深く知ることができます。この学校ではただ成長の記録を載せるだけでなく、そこからいろいろな広がりをみせており、ケナフに集う虫たちのCGや、「ケナフから紙を作ろう」ではその作り方等も載せています。実際にケナフを収穫し、紙にすいてはがきを作り、参加校同士で年賀状を交換ています。参加したらその役目を果たすだけでなく、そこからいかに広がりを持たせていくのかという視点を持って取り組むことは重要です。これらの共同作業等のプロジェクトは、100校等でやっているものばかりでなくたくさんありますので、探して参加してみるのもよいのではないでしょうか。同じ目標に向かって進む共同作業を行えば交流相手を見つける・仲よくなるチャンスが増します。
 「社会科マップ」は、「全国産物マップ」、「伝統工業マップ」、「歴史マップ」の各テーマごとにみんなで情報を持ち寄って共有していこうという試みです。これらのマップは各都道府県ごとに関連するページのリンクリストになっています。リンクリストと言っても、この例のように狭いテーマに沿って集めることで、より授業に活用しやすくなります。インターネットでは情報がばらばらに公開されています。お互いが得意な分野を担当し、それをまとめて拠点となるようなページを用意していくというのも大切な作業です。今後情報がますます多くなってくるにつれ、こういったまとめていく作業の重要性が問われてくることでしょう。  「4年国語物語教材ごんぎつねの遠隔共同学習」では、その学習計画から、デジタル教科書、教師・児童に分かれた書き込みの部屋や、それぞれのコメントに対して意見交流を持つ部屋などがあります。ホームページ上で書き込んだものがアップされる掲示板的なものを用意し、ウェブ上でコラボレーションを実現しています。各部屋には多くのコメントが入っており、活発な意見交換が行われています。普段電子メール(メーリングリスト)でやりとりしているよりも、誰にでも見てもらえることができ、どんどん記録として残っていくことが、メリットとして挙げられるでしょう。同様に、「国際調査隊」では、「世界のものの値段」等の調べ学習を行い、「会議室」では、世界各地の日本人学校の子どもたちが投稿しています。調査報告書のページでは、調べた結果がテーマ別に表になっています。
 また、「課題研究のページ」では、子どもたちが一年間を通して取り組んだ課題を最終的にページにまとめて発信しています。「学級のページ」では、各クラスがホームページをもち、学級の紹介や、自分たちの作品などを公開しています。小学校では、特にこのクラス単位のホームページが多いところも特徴のひとつです。「全国おたずねメール」は、全国のいろんな人に電子メールで質問するコーナーで、「メールボランティアの一覧」には、それぞれの方々の所属や、得意分野等が紹介されており、これを見ながら、小・中学生たちは、質問のメール等を送っているようです。「琵琶湖の魚 水鳥」や「プランクトン」などの画像も提供されています。

●地域の特色を生かした発信:北海道幌南小学校ホームページ(http://www.kounan-es.chuo.sapporo.jp/;図2)  このホームページの「北国情報コーナー」では、除雪のしかた、冬のあそび、北海道と沖縄の家の比較など、雪国の生活の様子が紹介されています。このように、地域ならではの情報を公開することは、他地域の人々にとって有用な情報となることでしょう。他校から協力の依頼があって、共同学習に発展していくかもしれません。よく、社会科4年生で「雪国のくらし」を学ぶ際に、こういったサイトを利用して調べ学習を行っている例をみかけます)。調べ学習を行う際は、ホームページを使ってただ収集しただけ、あるいはその結果を公開してみただけでおしまいにならないように、調べた結果を検討するための方向づけが重要です。また、「北国についての質問にお答えします!」として、送られてくる質問に答えてくれるコーナーもあります。東京などの学校からいくつか質問があったようで、その質問と答えを見ることができます。例えば、1週間に雪は何回くらいふりますか?の問いに、データを出して答えています。質問を受けることで学びの必然性が生まれるわけです。また、テレビ局等から公開されているライブカメラへのリンクもあり、現在の様子もわかります。「北の花だより」は、札幌で咲く草花や木々の変化を紹介したり、「北海道弁教室」として方言を紹介したりしています。
 「こうなんワンダーランド」では、各教科ごとに分かれた大きなリンク集です。日本最大の小学生用教科・領域別リンク集と言っているだけに、登録数は約800件あります。また、各リンクはただリストされているだけでなく、ちょっとした紹介文が付いており、おすすめは赤い文字で書かれています。これは、使う側にとってはありがたいことです。ただリストされているだけでは、どこをまず選択すればよいのかがわかりにくい時があるからです。学年別・領域別にも分かれており、大変便利です(例えば社会科は、6年生、日本の歴史というように)。校内の人たちにとってブラウザを起動すると一番最初に出てくるページとして、情報の大海原であるインターネット内をうまくナビゲートするための、インターネット入り口としてのレイアウトも大切です。
 リンク集には大人用デスクトップ「Desktop Kounan 」というシンプルなスタイルのバージョンも用意されています。特に小学校などは、小学生用のページ(ひらがなを多用する)等など、子どもたちのために特別なページを作っているところも見かけます。小学校であれば、当然小学生中心に見てもらうわけですから、これくらいの配慮は必要です。ただ、全体的に小学生用のコンテンツと言うのはまだまだ少ないのが現状であり、小学校がまず中心になって、やさしいコンテンツを発信していくようにすれば少しづつでも増えていきます。可能なら、大人用と子供用の2種類のバージョンを用意するといいでしょう。
 「地球を守り隊」では、地球を守り隊が生まれるまでとして、社会科のごみ処理の学習をきっかけにしたことを紹介し、リサイクル活動の様子や、海外との授業の様子などが紹介されています。

 これらの他、とりあげたいホームページはたくさんあります。
 特に、神奈川県本町小学校(http://www.honcho-es.naka.yokohama.jp/)は、紙面が許せば絶対紹介したいホームページです。はやくから充実したコンテンツを公開していたところですが、個人情報等への配慮から最近は地域を含めたイントラネット的活用に力を入れているようで、関係者以外は見られないコンテンツも結構あります。地域に向けて開かれた学校、その拠点としてのホームページづくりには学ぶところも多いです。また、東京都神応小学校(http://www.shinno-es.minato.tokyo.jp/)も見逃せません。今回とりあげた北国(雪)の情報なら、新潟県中郷小学校(http://www.nakagou-es.nakagou.niigata.jp/)は、積雪量を測定したデータを公開しています。平和のとりくみとしては広島県長束小学校(http://www.csi.ad.jp/school/project/nagatuka/)、PTAからの発信としては山形県上山市立南小学校(http://www3.macbase.or.jp/~km-syo1/)があります。小学校レベルでは、PTAから公開されているものも数件見かけることができます。

3、その他のホームページ紹介コーナー

 今回も自薦・他薦のホームページを紹介します。
●前田之人先生による「教育の広場」(http://www.jomon.or.jp/~ynmmaeda/hiroba/;図3)、「十和田中学校2年3組のホームページ」(http://www2.justnet.ne.jp/~ynmmaeda/towadajhs1.html)
 これらのホームページは、前田先生が個人で公開されているホームページです。
 「教育の広場」の「意見交換の広場」では、数々の談話室が用意され、先生方の活発なやりとりを見ることができます。先生方が草の根的にがんばっている姿が伺えます。「インターネット」を利用した教育実践のアンケートとその途中経過報告もあります。「十和田中学校2年3組のホームページ」では、生徒紹介や掲示板を使用してのフリートーキングなどが行われています。また、メールボランティア募集中ということですので、誰か興味(やる気)のある方は、登録されてみてはいかがでしょうか。
 今後も応募があったら、そのつど毎回1件ずつでも紹介していけたらと思っています。自薦・他薦は問いませんので、ここで紹介してほしいホームページがありましたら、ぜひ教えてください。これまで連載した記事のバックナンバーを置いているホームページ(http://www.edutech.tohoku-gakuin.ac.jp/new/)内の入力フォームかまたは、電子メール(ichikawa@edutech.tohoku-gakuin.ac.jp)をお使い下さい。

 次回は、校種別の第3回ということで、高校のホームページを取り上げます。


(コラム) 校種別の特徴(2)発信内容

 前回はファイル数と容量でしたが、今回は発信内容です。なおここでは、筆者らが96年にホームページ調査を実施した(市川・鈴木、1996)ときのデータをもとに話します。97年の4月号には、少しだけ校種別の傾向を紹介しましたが、これを簡単に紹介しておきますと、高校が広報的な学校レベルのホームページの公開、小学校は授業のとりくみなど授業レベルの公開をより多くしていることが伺え、中学校はその中間程度となっていたということです。詳しくはバックナンバーをご覧ください。  さらに1歩踏み込んで、発信内容をカテゴリ分けしたものから特徴を見てみるます。このカテゴリは以前作成講座(97年8月号)で一部紹介したましたが、表1のようなものです。この第2カテゴリの件数の多い順ベスト5をホームページの一般型としました。それを表2に示します。全体の一般型に入るカテゴリは,最低限必要な情報とみなすことができます。多くのホームページが載せているということは、紹介しやすい、役に立つなど、何らかの利点があるとも考えられるからです。校種別に見ると、小学校は「とりくみ」が5割と最も多く、子どもたちの活動紹介に重点がおかれているという特徴がありました。中学校では「行事」が最も多いが、次に「地元」の情報や「とりくみ」の紹介が上位にきていました。一方で,高校では「クラブ」が最も多い一方で、「組織」や「沿革」などが上位にきており、学校紹介に重点が置かれていました。これらは一概に言えるわけではありませんが、なんとなくこのような傾向があるということをわかっていただければと思います。

参考: 市川尚・鈴木克明(1996)「小中高ホームページの調査研究」『日本教育工学会第12回大会講演論文集』 pp.133-134

図1 滋賀県平野小学校ホームページ
図2 北海道幌南小学校ホームページ
図3 前田之人先生による「教育の広場」

表1 発信内容を表わすカテゴリ
表2 小中高ホームページの一般型


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