岩手県立大学ソフトウエア情報学部 市川 尚
新年度から開始した教科別紹介の第2回目ともなる今回は、社会科関連のホームペー ジ紹介です。本連載では、過去に2度(1997年8月号・1998年11月号で)取り上げた
内容となります。
社会科関連のホームページは、件数・情報量とも非常に多く、政府機関・地方公共 団体・企業・学校・個人など様々なところから公開されています。内容としては、各々
の専門分野の情報や活動紹介、データベース、地域・文化の紹介、学校や教師等によ る授業実践事例などが挙げられます。
これらは、必ずしも社会科を意識して作成されたものではなく、社会科のトピックが 世の中と深く関わっているために、Web上の多くの情報が活用できるということです
。その活用のために、調べ学習を支援するリンク集や、あるテーマに基づく情報を整 理したサイトが多いことが、社会科の特徴としてあげられます。
今回は、これまで取り上げていないページを中心に紹介していきます(以前紹介した ものにつきましては、バックナンバーのページをご覧ください)。
●総務省統計局・統計センター(http://www.stat.go.jp/)
統計局・統計センターは、国の施策等の資料に利用される統計の企画・実施・集計 等を行っている機関です。このサイトでは、多くの統計情報を公開していますが、特
に「なるほどデータforキッズ」という児童生徒用のページがありますので、以下に その内容を紹介します。
「おやくだちデータ倉庫」は、各統計情報への子ども用インタフェースであり、本 棚を調べるような感覚で、統計資料を調べることができます。例えば「日本と世界を
比べてみよう」では、人口、面積、平均寿命などのタイトルの本が画面に並び、そこ を選ぶと各国の統計情報を比較するデータを参照することができます。他にも、日本
の基本データを見る、都道府県別に比較する、今と昔を比べるなどの統計情報が公開 されています。人口ひとつをとっても、世界各国のデータと比べたり、日本の過去と
現在を比べたり、都道府県別に見るなど、いろいろな切り口が提供されています。エ クセル形式でもデータが提供されており、統計データを分析したり、グラフを作成し
たりする際に便利です。
「データ調べの達人」では、統計の問題が初級・中級・上級の難易度別に出題され、 実際のデータを調べながら解いていくことになります。例えば、アメリカ合衆国の失
業率と日本の失業率を比較する問題(選択式)があり、これを上述のデータ倉庫を利 用して調べることになります。また、ヒントとして、必要なデータへの直接リンクも
提供されています。ある課題について、子どもたちが図書館に調べにいくような感覚 で、学習を行うことができます。
「データきっずネット」は、学校での実践事例が紹介されていますが、まだデータ 数は少ないです。「統計博士の研究室」では、統計に関する基礎知識の簡単な解説が
あります。「学校の先生がたへ」と意見を収集するページがあるように、学校での利 用を意識して作成されているようです。
●(株)エフアイエスジャパンによる「Fish Info Service」(http://www.fis-net.co.jp/)
Web上では各種産業の情報が提供されていますが、その一例として水産業の情報を 提供するサイトを紹介します。ここは、水産業の情報がまとめらており、常に市場の
最新情報を得ることができます。関連企業の情報もあります。日本だけでなく、世界 各国の情報も見ることができます。
「市場・マーケット情報」は、現在(最新)の各魚市場のレートや、冷凍魚の相場を 見ることができます。世界各国のレートもわかります。期間を設定してグラフ表示を
して、価格推移を見ることもできます。
「マーケットレポート」には、魚貝類の市場での状況が、レポートされています。 例えば、価格や消費の状態や分析、例年との比較などが載っています。ただの統計デー
タよりも、画像がおりまぜられ、非常に臨場感のある情報です。
「日本の水産関連情報」では、日本の漁港の紹介や、水産関係の機関の紹介や、月 ごとの輸入通関統計などを見ることができます。漁港の紹介では、その港での漁獲量
だけでなく、観光情報なども合わせて載っています。
●社楽の会のページ(http://www.tcp-ip.or.jp/~syaraku/syaraku.htm)
社楽の会は、愛知県尾張北部の小中学校社会科教師によるサークルです。社会科を 中心に情報交換や授業実践を行っているとのことで、このサイトからは、活動報告や
授業実践例、リンク集など、社会科に有用な情報が多く提供されています。
「社会科リンク集」は、地理、歴史、公民等に分類・整理された社会科のためのリ ンク集で、1000件を越える登録数となっています。国際理解、環境、人権福祉や、学
習方法といった分類もあります。平成9年に国立教育会館学校教育研修所で行われた 情報教育指導者講座の受講生が作成したものを、随時更新しているようです。教師の
視点に立って厳選されたリンク集であり、今回紹介するサイトのうちのいくつかも、 このリンク集に登録されていました。
「これまでの実践」では、会員のこれまでの授業実践や授業のネタ等を中心に報告 されています(ほとんどは社会科のもの)。授業の実際が詳細に解説されており、参
考になります。
「キッズ学習ページ」は、小・中学生の調べ学習や自由研究のためのページとして、 夏休の自由研究のやり方などが紹介されています。
「生涯学習事典」は、生涯学習とは何かの解説や、用語事典、関連情報へのリンク など、生涯学習についてまとめているページです。
他にも、簡単な社会科の用語解説がある「社会科用語集」や、環境について調べた生 徒の作品や資料一覧などがある「環境問題のページ」、さらに「伝統・文化のページ」
や「平和教育のページ」など盛りだくさんです。
また、「報告集」として、これまでの活動の報告がすべてWeb上に挙がっています 。その報告の中にも、役に立つ情報が多くあります(社会科に関連するサイトの紹介
などもあります)。
●長崎教育センター地理歴史科・公民科ホームページ(http://www.edu-c.pref.nagasaki.jp/Asp/syakai.asp)
長崎県教育センターのサイト内にある社会科のページです。主に長崎県のための情 報であるので、長崎の教職員しか利用できないコンテンツもあります。
このページには、地理・歴史・公民や、小学校の学年別にわかれた「リンク集」が あります。さらに、単元ごとにも分かれており、授業に使えるサイトを探し出しやす
くなっています。また、調べ学習のマニュアル(長崎県下の各校でプリントアウトし て利用可能)があり、各メディアを利用した情報収集の方法などが解説されています。
自由研究のヒントや、長崎県の伝統工芸の紹介もあります。
「ワークショップ」では、ワークショップで使う技術が解説されています(例えば、 ブレインストーミング等のやり方など)。また、「学習指導案」として、ワークショ
ップの技術を活用した授業(小学校4年生のごみとわたしたちのくらしなど)を紹介 しています。
他にも、研修講座の紹介や、論文、社会科の素材リスト(「よろず陳列棚」)が提 供されています。
●天内先生による「社会科学習のページ」(http://siva.cc.hirosaki-u.ac.jp/usr/amanai/amanai/index.html)
小学校の先生による社会科のホームページです。「青森からの情報発信」は、小学 生の学習資料として作成したもので、地元の特色(文化)を紹介ています。「日本一
のりんごづくり」として、りんご農家の仕事が紹介され、「雪国のくらし」として、 北国ならではの冬の生活を紹介しています。例えば、弘前・青森・八戸市の、地域に
よる雪の量の違いなども解説されています。このような地域教材は、自分たちの学習 に使えるだけでなく、他の学校からも利用可能な情報です。お互いの地域についての
情報を公開し参照し合う学校間交流(共同学習)なども考えられます。
「歴史クイズ」では、日本史に登場する人物42人についてのクイズが出題されます。 「調べ学習のページ」は、社会科の学年別のリンク集です。「ジュンちゃんの探検弘
前」は、陸奥新報NIEの欄に掲載したものを手直して作成され、5・6年生の社会科 と関連する地元の歴史的な建造物などを紹介しています。また、「これまでの実践」
では、5・6年生の社会科の実践例がいくつか紹介されています。
●(株)ロジクスリサーチインスティテュートによる「歴史DBスクリーバ」(http://www.aura-press.com/scriba/)
歴史のデータベースであり、紀元前から現代までの情報が載っています。内容とし ては、歴史年表と天皇・将軍・閣僚についての情報が載っています。歴史上の事実の
確認に利用できる電子辞書のようなものがあれば便利と思ったことが作成の出発点だ そうで、97年の7月から公開しています。
「総合索引」では、紀元前〜3世紀といった世紀ごとの年表や、すべてがまとめら れた総合年表、天皇の系譜・将軍の系譜・歴代日本内閣府が、各時代ごとに紹介され
ています。
年表には、西暦と和年号、そしてなにが起こったのかの歴史的事項が提示されてい ます。中には、人物名にリンクがはられているものがあり、その人物のプロフィール
(略年譜や、家系図など)を見ることができます。特に家系についてわかりやすくな っていますので、調べ学習等に活用できることでしょう。
2001年NHK大河ドラマで取り上げられる北条氏の情報も、最近追加されています。
●TBSによる「世界遺産」(http://www.tbs.co.jp/heritage/index-j.html)
TBSの放送番組「世界遺産」のホームページです。過去に紹介した世界遺産につい ては、「前回までの世界遺産」、「世界遺産検索」で見ることができます。各遺産に
ついてのオンエア情報(すなわち遺産紹介)や、簡単な概要、番組内容のスライドシ ョー(風景を撮影した写真を数枚)を見ることができます。テレビ局のものだけに、
画像は鮮明で、いくつかの方向から撮影しているなど、ただ教科書でひとつの写真を 見るよりは、より具体的なイメージを持つことができます。「パノラマ」では、アン
コールワットなどを360度見渡すこともできます(VR機能を利用)。「世界遺産バー チャルツアー」では、気候や風土が築き上げた建築物たちなど、あるテーマに基づい
て、遺産の情報がまとめられています。子供のために、簡単な遺産紹介(WH for KIDS)もあります。
また、先月紹介したインパクには、「唐招提寺プロジェクト」というパビリオンを
出展しており(http://www.tbs.co.jp/daiji/top/)、唐招提寺に関する詳細な情報 が紹介されています。
以上、社会科関連のホームページを紹介してきました。
Webを利用することで、教科書や資料集よりも、最新の情報や、現場(当事者)か らの情報、そして臨場感のあるマルチメディア情報など、リアルな情報を受け取るこ
とができます。その反面、膨大な情報の中から必要(良質)な情報を選択することは 時間のかかる作業であり、子どもたちにどうやって提供していくかも問題となります。
調べ学習を行うにしても、例えば、導入時の動機づけや、魅力的な課題の設定、調べ る道具(リンク集等)の提供、出口での成果の評価、学習の発展などのストーリー立
てをきちんと考えていくことが必要でしょう。
また社会科は、地理的・文化的・歴史的な違いを見つめていくので、学習の過程で 自分たちのことを振り返る必要が生じます。インターネットは、地域差等を実感する
学習を支援するだけでなく、振り返りの学習の重要性を子どもたちに悟らせる(交流 ではその必要性が生じる)ことにも活用できます。
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