福祉関連のホームページ

 岩手県立大学ソフトウエア情報学部 市川 尚

 

はじめに


 今回は、福祉関連のホームページを紹介します。福祉については、総合的な学習の時間の学習活動の例のひとつ(福祉・健康)として、文部省が掲げています。総合的な学習は、各校で独自に行っていくものですから、これに準拠する必要はないわけですが、それでもこのテーマは、これまで以上に注目されていくことになるでしょう。
現在Web上にはたくさんの福祉関係の情報があり、福祉団体・福祉系企業をはじめ、福祉的な活動に携わる個人を中心に公開されています。活動の紹介や募集から、福祉機器の紹介、福祉関連のことを学ぶ教材など、内容も様々です。
ホームページは、他のメディアよりも、当事者たちの直接的な意見が伝わってくることがあります。福祉という心を含めた問題の場合には、ホームページの生の情報が得られるという利点も大いに生かせることでしょう。また福祉の学習は、直接交流や体験学習が望ましいと言われてきた面があるかと思いますが、一方で非常にデリケートな側面もあり、調査や直接交流が困難な場合もあるかもしれません。そういった場合もホームページ(インターネット)が有効に機能することでしょう。授業づくりの参考になる授業実践例から、事前調査のための道具、実際の直接的な学習教材、意見の論拠を強化してくれるデータの収集など、授業へのホームページの用途は豊富にあります。
本連載の中では、1998年1月号に関連した内容を一度取り上げました。また、総合的な学習の紹介(2000年1月)においても、少しですが関連するホームページを紹介しました。今回は、その中で紹介しなかったものを中心に紹介します。

 

福祉関連のホームページ紹介


中央学院大学井村先生による「福祉と障害者支援情報の総目次」(http://rel.chubu-gu.ac.jp/soumokuji/;図1)
 外見はシンプルなリンク集ですが、福祉関連のものとしては、登録サイトの件数の多さと質の高さでおそらく国内最大規模だと思います。福祉や障害者を支援するための情報がたくさん公開・交換されている中で、サイトが散在していて探しにくいという現状から、このリンク集を始めたそうです。登録サイトは、肢体不自由・視覚障害などの障害別や、対象別、市民活動や団体からの情報、障害者の支援,各種機器、バリアフリー,専門分野別、関連資料などの項目に分類整理されており、探しやすくなっています。福祉関連の情報を探す場合には、ここをスタート地点とするとよいでしょう。

TOSSによる「中学教育フリーウエイ」(http://www2.nkansai.ne.jp/users/freeway/;図2)
TOSSはTeacher's Organization of Skill Sharing(教育技術法則化運動)の略です。このページの「ジュニアボランティア教育(JVE)」では、中学校の福祉・ボランティア教育に関する実践が多数紹介されています。ジュニアボランティア教育とは、年間1000時間の授業うち、とりあえず3時間、「人に役立つ」勉強をしようという運動だそうです。ボランティア教育に関するカリキュラムの作り方と留意点や、実践事例の紹介などがあります。授業実践例は、中学生の車椅子体験プログラム,アイマスクをしてまちに出る、点字で名刺をつくる,町の福祉センターの訪問など豊富に紹介され、それぞれに授業のアウトライン(何にどれくらいの時間をかけるか)や、準備、留意点などが解説されています。福祉の実践を考える上で参考になることでしょう。

NTT東日本による「ハローネット・ぼらんてぃあ」(http://www.wnn.or.jp/wnn-v/;図3)
 ボランティア関連の情報が集まっており、ボランティアについて理解したり、その現状を知ったり、参加するためのきっかけともなる総合的なサイトです。「ボランティア情報」では、ボランティアの募集や、イベント情報などが載っています。全国のボランティアの活動紹介もあり、どんな活動をしているのかがわかります。作文コンクールでは、ボランティアを題材とした、小中高の子どもたちの作品を見ることができます。「学校・学生」では、日本各地の学校におけるボランティア体験学習談が紹介されており、授業を行う上で参考になることでしょう。「ボランティアデータベース」には、用語の解説や、Q&Aなど、ボランティアへの理解を助ける情報が載っています。「リンク集」もかなり充実しており、パソコン利用を支援する団体のページ等のような分類項目の中で都道府県別に整理され、自分の身近で行われているボランティアに関連した情報を簡単に探し出すことができます。

E&C名古屋の近藤さんによる「バリアフリータウン」(http://village.infoweb.ne.jp/~fwhk4954/;図4)
バリアフリーにしていくために、何が必要なのかがわかるサイトです。目・手足・耳の不自由な人たちの自立支援や、人・地球・高齢者にやさしい街づくりに関するテーマごとに、障害を持つ方々がどのような場面で困難を感じ、私たちがどのように接したらよいか(エチケット)や、自立支援をするためのバリアフリーのあり方などが解説されています。障害を持つ方々にとって、私たちが普段なにげにやっていたことが実は邪魔になっていたことや、身の回りのものがいかに不便であるか、逆に一見なんでもないと思っていたものが、実はバリアフリーを考慮していたことなどを気づかせてくれます。身近な生活に関する話題が多いので、子どもたちにとっても理解しやすい内容だと思います。

日本電子工業振興協会(JEIDA)による「こころWeb」(http://www.jeida.or.jp/document/kokoroweb/;図5)
 福祉関連のページとして、ここは多くのサイトからリンクが張られていました。主に障害者の自立の支援とコンピュータとの関わりを取り上げているサイトです。
 「こころリソースブック」では、障害者の自立を支援する目的で、特に「コンピュータ操作を補助する装置」を中心に紹介しています。障害を持つ方々が、コンピュータの操作上でどんな困難があるかがわかり、さらにそれを支援する方法や製品の紹介が載っています。製品の種類の多さや、その工夫に驚くことばかりです。それ以外にも、「様々な活動を補助する装置」が紹介されています。
 また、「ネットワーカー事例集」では、障害を持った方々がネットワークを活用している事例が紹介されています。「こころWebからの提案」では、障害者や高齢者をはじめとして誰にでも読めるようなホームページを作るための情報が載っています(このようなことを「アクセシビリティ」と呼びます)。実際に良い例や悪い例を提示しながら、わかりやすく解説されているので、自分でホームページを持っている方は確かめてみるとよいでしょう。

東京グリーンシステムズによる「手話教室」(http://tgssvr.tgs.co.jp/signlist.htm;図6)
 このページでは、手話を学ぶことができます。手話教室はLessonごとにわかれ、簡単なものから難しいものへと学習していくことができます。Lesson数は130にものぼり、挨拶にはじまって、緊急編やホテル編などの応用的なものもあります。教材には動画が活用され、手話の実際の動きを見ることができるので、わかりやすくなっています。また、指文字についても、50音が実際の手の画像ととも紹介されています。「新・手話教室」が準備中ということですので、今後の展開が楽しみです。手話を学んでみたいという場合は、このサイトを活用すると良いのではないでしょうか。

厚生省ホームページ(http://www.mhw.go.jp/;図7)
 話題の介護保険制度をはじめとして、福祉関連の情報が多く公開されています。「厚生省統計データベース」には、生活保護や障害者の状況などの、近年の統計データが公開されています。「厚生白書」では、現状や将来の政策などを知ることもできます。法令等のデータベースもあります。調べ学習や、データ収集等に活用できることでしょう。

自薦・他薦のホームページ募集中! ichikawa@soft.iwate-pu.ac.jpまで。
ホームページ紹介記事バックナンバーhttp://www.iwate-pu.ac.jp/home/ichikawa/new/

図1 「福祉と障害者支援情報の総目次」
図2 「中学教育フリーウエイ」
図3 「ハローネット・ぼらんてぃあ」
図4 「バリアフリータウン」
図5 「こころWeb」
図6 「手話教室」
図7 「厚生省ホームページ」


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