授業で役立つホームページ
第1回
学校ホームページにみる教科利用
市川 尚(東北学院大学大学大学院人間情報学研究科)
鈴木 克明(東北学院大学教養学部)
1、はじめに
前回までの連載「授業のためのホームページ案内」では、いろいろなホームページを数多く紹介してきました。小中高のホームページも増加をつづけ、年末にはなんと1000件という4けたの大台に突入し、こねっとプラン対象校のホームページも多く見受けられるようになりました。今後ますますホームページの教育利用が増えていくことがうかかがえます。
今回からは、教科ごとにホームページを案内していきます。
ホームページを授業で扱うには、時間割にあてはめなければ使えません(正課での使用を考えないのなら別ですが)。どの教科のどんな場面で使えば有効利用できるのか、そのヒントとして教科の情報を発信をしているホームページを紹介していきたいと思います。
学校のホームページの中には、教科ごとに情報を整理しているところがあります。たとえば、神奈川県横浜市立本町小学校(http://www.honcho-es.naka.yokohama.jp/;図1 )では、教科ごとに授業の実践がまとめられています。
今回は第1回目として、数ある学校のホームページがどのような教科で利用されているのか、その傾向を紹介していきます。今後の連載はホームページの公開目的ごとに分類して紹介していくつもりなので、まずその分類枠を簡単に紹介しておきます。
筆者は、ホームページの調査を実施しており、去年の8月に立ち上がっていたホームページ約600件についての調査を行ないました(市川・鈴木、1996)。まだ分析途中で、518件分までの結果ですが、その中からの情報を提供したいと思います。
2、ホームページで発信されている内容の目的別分類とその結果
教科に限らず、学校のホームページを活用できることはどんなことでしょうか?どんな目的をもって作っているのでしょうか?
100校プロジェクトでは、その募集要項にホームページ活用について次のような例示をしていました。
例:ネットワーク利用企画
(1)情報収集
(2)情報交換
(3)共同学習
(4)ネットワーク・カンファレンス
(5)情報発信
等
以上はWWWに限らず、ネットワークを活用できる企画を列挙し、網羅していたものです。また、豊福(1996)は、学校ホームページの意義として表1の4つを上げています。かなり割愛していますので、詳しくはキッズページ内「学校ウェブをつくる」 (http://KIDS.glocom.ac.jp/eduwoods/schoolweb/index.html)を参照して下さい。
表1 学校ホームページの意義(豊福、1996による)
(a)学校広報としての役割
ここは従来から学校要覧として用意されてきたものがベースとなる。最低限の条件として、ページにアクセスして大体の学校情報がつかめるとともに、学校側とすみやかに連絡が取れるような条件を満たさなくてはならない。
(b)ディジタルリソースアーカイヴ
学校での実践活動、創造的活動、ネットワークを介して行われたコラボレーションの成果などを、ページ上で公開する。
(c)コラボレーションのための呼びかけ
新たなコラボレーションのための呼びかけや、コラボレーション活動自体の媒体に用いることができる。
(d)学校コミュニティの窓口
学校ホームページはまた、教師・児童生徒・保護者・卒業生を含んだ学校コミュニティへの窓口の役割を果たす。
豊福(1996)は、学校ホームページの利用目的(方法)を簡潔にまとめており、公開目的の分類枠として便利です。先ほどの100校プロジェクトの活用例と比べてみると、「情報交換」「共同学習」「ネットワークカンファレンス」はだいたいコラボレーションに入り、「情報発信」はデジタルリソースアーカイヴや広報に入ります。「情報収集」にあたる項目が見当たりませんが、例えばリンク集のように情報収集をおこなうために公開している項目もありますので、公開目的に新たに加える必要があります。さらに個人のページを設けて個人的な情報を発信している例もありますので、これも公開の目的として加えます。こうしてできあがったのが、表2です。さらに公開目的は、情報主体(子ども、教員、共同体)によっても異なるので、そのための枠を設けました。なお、(d)学校コミュニティの窓口に関しては、広報やアーカイヴに入ったり、表中のC列がコミュニティの窓口というイメージであるため、別項目としての必要はないと判断しました。共同体とは、主に学校コミュニティを形成する外部の人たち(卒業生、保護者、地域の人々)を含む一般を指します。
表2 ホームページ公開目的
広報は学校としての案内や紹介で「学校レベル」、アーカイヴ・コラボレーション・収集は、主に授業・学習目的で使うものであり「授業レベル」、最後に学校とは別次元の「個人レベル」の3つのレベルが存在しています。
授業レベルの発信に関しては、情報の流れが、アーカイヴは発信、コラボレーションは受発信、収集は受信となっています(図2)。教科ごとの発信は、この授業レベルに入ってきます。
図2 授業レベルの発信
3、小中高ホームページ全体の傾向
調査の結果得られた、公開目的の割合を校種別に図3に示します。図中の「2A」などは、公開目的(表2)に対応しています。
図3 発信内容の公開目的別内訳
広報目的の情報は全校種とも最も多く、ほとんどのページに広報に該当する何らかの情報が入っていることになります。授業レベルの発信では、小学校の検討がめだちます。地域コミュニティを視野に入れている例は、高校に多いようです。個人のページは、技術的な面を考えても、やはり高校が多いのは妥当です。総合的にみると、ほぼどの場合でも、小学校か高校が両極端に位置し、その中間が中学校という位置付けです。高校が広報的な学校レベルのホームページの公開、小学校は授業のとりくみなど授業レベルの公開をより多くしていることが伺えます。
授業レベルの発信に関しては、公開目的はアーカイヴが圧倒的に多く、WWWが最も得意とする自分たちの成果などを発表・保存の場として活用する、情報を発信する目的にホームページが使われています。情報主体は、子どもの発信が教員の発信を上回っていました。
4、教科別の傾向
授業レベルのなかでも、特に教科として明示してあったものや、明示されていなくても教科の枠に入るものに関して、教科ごとにカウントしました。なお、同じ学校で同じ教科(同レベルの)の内容が複数見られても、ひとつとカウントしています。結果を図4に示します。
図4 教科別総合グラフ
注:小・中・高ごとの学校数を100%としたときの割合(全体の合計は300%)
結果としては、理科が最も多かったです。理科は学校のとりくみ紹介にとどまらず、詳細な実践例、データベースや、ホームページ上でのコラボレーションなどさまざまな情報が載っていました。理科だけで独立してホームページのようになっている例もありました。これを見るかぎりでは、ホームページ上では理科についてが多く、この教科がインターネットで最も活用しやすいものであると思われます。ついで、社会、情報、クラブ、図工・美術…という順番でした。社会はおもに実践例とそこからでてきた子どもたちの成果を載せるものが多く、情報は学校にコンピュータ(インターネット)を導入しての結果報告などが目立ちました。図工・美術は、主に子どもの作品の発表の場として使われているようです。
公開目的別にみると(図3)、当然のことながら、アーカイヴ的な利用法が最も多くなっていました。また、学級、生徒会、クラブ、美術では、子ども主体の発信が多かったです。情報・数学などは、完全に教員の方が多いことが見てとれます。それ以外のものに関しては、五分五分か若干教員主体の発信が多くなっていました。
おもにアーカイヴでは、こどもの授業の成果・作品など、教員からは授業の様子や指導案などが発信されていました。また、少ないながらもコラボレーションとしては共同調査、収集では学習に役立つリンク集などがありました。
5、おわりに
今回は、小中高のホームページの教科別の傾向を紹介しました。
今後の連載は、ひとつひとつの教科について、今回紹介した公開目的別に分類しながら、紹介していきたいと思います。次回は、調査で一番多かった理科の発信をしているホームページ案内を予定しております。
参考文献
豊福晋平(1996)「学校ウェブをつくる」
http://KIDS.glocom.ac.jp/eduwoods/schoolweb/index.html
国際大学GLOCOM
市川尚・鈴木克明(1996)「小中高ホームページの調査研究」『日本教育工学会第12回大 会講演論文集』 pp.133-134
図1 横浜市立本町小学校ホームページ
量・質ともにトップクラスのホームページ
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