教科「情報」関連のホームページ

岩手県立大学ソフトウエア情報学部 市川 尚

はじめに

 今回は高校の教科「情報」(普通)のホームページ紹介です。本連載では初めて取り上げるテーマとなります。教科「報科」は、平成15年度から実施されますが、現在、試験的に実践を行っている学校・教師や、情報科の免許・教員養成に関わる団体・人々などからホームページが公開されはじめています。内容としては、教科「情報」とは何かの解説、教員免許関連として取得方法や講習会の記録(内容、日記、カリキュラム)や試験問題など、指導案(計画)、実践事例紹介、テキスト・学習教材、教員養成の情報、メーリングリスト、リンク集などがありました。まだまだ情報科のサイトは充実しているわけではありませんが、今後ますます増加することは想像に難くありません。
 鈴木(2001)は、教科「情報」の教員養成課程「情報科教育法T」の中で、情報科の授業をやる上で参考になると思われるWebサイトを発見して発表するという課題を受講生に出しました。今回は、この課題で発見されたサイトを中心に紹介していきます。
 なお、本稿で対象としたホームページは、教科「情報」と明示してあったものと限定しています。

高校の教科「情報」(普通)のホームページ紹介

●愛知県総合教育センターによる「新設教科情報における指導の在り方に関する研究」(http://www.apec.aichi-c.ed.jp/project/joho/index.htm)
 新教科「情報」の基本的事項を知ることができるサイトです。教科「情報」全体としてのねらいや、情報A・B・Cが何を目的としてやらなければならないのかがわかります。今回発見した中では、教科「情報」とは何かに関する説明が一番詳しいサイトでした。
 「教科情報Q&A」には、普通教科「情報」や科目「情報A」「情報B」「情報C」についての説明がQ&A方式で載っています。これらは高等学校学習指導要領解説「情報編」に基づいて説明されています。「用語集」では、Q&Aで用いている言葉の簡単な解説があります。実際にQ&A内の用語からも直接リンクが張られています。
 「生徒実習課題」では、情報Aの単元別学習指導計画例と、「実習1通学・通勤方法を考えよう」などの実習課題例が7つ紹介されています。「関連サイトリンク集」もあり、情報科に関するサイトへリンクが張られています。情報科についてまだよく把握していないという先生は、ここからスタートしてみるとよいでしょう。

●柴田功先生による「新教科「情報」授業アイディア集」(http://www.johoka.net/)
 神奈川県立川崎北高等学校の先生による発信です。この学校では、平成13年度から情報科の授業を前倒しで実施しており、情報Aを1学年で1単位、2学年で1単位割り当てています。このサイトでは、そこで行われている様々な授業実践を紹介しています。
 「新教科情報指導案・プレゼン・作品」として、「E-mailで授業の感想を送ろう」「オリジナルの名刺を作ろう!」などの指導案を紹介し、教材プリントやプレゼンテーション、授業後の感想や生徒作品などもあわせて載せています。また、年間スケジュールとして、1年間を通してどのような流れで授業を実施しているのかを見ることができます。各教科の先生が分担して情報科を教えている様子が伺えます。年間を通して計画立てて授業を実施している例を紹介しているサイトはまだ少ないので、参考になります。
 また、「情報教育用のイラスト集」や、新教科「情報」講習会や研修会のカリキュラム・資料、そして授業環境(ネットワーク等)を整えるための方法なども公開されています。

●茨城県立磯原高等学校による「新教科情報への取り組み」(http://www.isohara-h.kitaibaraki.ibaraki.jp/katsuyo/joho/kyokajoho.htm)
 この学校では、数学科において新教科「情報」の授業を想定した、実験的な授業実践を行っています。ホームページには、情報Aや情報Bに対応した合計5つの実践が紹介されています。実践はどれも身近な問題を解決するようなものとなっています。
 情報Aとしては、観戦ツアーを計画する「情報検索―オリンピック観戦」、最も条件にあった機種の購入を考える「パソコンの購入」などがあります。情報Bの実践としては、クラス会の会計に関する「つり銭問題」、合宿の最適な日程を考える「合宿問題」、一番安価なプロバイダを考える「プロバイダ選び」の実践例が紹介されています。指導案だけでなく、生徒に作業させるワークシートや、授業中に参照させるページも公開されていますので、すぐにでも同じ実践ができそうです。授業を行った結果として、生徒の感想や、授業中の様子(画像)を載せています。また、教科「情報」に必要となると考えられるハードとソフトも紹介されています。

●岐阜県総合教育センターによる「教科情報」(http://www.gec.gifu.gifu.jp/kyoukaHP/kyoukajyouhou/kyoukajyouhou00.htm)
 教科「情報」の指導案や免許取得のための情報提供が中心となっているページです。特に情報Bの指導案が充実しており、授業を行う上で参考になることと思います。
 「教材集」として、情報科に対応した指導テキストがWordやPDF形式で提供されています。第1集と第2集が用意され、教科「情報」のカリキュラムについてや、指導例が紹介されています。特に第1集は情報Bの指導案が32件、第2集でも情報Bを中心として35件の指導案が公開されています。指導案は、どれも学習の展開が詳細に書かれています。現在、第3集の指導案を募集しており、応募用フォーマットが用意されています。「教科指導」のページでは、平成12年度新教科「情報」現職教員等講習会の課題として作成された学習指導案(情報Aが27件、Bが14件、Cが5件)を参照できます。
 他にも、平成12年度の講習会の実施要項や講習内容の紹介、情報科に関連したリンク集、情報科の目標や科目構成についての解説も載っています。

●宮城県教育研修センターによる「教科情報指導案」(http://www.edu-c.pref.miyagi.jp/h12jyoho/index.html)
 平成12年度現職教員等講習会の課題として作成された指導案(指導計画・指導案・実習案のセット)を、科目・項目別に整理して公開しています。内訳は、情報Aが28件、情報Bが10件、情報Cが10件の合計48件です。情報科は実習を重視していますので(情報Aが全体の2分の1、BとCが3分の1以上を実習とすることになっている)、実習部分を詳細に書いた実習案が用意されています。実習案の中には、実習用ワークシートが作成・公開されているものもあります。
 指導案の内容としては、例えば情報Aなら、修学旅行先での班別行動計画、検索エンジンを用いた旅行プラン計画、デジタルファッションショー、文字をドットで書く、情報Bなら、文化祭出店問題、各都道府県の高齢化率調査、通学時における料金比較、梵天丸の走行プログラム作成、情報Cでは、情報機器の特性調べ、ホームページの著作権確認、銀行ATMの仕組み予想、バッチ処理とリアルタイム処理の比較検討などの課題があります。

●まつばら先生による「生物と情報の部屋」(http://www.avis.ne.jp/~yuichim/)
 このサイトの「情報」のページには、情報科の講習に参加した報告が載っています。「新教科情報現職教員等講習会」には、平成12年度の講習会(長野県)のカリキュラム表があり、日程と講義テーマが書かれています。講義テーマにリンクが張られている部分については講義メモがあり、講義で説明されたことや、質疑で出てきた内容などを見ることができます。あくまでも私的に作成された講習のメモですから、講義内容がありのままに載っているわけではありませんが、詳細に書かれており、講習会の様子も伝わってきます。他にも、講習会の提出物の紹介(実際に一部作品を見ることができる)や、講習会の課題で作成した情報Aの学習指導案「どの携帯電話を買おう?」を見ることができます。
 また、「新教科情報指導者研究協議会」として、文部省主催の講師養成のための講習の内容や様子も紹介されています。

●文部省・CECによる「高校情報担当教員用追加学習教材」(http://www.mitaka.ed.tao.go.jp/joho/)
 教科「情報」の免許取得後の追加学習用サイトです。免許を取得した教員が、取得後も関心に応じて継続的に担当教員としての資質を向上していくことができるように、そのための学習材料をインターネットで提供することが目的とのことです。
 内容としては、リアルプレイヤーのストリーミングで提供される講義(映像)と、資料(PDF形式)から成ります。講義のタイトルは、教科教育法、著作権、情報モラル、情報通信、コンピュータ概論、プログラム、フォンノイマン型コンピュータに関するものなど複数に渡っています。このそれぞれの講義をインターネット上から視聴することができます。講師が解説している映像と同時に、プレゼンテーション画面(静止画)が表示されるので、パワーポイントのプレゼンを実際に見ているような雰囲気となります。資料は、パワーポイントの画面を印刷したものです。追加学習教材ですから、ある程度知識がある人を対象として、一歩踏み込んだ内容で作られたものが多くなっています。

日文ネット(日本文教出版株式会社)(http://www.nichibun.net/)
 出版社のサイトであり、情報科教員用テキストや、情報科に関する機関紙の記事、アプリケーションの操作方法のテキストなどを見ることができます。情報科の教科書も準備中のようです。
 情報科教員用テキストの「情報マニュアル」は、情報科に必要な基礎知識を学ぶことができます。全15章から構成されており、情報科教育法や情報化と社会、コンピュータ概論、情報活用の基礎、アルゴリズムの基礎、ネットワークの基礎、マルチメディアの基礎などを学ぶことができます。教え方というよりも情報科で扱う範囲の知識を学ぶというテキストですから、自分の知識の確認に目を通してみるとよいでしょう。
 高等学校情報科機関誌「IT-Education」は、情報教育(情報科も含む)の実践例や論説の記事を参照することができます。
 他にも、「Web Design」としてWeb制作の流れ等の解説があったり、「IT-Literacy」では,コンピュータの操作方法やインターネットの仕組みを学ぶページや、さまざまなアプリケーションを利用するためのスキルを学べるページ等が用意されています。

おわりに

 今回調べた限りにおいて、教科「情報」サイトの現状としては、まだまだ件数が少なめであり、内容としては教員になることに関連した情報が大半を占めていました。その中では特に、講習会の内容や課題の成果(指導案)が発信されていました。情報科に関連する充実したリンク集は残念ながら見つけることができませんでした。まだ情報科が試行されていないので当然の結果であったと思います。一方で、すでにいくつか試験的な授業がはじまっているということも読み取ることができました。インターネットが整備されてきた状況下での新教科ですから、実践のアイデアをどんどんWeb上にあげていき、お互いで参照し合いながら良いものを作っていってほしいと思います。
 また、情報科の指導案や実践事例が多数公開されていましたが、数的には講習会の課題として作成されたものが多く、実際に学校で行った実践事例紹介は少なかったです。年間指導計画まで立てているようなところはほとんどありませんでした。情報A・B・Cという科目の観点で見ると、情報AやBがほとんどで、Cがかなり少ないという印象を持ちましたが、講習会の課題として指導案の割り当てが決まっていた例もあるようで、これが教員の好みの現状とは言えません。実践事例に関しては、新たに情報科を見据えて計画(もしくは再計画)・実践しているものと、使えそうな既存の実践をそのまま参考という形で紹介しているものが見受けられました。
 今回は教科「情報」と明示してあるサイトのみを紹介しました。しかし、これら以外にも情報科に関連するサイトとして、これまでの情報教育で培われてきた実践事例や学習用コンテンツ等が数多くあります。今後は、これまで公開・蓄積されてきた情報教育のコンテンツ(ページ)をうまく整理しつつ、教科「情報」のためのWebサイトが数多く出てくることを期待しています。

参考

鈴木克明(2001)「情報科教育法T」[URL=http://www.et.soft.iwate-pu.ac.jp/class/info/]

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バックナンバーのページ:http://www.iwate-pu.ac.jp/home/ichikawa/new/


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