校種別ホームページ紹介

第1回
〜中学校のホームページ


市川 尚(岩手県立大学ソフトウエア情報学部)

1、はじめに

 今回は4月号ということで、新年度のスタートとなります。それに合わせてこれまで連載してきたホームページ紹介も少し趣向を変えていきます。今回からは、教科別ではなく、校種別に毎回3つ程度のホームページをメインとして取り上げ紹介していきます。第1回は中学校のホームページ紹介です。中学校のホームページは、「インターネットと教育」(http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/educ/)に1月24日現在で790件リストされていました(別の校種にまたがる学校、例えば中学高等学校等も含んだ値)。どの校種にも言えることですが、ずいぶんとホームページが増加したと実感しています。ホームページは公開してからかなり時期のたったものも多くなってきました。公開しただけで満足の立ち上げ期から、すでにホームページを活用して何をするのかという応用の時期に入っています。これまで蓄積された活用のヒントを各ホームページからたくさん見つけることができます。発信内容だけでなく、みなさんがホームページ活用や作成をする上でのヒントとなるような事をおりまぜながら紹介していくつもりです。

2、中学校の特色あるホームページ

●子どもの発信が「光」っている、山口教育大学附属光中学校ホームページ(http://www.hikari-jhs.yamaguchi-u.ac.jp/;図2)
 このホームページは、子どもたち中心のページづくりになっています。ほとんどのホームページは、先生が子どもたちの活動を紹介したりと、先生主導のもとに行われていることがわかるのですが、このホームページは違います。先生がほとんど後ろに隠れて見えない状態になっています(そのぶん苦労は並大抵ではないと思います)。ホームページ作成は、サイエンス部が中心となって作っているようです。ここはサイエンス部だけに、理科の情報が非常に充実したページです。そして、とくに子どもたちからの発信がほとんどを占めています。まず、学校紹介から子どもたちが作っています。さらには、「恐竜について」「バリ島訪問記おしゃべり編 」といったものや、図鑑、ペットボトルロケットの作り方なども載っています。そのひとつひとつがかなり充実した内容となっています。驚いたことにホームページの作り方の解説も生徒が作っています。また、「大いなる竜の城〜天空城〜」は、全く学校に関係のないゲームの話題をとりあげていたり、「362のホームページ」等では完全に個人のページとして自由にいろいろな情報を発信しているページがあるという点も、あまり他の学校のホームページでは見られません。このようなページは、大人よりも、子どもたちが見て面白いと思うものでしょうし、よい刺激になるかもしれません。発信側にとっても大変はりあいのあるものになっていることでしょう。人にわかるように発信するために、自分でかなり勉強しなければならないのでしょうし、情報に責任をもったり、作成の大変さから他人の作品を尊重する(著作権等の考え)などが自然と身に付いていくかもしれません。逆に、自由にさせるには、あらかじめネチケット等の教育が必要となってきます。はじめは、学内のみで公開し、時期に学外へと段階を踏ませることも良いかもしれません。

●インターネットを活用した様々な実践を見れる、和歌山大学教育学部附属中学校ホームページ(http://www.ajhs.wakayama-u.ac.jp/;図2)
 このホームページには、インターネットを活用したさまざまな授業実践の様子が紹介されています。特に数学科の「マッシュルーム」には、数学のWWWサイトを利用した興味深い授業が紹介されています。NEKOPAPA先生の「中学生にも解けるぞ! 特選大学入試問題集」(http://www2.gol.com/users/nekopapa/sugaku/JH/)への挑戦の記録が載っており、問題を解いている姿や実際に各問題に対して生徒が考えたものをページ上に載せることで、その考え方へのコメントを 電子メールでもらっています。外部のインターネットリソースを活用して授業を展開し、かつホームページを答案がわりにうまく利用した例です(お互いに人の考え方を見ることができますし、図などはメールでは送りにくいものですから)。その他にも問題に取り組んでいる出題サイトがあるようで、数件リストされています。また「道の面積は,S=al」では、面積に関して3年生みんなで考えたことと、それぞれの学校の生徒の考え方とをインターネット等を通じて見くらべ,様々な考え方に接することができています.その代表的な考えがページ上に紹介されています。また、同じように「ピタゴラスの☆」では内角の和が何度になるのかについての生徒たちのさまざまな考え方が載っています。
 そのほか、「Internetと教育」には 、「みさと天文台による1年生の理科の授業(金星の満ち欠け)」として、みさと天文台と教室とをビデオ会議システムを使用してつないだ遠隔授業の様子が載っています。また、そのまとめとして、実践内容やその効果、課題等が載っています。国語科では、「信州データベース〜思い出をインターネットにのせて〜」として、中学生活で大きなイベントのひとつである修学旅行をただの作文ではなく、画像と文章をあわせたものをホームページに載せようと取り組み、その指導案が載っています。授業の様子を公開するだけでなく、どのようなねらいで授業をしたのか、そしてその結果はどうだったのかまで載せることで、同じような授業をやろうと思っている人たち等や、授業のネタに困っている人たちへ有用な情報となるでしょう。また、修学旅行は、よくホームページのネタとして使われるもので、旅行後のまとめや、事前調査等でインターネットを使用する例などが見られます。
 さらに、「教育実習生のためのホームページ 」というのがユニークで、教育実習生(これから先生になろうという人たち)へのアドバイス等が発信されています。

●学内向けの情報発信が参考になる、千葉大学教育学部附属中学校ホームページ(http://www.jr.chiba-u.ac.jp/;図3)
 ここでは、学内で授業中に活用するための発信が中心となっています。つまり学内で情報を共有していくイントラネット的な発信の参考になるホームページです。ホームページを発信するということは外部のためと同時に、当然内部のためにもなりますから、こういったホームページづくりも非常に興味深いものです。トップのページから「内部のホームページ」を見ると、そこには「教員向け情報」として、お知らせなどが載っていたり、「全校向け情報」では、パソコン使用のマナーや、設定方法、パソコンやネットワークの基本的な解説が載っています。行けないところも多いですが、このような学内のための情報発信のページの使い方もあるという参考にはなるかと思います。
 「ちばふの部屋」では、生徒番号順に生徒たちが授業で作った自分たちのページがリンクされ、それぞれが自分たちの調べたこと、趣味などといったテーマにそって、発信しています。また、ホームページ作成のテクニック(HTMLの解説等)や、利用可能な画像が用意され、ホームページを作成するための配慮がなされています。ホームページを読めば、作り方だけでなく素材も手に入ってしまうというわけです。
 教科ごとのホームページも用意され、「技術科」では、情報教育に関すること、授業のワークシート(電子メールの使い方等)が載っています。きっと実際に授業で活用しているのでしょう。また、総合的な学習として「共生の部屋」があり、「環境」「国際理解」「人権」をテーマにとりくんでいるようです。自らテーマを決定し課題を追究していくために、学校にある膨大な資料(VTR、新聞記事等)のリストや、参考ホームページがリストされています。資料が用意されています。資料は、キーワードで検索をかけられるようになっています。
 内容面だけでなく、例えばホームページ内をキーワード検索してくれる機能が用意されています。ホームページというのはどんどん情報が蓄積していき、膨大になってきますから、今後各々のページで検索システムも必要になってくることでしょう。また、現在の天気が表示され、遠方からの来訪者には役に立つかもしれません。そして、面白いのがヘルプ機能で、ホームページ上に点在している?マークを押すとそこの解説が出てます。自分たちの作ったものが必ずしも他者に理解されるとは限りませんから、このようなオンラインヘルプ的な仕掛けも重宝されることでしょう。

 これらの他、とりあげたいホームページはやまほどあります。特に、群馬県前橋第四中学校山形県白沼小中学校をここに挙げたかったですが、これらは、第2回わこうどホームページコンテストで最優秀賞、優秀賞を得ているサイトでありますから、そちらのホームページ(http://www.toyama-tic.co.jp/fair97/wakoudo/)にあるホームページ紹介(講評)をごらん下さい。また、リンクリストでは、福島県葛尾中学校(http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/)の「理科の部屋」リンクリスト、そのほか、石川県高岡中学校(http://www.nsknet.or.jp/~htakano/)北海道歌志内中学校(http://kamoi.utashinai-jhs.utashinai.hokkaido.jp/)等も見逃せません。以上のものは、以前の私の連載でもとりあげています。

3、その他のホームページ紹介コーナー

 ここでは、メインの紹介とは別に、ホームページをいろいろ紹介していこうと思っています。今回は、本誌で紹介して欲しいページがあったらということで募集していましたが、そんなページが出てきましたので紹介します。
寝屋川理科サークルホームページ(http://www.cc-net.or.jp/~akio/rikamain.html;図4)
 このホームページは、子どもたちに、わかりやすい身近な生活に密着した科学をという事で、他の科学を中心にしたホームページとは、また少し違うホームページです。教育実践例をはじめとして、理科のさまざまな情報が公開されています。例えば、「物作りコーナー」では、火起こしに挑戦しようなどがあります。また、「教材データー」は指導案や日誌をはじめ、画像データなど教育実践や校務に役立つデーターや文書をダウンロード出来るようにしています。科学に関するリンク集も、お薦めマークがついており、有用なホームページをすぐ見つけることができます。BBSやメーリングリスト、チャットルームも開設しています。理科関係の方や科学に興味のある方はぜひ訪れてみて下さい。

 今後も応募があったら、そのつど毎回1件づつでも紹介していけたらと思っています。自薦・他薦は問いませんので、ここで紹介してほしいホームページがありましたら、ぜひ教えてください。随時募集しております。これまで連載した記事のバックナンバーを置いているホームページ(http://www.edutech.tohoku-gakuin.ac.jp/new/)内の入力フォームかまたは、電子メール(ichikawa@edutech.tohoku-gakuin.ac.jp)お使い下さい。
 次回は、校種別の第2回ということで、小学校のホームページを取り上げます。


(コラム) 校種別の特徴(1)ホームページの大きさ

 これまでの連載でも時々紹介してきましたが、筆者らは96年にホームページ調査を実施しました(市川・鈴木、1996)。そのときのデータのなかから、校種別の比較などを少しだけ紹介してみたいと思います。まずは、数値的なデータとして、ファイル数と容量の話をしましょう。
 調査時点(96年8月)のファイル数の校種別ベスト3を、表1に示します。ファイル数は、京都府立命館宇治高等学校が最も多く、ついで神奈川県本町小学校、滋賀県平野小学校と続きました。この3つは,ファイル数が2,000を超える膨大なホームページとなっています。次にファイル容量の校種別ベスト5を表2に示します。容量については,神奈川県本町小学校が他のホームページから群を抜いて多くなっていました。
 ファイル容量は、小学校が圧倒的に多く、1ファイル当たりの容量は、小学校が18KB/ファイルで、中学校が14KB/ファイル、高校が12KB/ファイルとなっていました.このことから、小学校は画像などを多用してページ単位の容量が多く、逆に高校はテキストベースの発信であると言えます。小学校は子どもたちが喜ぶように画像をたくさん使用したはなやかなホームページになり、逆に高校はあまりこらずに必要な情報だけをシンプルに発信していこうという姿勢でとりくんでいるのでしょう(まあ、この限りではありませんが)。だいたい中間値としては、ファイル数は60個、容量が700K程度です。この値が一般的なホームページのものです。これから見てもかなり、ベスト3のホームページはずばぬけて多いことがうなずけると思います。また、これらのデータは、HTMLファイルと画像ファイルのみの数値であるということを付け加えておきます。
 この数字をもとに、個人でプロバイダに契約している(これからしようと思っている)みなさんは、レンタルするホームページスペースの容量を決めてはいかがでしょうか?

参考:
市川尚・鈴木克明(1996)「小中高ホームページの調査研究」『日本教育工学会第12回大会講演論文集』 pp.133-134

表1 校種別ファイル数ベスト3(96.8)
県名学校名ファイル数(個)
小学校
1神奈川本町小学校2254
2滋賀平野小学校2121
3茨城桜南小学校1030
中学校
1千葉千葉大学教育学部附属中学校1376
2福島葛尾中学校1083
3和歌山和歌山大学教育学部附属中学校973
高校
1京都立命館宇治高等学校2624
2鹿児島鹿児島水産高等学校1289
3愛知西陵商業高等学校1235

表2 校種別容量ベスト3(96.8)
県名学校名容量(Kbyte)
小学校
1神奈川本町小学校47083
2滋賀平野小学校36642
3岐阜大和小学校22664
中学校
1福島葛尾中学校19332
2和歌山和歌山大学教育学部附属中学校14549
3北海道歌志内中学校11843
高校
1鹿児島鹿児島水産高等学校30288
2北海道凌雲高等学校20384
3広島広島大学附属福山中学高等学校19791



図1 山口教育大学附属光中学校ホームページ
図2 和歌山大学教育学部附属中学校ホームページ
図3 千葉大学教育学部附属中学校ホームページ
図4 寝屋川理科サークルホームページ

表1 校種別ファイル数ベスト3(96.8)
表2 校種別容量ベスト3(96.8)


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