国語科関連のホームページ

岩手県立大学ソフトウエア情報学部 市川 尚

はじめに

 今回は、国語科関連のホームページ紹介です。本連載では、1997年12月号と1998年12月号の2回とりあげた内容となります。
 国語科関連のホームページは、教師や研究者が公開しているものが中心となっているようです。国語科全般をとり扱っているサイトや、現代文・古文・漢文といった分野別のサイト、ある人物や1つの文学作品にテーマを絞ってとりあげているところ、漢字や作文や俳句などといった題材についての公開など様々です。
 内容としては、教師による指導案や実践の記録、子どもたちの作品の展示、文学作品の公開や解説、自習教材などがあります。すでに著作権が消えている昔の文学作品を集めて、テキスト(デジタル)データとして公開しているサイトもあります。また、文学作品がとりあげている地域のサイトや、その時代背景が載っている歴史のサイトなど、国語科と明示されていなくとも、いろいろなサイトが役に立つことでしょう。
 今回は、これまで取り上げていないページを中心に紹介していきます(以前紹介した ものにつきましては、バックナンバーのページをご覧ください)。

国語科関連のホームページ

●のぶさんによる「教育の職人」(http://www.pat.hi-ho.ne.jp/nobu-nisi/)
 このサイトは、さまざまな教案が公開されています。こころ・山月記・舞姫などの定番教材や、新作教材、そして様々な自主教材について紹介されています。国語1の現代文教材(羅生門など)や古典教材(かぐや姫等)の教案もあります。
 各教案には、教材観、授業の展開の詳細、授業に利用する補助教材が載っています。展開の中には、ロールプレイや、人生相談、学習プリントがあったりと、ひとつひとつの授業に工夫を凝らしています。教材の本文や、試験問題、生徒の感想などが載っているものもあります。授業の展開や道具が詳細に示されているので、とても参考になることと思います。生徒に面白かった教材等のアンケートを実施した結果を載せているところも興味深いです。
 さらに、新しい授業の試みとして、総合的な学習をにらんだ授業や、評論文授業の考察などがあります。教材研究の熱心さがとても伝わってくるサイトです。

●廣部先生による「Be〜やんのWebの仕事部屋」(http://www.bb.wakwak.com/~be-yan/)
 中学校の先生によるホームページです。「国語教育」には、中学校の国語科の実践記録が充実しています。
「実践記録のページ」では、2〜3年生で行った実践、例えば「方言を調べよう」や「パソコンで俳句づくりを」など、インターネットやパソコンを使った授業が中心に紹介されています。学習のねらいや指導計画だけでなく、生徒の作品や感想など、計画から修了までがきちんとまとめられています。授業の様子の写真なども入っていて、わかりやすいです。
 また、実践記録の中には「3年生:奥の細道を探検しよう」として、平成12年度Eスクエア・プロジェクトの一環である、インターネットを活用した古典の学習「芭蕉ネット」に取り組んだ記録が紹介されています。このページでは、滋賀県の芭蕉関連資料や、奥の細道全文、芭蕉に関するページへのリンクや、支援者たちによる関連資料などが公開されています。また、交流の様子を知ることができる詳細な学習の記録もあります。
 「教材分析のページ」では、教育出版社の「中学国語2、3」の教材分析や指導の概要が紹介されています。「リンクのページ」では、「中学国語」に沿った学習に利用できそうな参考資料(ホームページ)が整理されています。単元や教材別に整理されているので、利用しやすくなっています。国語科準備室では、国語科関連サイトのリンクがあります。
 「滋賀県湖北地方の方言」のページでは、小学生や中学生へ向けての説明や、湖北地方の方言辞典、学生や児童・生徒から寄せられた質問への回答などが載っています。方言についての情報を載せているサイトは各地にありますので、そういったサイトを方言学習に利用したり、自分のところで公開して他地域の学校との交流をはかることもできるでしょう。

●石野先生による「インターネット国語科教育」(http://www.nice.or.jp/~ishino/)
 新潟県立教育センターの先生が公開しているホームページです。めざせ情報発信型の国語教育と銘打っているだけに、子どもたちが主体的に活動していく授業のヒントが数多く公開されています。
 「こんな授業はいかがっすか」では、や「コピー作文で気持ちをキャッチ」「ニュース番組をつくっちゃえ」「ディベートで熱く」など、様々な人たちによる実践が紹介されています。また、「こんな演習いかがっすか」には、自らが行っている講座の内容がいくつか紹介されています。
「同時代単語帳」は、数多くの国語の用語が解説されています。さらに、重要と思われる用語(例えば、マップ法、クリティカルシンキング、ブレーンストーミング、ポートフォリオ評価など)については、別に詳細な解説が用意されています。国語科に関連するさまざまな知識を得ることができるサイトです。
 他にも、国語科関連参考図書紹介、国語関連ホームページのリンク集、国語教育に関するコンピュータソフトの紹介などもあります。

●進藤先生による「古典の窓」(http://www.asahi-net.or.jp/~bk8s-sndu/)
 塾の講師をしておられる先生によるページです。多くの人に古典文学の魅力を伝えることが目的とのことで、入門的なものを中心に、研究分野もある程度入れながら構成されています。
 古典文学のコーナーでは、古文の魅力を伝えようと、いろいろと工夫したページが用意されています。「日本文学史」では、上代から近現代までの文学史年表です。かなり細かい作品まで載せているとのことで、大きな年表となっています。「名歌・名場面集」は、古代文学になじみが少ない人たちのために、読んで良かった場面を載せることで作品の魅力を伝えています。例えば、古事記や古今和歌集、おくの細道などの本文と現代語訳が載っています。「文学作品冒頭文」では、作品に興味を持たせる工夫として、作品の中身でも重要な冒頭の部分のみが紹介されています。
 また、「源氏物語」についての詳しい解説や、「小倉百人一首」の和歌やクイズもあります。「古典事項解説」では、万葉歌人や芭蕉など、古典文学に関する基本的な解説がされています。「中学古文」は、中学生レベルからの古典の入門で、教科書古典の注釈・解釈や、文法についての解説、教科書掲載古典の重要単語が50音順に整理されて紹介されています。「古典文学クイズ」で遊んでみることもできます。
 いろいろと形を変えて作品を紹介することで、少しでも古典に親しみを持つきっかけ(出会い)を与えようとする作者の意図が伝わってくるサイトです。

●加倉井さんによる「賢治の事務所」(http://www.bekkoame.ne.jp/~kakurai/)
 このサイトの「宮沢賢治」のページでは、賢治のことを調べようとする場合に、参考となる情報が充実しています。
「賢治の見学記」では、ページ作者が賢治にゆかりのある土地を訪問したり、賢治に関するセミナー等に参加したときの記録が、写真入りで掲載されています。
 「賢治星月夜」では、賢治の見た星空をシミュレーションで体験してみようというものです。関連する作品の文章などともに星空を眺めることができるという趣向が面白いです。作品のイメージを膨らますことができます。
 また、特に充実しているのがリンク集です。「賢治のリンク集」では、学校や企業によるサイト、個人のサイト、岩手県の情報、賢治研究に役立つページなど(例えばエスペラントなど)へのリンク集となっています。かなりの情報を網羅しているようですので、賢治を調べる上での拠点としても利用することができるでしょう。
 「賢治のお店」には、賢治に関連するいくつかのお店等の紹介が載っています。「賢治の博物館」には、賢治のことをとりあげている博物館の紹介がありますし、「賢治の図書館」には、作品集や文庫本等のリストがあります。「賢治のイベント」には、関連する行事やメディアに出た記録があります。「宮沢賢治学会」についての情報もあります。
賢治のことを直接学習できるというよりも、資料の場所の提示や、周辺のこと知ることができるサイトと言えるでしょう。

●漢字指導研究サークル による「わくわく漢字ランド」(http://homepage2.nifty.com/mogmog/)
 小学校用の漢字情報が公開されているサイトです。楽しみながら漢字を学習し、漢字に興味が持てる子どもに育ってほしいという趣旨で開設されたそうです。
 「学年別漢字分類表」では、小学校1年から6年まで学習する漢字を、象形・指事・会意・形声文字といった、成り立ち別に分類しています。「漢字ミニ知識」では、漢字のでき方や、これ以上分解できない基本漢字101文字、和製漢字、中国漢字との比較などが解説されています。「漢字の授業」では、漢字を学習させるための指導案がいくつか紹介されています。「漢字リンク集」から他の漢字サイトに行くこともできます。
 また、楽しく漢字を学ぶための「漢字ゲーム」や、漢字の成り立ちやエピソードの中で、子ども達の興味を引きそうなものを集めた「漢字コラム」など、漢字学習を楽しくするためのヒントが紹介されています。「おすすめ教材・教具・書籍」紹介もあります。子ども向けサイト「漢字教室」が新設され、子供たちが漢字の問題にチャレンジできるようになっています。

●西岡先生による「VISUAL HISTORY」(http://www1.kcn.ne.jp/~a7627/)
 自薦他薦のページとして、世界史関係のサイトを紹介します。このサイトはビジュアル的な海外の歴史サイト2000個近くリンクしています。とにかく膨大なリンク集で、中高校生の授業に利用できそうです。
 歴史資料、古代史、欧州史、アジア・アフリカ・オセアニア史、中国史、アメリカ史、現代史、社会史、生活史、分化史などの大分類のなかに、それぞれがさらに細かく分類されています。世界各国のサイトが対象ですので、日本語のサイトだけではありませんが、逆にこんなに海外のサイトを紹介してくれているところはめったにありません。リンクは分類が細かいだけでなく、日本語による解説も付記されていますから、探しやすくなっています。また、ビジュアル的なものであれば言葉の壁も低くなることでしょう。さらに、歴史の小ネタに関するメールマガジンも発行しているようです。
 文学関連サイトへのリンクもあるようで、今回のテーマである国語科とも十分関連のあるサイトであると思います。

おわりに

 以上、国語科関連のホームページを紹介してきました。インターネットを国語科で利用することを考えると、授業の成果発表や鑑賞会(俳句や作文など)、あるテーマ(文学作品の読み等)に関する意見交換、方言などの地域性を生かした交流、文学作品自体や関連事項の調べ学習、自習教材としての利用、教師相互の授業のネタ交換などが挙げられます。クラスの中だけでは凝り固まってしまうような考え(人数が少ない場合は特に)も、外部から違う価値観や、独創的な意見を取り入れることができるかもしれません。また、情報発信することを通して、自分の文章に対する責任を持ち、適切に表現する能力を養うことができるでしょうし、逆に情報を受信する場合にも、相手の情報を正確に(時には批判的に)理解する力を養っていく必要があります。
 こういった情報を伝え合うコミュニケーション能力を高めていくことが、今後ますます重要な課題となってくることでしょう。また、デジタル化や情報過多によって希薄になりがちな、作品の価値や作者の苦労・思いなども忘れずに大切にしていきたいものです。

自薦・他薦のホームページ募集中:ichikawa@soft.iwate-pu.ac.jpまで。
バックナンバーのページ:http://www.iwate-pu.ac.jp/home/ichikawa/new/

更新履歴
 2002/09/30 廣部先生による「Be〜やんのWebの仕事部屋」のリンク変更


Return to:
  ホームページ紹介バックナンバーリスト


ichikawa@soft.iwate-pu.ac.jp