授業のためのホームページ案内

第2回
「授業で使えるホームページ総覧〜教育関係ページ紹介」


市川 尚(東北学院大学大学院人間情報学研究科)
鈴木 克明(東北学院大学教養学部)

1.授業のためのホームページ

 連載の第2回は授業に使えそうなホームページを、教育機関を中心に見ていくことにします。すべてを見られるほどその数が少ないわけはないので、その種類をなるべく多くあげられればと思います。
 ではどんなページを紹介していくのかというと、まずタイトルにあるように「授業のためのホームページ案内」ですからなんらかの形で「授業のため」になっていなければ意味がありません。前回、簡単にふたつの視点が考えられるだろうということを述べました。「授業の中」と、「授業を考える際」です。つまり、授業時に使えるのか(ひとつのメディアとして)、授業前(指導案を検討するときなど)に教師が使えるのかということです。
 授業の中での場合は、子ども主体でコンピュータに向かってやる場合(学校のコンピュータ環境による)と、教師が一斉授業時に提示するやりかたがあるでしょう。しかし、今回はその視点にこだわって分類するよりは、現状の授業に使えるホームページ像をつかんでもらう意味でも、とりあえず使えそうなホームページをリストしてみます。どのようなことに使えそうかを、考えながら読み進めて下さい。

2.授業に使えそうなホームページを見つけるためのホームページ

 まずは、ホームページの存在を知らなければ活用どころではない(だからこういう紹介の記事があるわけなんですが)ということで、前回の大阪教育大学の「インターネットと教育」の紹介につづき、ホームページをリストしてあるところを少し紹介してみたいと思います。「インターネットと教育」(http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/educ/)はすばらしいリストで、教育関係のサーバをほとんど網羅しています。ですから今回はちょっと質の違ったものを紹介していきます。また、YAHOO!などの一般の検索サーバーはみなさんご存じのことと思いますので、それには触れずにいきます。
 便利なリストは、ホームページをリストするときに、その項目に解説がついていて選ぶ際に非常に参考になったり、教科別に分類されているなどきちんと整理されているものです。これらのページは、情報過多のインターネットを整理し、われわれ(子どもと先生)の情報収集をナビゲートしてくれます。また、子どもたちが「調べ学習」として自由に使うときも、情報選択の幅を制限し、好ましくない情報へのアクセスをさける意味もあります。
福島県葛尾村立葛尾中学校の「理科の部屋」(http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/SCR/Rika/index.htm;図1)
 ここは、理科に関連するあらゆるホームページを紹介しています。その数は膨大でとてもすべていくことはできないでしょう。ひとつの教科を徹底的にリストし、その中をきちんと分野わけ(物理・地学…など)してくれているので、非常に助かります。多くの学校のホームページに葛尾中の「理科の部屋」へのリンクがはってあることからも、このホームページが足ががりとして活用されている有名なものであることが伺えます。
宮城県東北学院中学高等学校の「School in network」(http://www.jhs.tohoku-gakuin.ac.jp/sch_in_net/sin.html;図2)
 外国語関連・国語関連・数学関連…と教科別にホームページをリストしたものです。教科別にリストしてあるので、授業での活用に直結できます。授業をしている教師の目でみて使えそうなホームページを選んでいるので、効率的に欲しい情報が手に入ります。
大阪大学の松下さんによる「博物館の博物館」(http://www.hus.osaka-u.ac.jp/esthome/matusita/Museum/Museum.html;図3)
 博物館関係のホームページをリストしてあるところです。しかし、博物館だけにとどまらず、「学校の博物館」と題し、教科別のリストをしてあるなど、内容豊富です。博物館もかなりの数のホームページが公開されており、数が膨大ですが、オススメのマークがついていたり、コメントがついているので、それを参考に選ぶことができます。作者が非常に力を入れているのが伝わってきて、今後がさらに楽しみなぺージです。
徳島県鳴門教育大学の「環境のページ」(http://www.naruto-u.ac.jp/kankyou/kankyou.html;図4)
 環境教育を実践している学校の紹介や、環境に関連したホームページのリストまでまとめてあります。環境に関連することを教えておられる先生は、ここにくれば環境に関する情報はほとんど得られることでしょう。ただのリストではなく、環境をいろいろな角度からまとめているのが特徴です。

3.資料として使える・子どもたちに情報収集をさせるホームページ

 授業のなかで資料として提示したり、実際に子どもたちにまわらせる対象としてのホームページです。百科事典っぽいもの、データベースや、最新の情報が手にはいるところなどさまざまです。ここで紹介するもの以外にも、さきほどのリストから多数見つけてくることができます。
仙台市科学館ホームページ(http://www.smus.city.sendai.jp/Welcome.html;図5)
 今年の7月から公開をはじめたこのホームページは科学館の紹介だけでなく、標本データベースを公開しています。さすが科学館だけに膨大なリソースを持っているようで、動物・植物・化石・岩石・鉱物などのデータが閲覧できます。特に必見なのは、検索システムで、色や生育場所から検索できます。つまり、名前を知らなくても、その特徴からなんとか検索できるのです。刻々と変わる台原森林公園の画像もあり、現在の森林公園の様子を知ることもできます。教育利用が考えられたページです。他の研究機関も、このように蓄積しているデータをどんどん公開していってほしいと思います。
千葉県東金女子高等学校の「ザ・ナイン・プラネッツ」(http://svr.togane-ghs.togane.chiba.jp/9planets-j.html;図6)
 太陽系9惑星系に関する解説が載っています。特徴的なのは、海外の優秀なリソースを日本語化してくれているプロジェクトの一環であるということです。つまりオリジナルは海外にあります。英語のページはついでに英語の勉強になるという場合もありますが、日本語にこしたことはありません。特に情報をさっさと収集したい場合などには非常にありがたいことです。このプロジェクトは他にネチケットのページも日本語化してくれています。
徳島中学校「徳島県人になろう」(http://tokushima-jhs.tokushima.tokushima.jp/jindex.html;図7)
 ここのホームページでは「徳島県人になろう」と題し、昔からの方言ではなく今現在使われている言葉(方言)を紹介しています。「生」の情報をとってくることが得意のインターネットらしくておもしろいと思います。しかも言葉は音声ファイルでも提供され、地元のひとたちの声を聞くことができます。また民話や阿波踊りの紹介もあり、地域のさまざまな情報を得ることができます。
キッズスペースの「キッズギャラリー」(http://plaza.interport.net/kids_space/indexJ.html;図8)
 ここには世界に呼びかけて収集した子どもたちの絵がのっています。世界各国からの出展作品が子どもの国の国旗といっしょに鑑賞できるなんて、インターネットの国際性がビジュアルに実感できますね。自分の学校でホームページをもっていれば問題のない話ですが、学校がインターネットにつながっていなくても、子どもたちに発表の場をあたえることができ、あとで載ったものを先生が知らせるなり、提示してあげればいいのです。ホームページに公開することを目標とすることで、子どもたちの意欲を高めるという使い方もできるでしょう。

4.授業づくりのための先生のホームページ

 最後に、子どもたちに見せるページではなく、先生方のためのページをいくつか紹介します。授業実践の記録や学校の教育についての最新情報もホームページから得ることができます。
神奈川県横浜市立本町小学校の「授業中(実践紹介)のページ」(http://www.honcho-es.naka.yokohama.jp/study.htm;図9)
 本町小学校は、日本の学校のなかでも充実度トップクラスのホームページを公開しています。これまで紹介してきたタイプの情報をもれなく発信している他に、ここでは、自分の学校の授業実践を教科別・学年別にリストしています。普段は見えてこない授業の内容を紹介することで、同じような実践を試みようとしている先生方には非常に参考になると思います。いわば教室の壁を取り払っているという感じです。実践記録だけでなく、授業で使った資料も参考になります。
岐阜大学教育学部附属カリキュラム開発研究センター(CRDC)(http://www.crdc.gifu-u.ac.jp/;図10)
 ここにあるEDMARS(教育研究文献情報データベース)では、学術論文をはじめ教育関係の文献を検索することができます。特に教育工学関係文献データベースは充実しています。また、マルチメディア素材を提供しているページや図鑑などもありますし、教材に関する情報を得ることもできます。ネットワーク上で提供されている教材には、ダウンロードできるものもあるようです。
NHKの学校放送オンライン(http://www.nhk.or.jp/sch/;図11)
 授業で使う他メディアの情報もホームページからとってくることができます。このページには、学校放送番組の解説が載っています。また、利用の視点として、どのように授業に生かしたら良いかのヒントなども教えてくれます。ホームページから情報を得て、他のメディアに生かすという形です。
文部省(http://www.monbu.go.jp/;図12)
 審議会答申などタイムリーな情報が公開されています。また、時事問題(教育に関する)をとりあげたりもしています。

5.ホームページを見てまわる際に注意してほしいこと

 今まで、数あるホームページの中でも代表的なものをいくつか見てきましたが、ホームページを見てまわる際、注意してほしいことがあります。それは、情報が氾濫状態にあり、どうやって必要な情報を見つけていくのかという問題です。代表的な方法は検索サーバでキーワード検索をかけてみることですが、不必要なものが多く検索されるという問題があります。今回はそれを解消するためにリストやおすすめページを紹介しました。授業で使えそうなものとして選びぬかれたものの中から選択するだけでも膨大な量があることに注意しておきましょう。
 また、子どもたちにとって好ましくない情報もたくさん流れています。例えば、いかがわしいページ(実はこういうのが最も人気があるから困ったものです)、まだ知ってほしくない情報、むずかしすぎる情報など、これらをどう扱っていくのかも問題です。
 さらに、「情報の正確性」の問題があります。今日紹介したような代表的なホームページは有用で信頼できる情報を提供してくれます。しかし、同じようなリンク先として登場するホームページの中には、発信元が定かでないものも混ざりこんでいます。ホームページは普通の出版物と違い、個人レベルでの情報公開がしやすい分だけ、嘘(誤った)の情報も多々流れています。ホームページは百科事典ではありません。ホームページを見たときは、これは真実を語っているのだろうか?と疑ってみることが大切です。その情報が発信されたのはいつだったのかにも注意しましょう(ナマの情報には賞味期限がありますから)。すべての情報をうのみにしてはいけません。ホームページがどこまで信じられるのかというのは重要な問題です。利用者として、注意することが必要です。
 授業での利用はほとんど駆け出しの(というより、ほとんどやっている人がいない)状態です。まだ試行錯誤を繰り返しているという段階で問題は山積みですが、それ以上にメリットもたくさんあります。ぜひこの莫大な情報源を一度活用してみてはいかがでしょうか?
 次回も、まだまだたくさんある授業のためのホームページ案内を続けていきます。

図1 福島県葛尾村立葛尾中学校「理科の部屋」
図2 宮城県東北学院中学高等学校「School in network」
図3 大阪大学の松下さんによる「博物館の博物館」
図4 徳島県鳴門教育大学「環境のページ」
図5 仙台市科学館ホームページ
図6 千葉県東金女子高等学校「ザ・ナイン・プラネッツ」
図7 徳島県徳島中学校「徳島県人になろう」
図8 キッズ スペース「キッズギャラリー」
図9 岐阜大学教育学部附属カリキュラム開発研究センター「EDMARS」
図10 神奈川県本町小学校「授業中(実践紹介)のページ」
図11 NHK「学校放送オンライン」
図12 文部省のホームページ


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