授業で役立つホームページ

第10回
 生命教育関連のホームページ


市川 尚(東北学院大学大学大学院人間情報学研究科)
鈴木 克明(東北学院大学教養学部)

1、はじめに

 前回は国語のホームページを紹介しました。前回までの連載でとりあえず教科紹介はひとくぎりとしまして、新年号の今回からは予告通り、ご要望の多かった総合学習関連のホームページを再び数回に渡り紹介していきます。といっても紹介のスタンスはまったく変わっておりませんが。以前は環境、国際理解、平和教育関連のホームページを紹介してきましたので、今回は生命教育関連のホームページを紹介していきます。生命教育とひとくちに言っても、その範囲は広く心の教育や人権教育、性教育などをとらえたものとしております。道徳も含まれてきます。総合的な学習ですから、あらゆる要素が含まれてくることは当然のことです。なるべく網羅的に紹介できればと思っております。生命教育関連の(ための)発信は、主に教育機関を中心に学校、団体、個人等さまざまなところから情報が公開されています。
 学校からは、このような生命教育というものにとりくんでいくということを教育目標に書いているところや、ほんの少しだけ活動の様子を載せているところがほとんどでした。実際に実践を行ったその様子等を中心に据えて(きちっと)公開しているところは、まだ多くないのが現状です。むしろ学校以外の団体などの方がこういった教育情報の発信に力をいれているようです。また、総合学習という言葉で自分たちの実践を括っているところはほとんどありませんでした。全体的には「人権教育」「いじめ」というキーワードが最も多いという印象をうけました。しかし、今後この手の情報が増えてくることでしょうから、現在ある生命教育関連のホームページをながめてみるのもよいでしょう。いつも通り、学校から公開されているホームページを中心に紹介し、その後から学校以外から公開されているページを若干紹介していきたいと思います。


以前紹介したページのうち、生命教育関連の情報が載っているところをいくつか紹介します。
群馬県前橋市立第四中学校(http://www.daiyon-jhs.maebashi.gunma.jp/)
 「四中から世界へ」では、全世界の人々や自校の生徒や保護者に対するエイズのアンケートを実施したとりくみが紹介されています。その集計結果が公開されています。それぞれについて集計されています。
福島県葛尾中学校(http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/)
 これまで、「理科の部屋」を紹介していきましたが、「心のメーリングリスト」といって、一般の方々などから投稿されるいじめの体験談などが、生徒たちに匿名で配られるシステムがあります。投稿された記事を見ることができます。
文部省(http://www.monbu.go.jp/)
 「特集」には、いじめ問題に関するいくつかの項目があります。
石川県高岡中学校(http://www.nsknet.or.jp/~htakano/)
NHK学校放送オンライン(http://www.nhk.or.jp/sch/)
 ともに以前も紹介したことがありますが、後述します。

2、学校からの発信(とりくみの様子)

兵庫県摩耶兵庫高等学校(http://maya.mayahyo-hs.chuo.kobe.jp/~mac/mayahyoj.html;図1)
 このホームページの「本校の教育実践」または「ユニークな教育実践例のページ」から、「いじめと不登校のページ(平成8年度プログラム)」に行くことができます。そのページは生徒たちが中心となって、いじめ・不登校をこの世の中からなくすための手段として開設したそうです。「わたしたちの体験談」には、いじめや不登校をしていた体験や、いじめ等に関する自分たちの意見が載っています。また個人のページ(名前のページ)では、より詳しい内容を見ることができます。いじめ体験者の声ということもあり、いじめの被害にあっている人達は勇気づけられる面も多いかと思います。「意見交換用掲示板」では、いじめ等について国内の人々との交流を行っていたようですが、筆者が参照した時は行くことができませんでした。そのほかにも、長編の小説などが載っています。
新潟県城西中学校(http://denouken.kmt-technopolis.or.jp/EDU/jousei/;図2)
 「ともだちになろうよ」では、青少年赤十字(JRC)のメンバーたちが自分たちで作成したホームページで、JRC活動の様子が載っています。「トピックアルバム」では、国際交流などの活動の紹介が載っています。「JRCとは」では、青少年赤十字の歩みなどが載っています。この学校のある熊本県は日本赤十字発祥の地だそうで、その影響もあってか、活動にも大変熱心な学校のようです。「活動紹介」では、NHK海外助け合いの街頭募金等を行ったときの様子が載っています。「トレセン」では、熊本県内の青少年赤十字リーダーシップ・トレーニング・センターの紹介やプログラム、活動風景などが紹介されています。他にも「教えて教えて」など、いくつかのコーナーがあります。
愛媛県城北中学校(http://user.shikoku.ne.jp/ctd312vx/;図3)
 この学校は文部省よりエイズ教育(性教育)推進地域研究の指定を受けています。「エイズ教育」のページには、取組みが中心に紹介されています。「共生(校内エイズ教育通信)」では、教職員が各部会での決定事項や研究の推進状況を把握し、協力して研究活動に取り組めるようにするための校内エイズ教育通信を紹介しています。筆者が参照したときには、No5まで出ていました。内容は研究推進委員会の運営に関してなどです。また、世界エイズデ−シンポジウム参加報告もあります。「エイズ教育講演」では、過去3回の講演の話の内容を参照することができます。特に第2回の講演は、話の内容全部を参照することができます。
北海道凌雲高等学校(http://squirrel.ryoun-hs.asahikawa.hokkaido.jp/;図4)
 この学校では、性教育(エイズ学習等)を考えるために、各学年各教科の数名で委員会が構成されています。その委員会が実施した活動として、例えば「TOPICS」の中には「1学年生徒を対象に保健講演会を実施」という項目があり、そこには講演内容の概略 や父母からの感想が載っています。この保健講演会は「男女交際」「エイズ」「援助交際」等の高校生に関わりの深い内容でした。また、「95年のトピックス」には「性教育・エイズ教育の校内組織活動」という項目があり、委員会の組織紹介や活動内容等が載っています。参考資料として、学習会の記録や、講演会で配った事前事後のアンケートの内容とその集計結果、委員の声として委員会に所属していた教員たちの感想や意見が載っています。また、「HIVに性感染したある社員を、その会社社長が首切りしたのは間違いである」という論題で委員がディベートを行ったようです。ディベートとはどういうものかの簡単な解説も載っています。
千葉教育大学付属中学校(http://cuejr.e.chiba-u.ac.jp/;図5)
 この学校では総合的な学習「共生(きょうせい)」を隔週土曜日全校生徒の活動として設けています。そのなかで、一年生が「人権」をテーマにとりくんでいるようです。「共生の部屋」には、学校にある人権に関する膨大な資料のリストや、参考ホームページとして、人権に関するホームページがリストされています。自らテーマを決定し課題を追究していくために、資料が用意されています。「参考文献」では、人権WWWURLとして、関連あるホームページが数多くリストされています。「参考資料」では、人権に関係のあるビデオ資料がリストされています。「その他資料」では、人権を取り扱った新聞記事が見出しや内容、新聞社名や掲載日などの項目に従ってリストされています。人権関連の資料を探す際に有用なサイトです。これらの資料はキーワード検索をかけることもできます。
高岡中学校(http://www.nsknet.or.jp/~htakano/;図6)
 以前「数学の部屋」を紹介したページですが、生命教育に関するリンクが充実しています。このホームページには「学習・教育に役立つリンク集」として、教科別のリンクリストがあります。大抵の教科別のリンクリストは、人権等の項目が入っていませんが、ここには、「人権教育」と「教育相談」など関連する項目があります。内容的には「健康・安全」も若干関連があります。「人権教育」には、子ども権利条約の内容等のサイトがリストされています。「教育相談」にはいじめを中心にリストされています。他の教科のリンクもなかなか充実していますので、ぜひ一度足を運んでみてください。また、「社会科のページ」には、97年夏休み作品展社会科のなかに子どもの権利条約にいての作品がひとつあります。

3、学校以外からの発信

NHK学校放送オンライン(http://www.nhk.or.jp/sch/;図7)
 以前も紹介したことのあるページです。NHKの教育番組が紹介されているページです。「先生の部屋」にある「番組紹介」のページには、小学生向けの生命教育の番組として、「みんな生きている」が紹介されています。この番組は小学校中学年を対象とし、くらしの中の身近な題材を通して、いのちのすばらしさやまわりの人々ヘの思いやりについて子どもたちと一緒に考えていくという趣旨です。1学期から3学期までを通してのこの番組のプログラムが載っています。プログラムは曜日とタイトルと番組の概要を知ることをできます。なかなか面白い番組をやっているようですので、ここでスケジュールを把握し、ビデオ録画してあとで授業で活用してみてはいかがでしょうか。
N-PARK(http://www.dpro.or.jp/~npark/;図8)
 北海道教育大岩見沢校の小野寺健一さんによって製作されているホームページです。広く教育問題を扱っているホームページです。今回の関連では例えば、Topicsにリストされているものに、いじめ問題や子どもの権利条約などの項目があります。いじめ問題では、アンケート入力フォームや、その途中経過が報告されています。9月30日現在でアンケートの総計は約276通ということで、いじめに対しての関心の高さとこのホームページの活発さがうかがえます。N-Park教育会議室(掲示板)では、実際にいじめ等の問題について議論のやりとりが行われているようです。いじめや不登校など幅広い問題について意見交換できる参加型ホームページです。MLも充実しています。 「いじめの意見箱」や「いじめに関して言わせて」の投稿リストでは、数多くの人達の意見を参照することができます。また、「いじめ体験談」では、いろいろな体験を見ることができます。「子ども権利条約」では、その条約の内容の紹介をはじめ、アンケートや意見なども載っています。また、関連サイトへのリンクもはられています。このホームページは参加型というだけあって、様々な人達の意見を聞くことができるところです。また、ボランティア相談員によるインターネット上での「なやみ相談」も行っているようです。教育のことを話し合うメーリングリストへの登録のページも用意されています。
国際人権教育フォーラム(http://www.mahoroba.or.jp/~dakara/;図9)
 奈良県と滋賀県の小中学校の教員でつくるグループによって公開されています。「実践データベース」には、このグループの実践の紹介が10数件あります。例えば、「ちがいのちがい」では小グループによるディスカッションによってあっていい違いとあってはならない違いを気付かせようという実践や、「貿易ゲーム」といった貿易の暮らしに与える影響を疑似体験する実践など、各実践の進め方等が載っています。「開発教育とは」や「国際人権教育とは」では、それらの詳しい解説が載っています。他にも「用語解説」等も準備されています。また、国際人権教育に関する文献も、理論、実践等に分類し紹介されています。それぞれの文献には簡単な紹介がついています。また、「リンク集」として、人権・NGO関係などのサイトがリストされています。

4、おわりに

 今回は生命教育関連(心・人権・性教育)ホームページを中心に紹介してきました。次回も総合学習のホームページを紹介する予定です。


図1 兵庫県摩耶兵庫高等学校ホームページ
図2 新潟県城西中学校ホームページ
図3 愛媛県城北中学校ホームページ
図4 北海道凌雲高等学校ホームページ
図5 千葉教育大学付属中学校ホームページ
図6 石川県高岡中学校ホームページ
図7 NHK学校放送オンライン
図8 小野寺健一さんによる「N-PARK」
図9 「国際人権教育フォーラム」ホームページ


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