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出張願提出に関してのメモ (平成 19年11月26日)

 

基盤研究費 外国語教授法に関する研究

平成 20年2月21日  ? 3月12日(21日間)

 スペイン北西部ガリシア地方のコルーニャにあるスペイン語学校の演劇クラス、およびスペイン社会、ガリシア社会概論のクラスを受講し、演劇を利用したスペイン語教授法の習得を目指す。また、ガリシア地方の多言語使用状況について調査し、同時にこの地域の語学学校を視察する。

 

 これまで担当するスペイン語クラスにおいてビデオ撮影などを取り入れたプレゼンテーション、ロールプレイによる会話練習など、コミュニカティブアプローチを中心とする教授法の研究を実施してきた。スペイン語クラス後期には、グループ活動によるプレゼンテーションを行うが、スペイン語劇を行うグループが増加している。習得した言語レベルに合わせるために発表内容には制約があるが、その内容工夫の過程で映画作品をもじったコメディ作りにするなど学生たちの創意工夫が見られ自発的な学習が行われている。これらの学生たちの学習姿勢を後押し、さらに授業活動方法の研究を深めるために、演劇を利用したスペイン語教授法の習得を目指す。

 これとは別に、スペインは多言語使用の国でもある。今回調査を行うガリシア地方はカタロニアバレンシアおよびバスク地方と並ぶ二言語併用地域である。ガリシア地方の二言語使用状況の視察を通し、スペインの多言語使用状況についての理解を深める。

 また、ここ数年、本学でも一年、もしくは半年の期間でスペインの語学学校へ留学する学生が見受けられるようになってきた。また、2、3週間の短期スペイン語学校への留学に関しては、毎年数名の学生が留学している。長期であっても短期であっても留学することを決めた学生の学習態度は格段に向上することを本研究者は確認している。しかしながら、本研究者はラテンアメリカを中心に研究を進めてきたためにスペインに関する経験が浅く、語学学校などについての知識も不十分である。そのため、スペインの語学学校を視察し、特に学習者の動機を高めるための教授法がどのように実践されているか調査する。

 

復命書記載事項( 2008/3/13)

スペイン語会話クラスおよびスペイン現代史およびガリシア地方文化クラスを二週間受講した。会話クラスでは発話を促すための様々な手法が駆使された。その手法を具体的に本研究者が取り組んだことにより、授業のなかに取り入れ実践する方向性がつかむことができ有意義であった。

 また、現代史およびガリシア地方の文化の授業により、スペインの多言語状況を把握することができ有意義であった。ガリシア地方はガリシア語とスペイン語の二言語併用地域であるが、言語のみならず文化的にもケルト族の文化地域となっており、スペインを代表するフラメンコや闘牛の文化とは全く異なる文化圏となっている。この多言語状況および文化の多様性、地域主義の状況については、スペインのスペイン語使用状況、社会事情に関する知識として授業で正しく提示したい。

 また、二週間のクラス受講、ホームステイ滞在により、学生の短期留学の様子が理解できた。また、学校側の話などから日本人学生の種々の文化的摩擦の問題点なども明らかになった。現在作成中の留学指導ホームページ作成にこの結果を加えたい。

 

2008年2/25-3/8 ガリシア地区スペイン語学校パラライア授業内容

 

注:会話クラス(演劇クラスが学校側の都合でキャンセルになったため学校側と相談し、アクティビティ中心の会話クラスを受講した)

 

会話クラスの目標(学校側の説明)

•  議論することができる会話能力の養成

•  自分の知識のなかで、その場で議論ができる能力を養成

•  その能力の養成を通して、自分の見解を主張する力をつけることを目標としている

 

2/25 月曜

1.「質問に答えてください」というスゴロクでゲームをする。

スゴロクの各所に質問文が書いてある。サイコロを振り、そこに書いてある質問に各自答える。「好きな映画は?」「最近読んだ小説は?」などといったシンプルな質問が並んでいるスゴロクでゲームをしながら、話を進めて行くやり方。

2、宇宙人から地球人のメッセージより、地球を破滅するが12人だけ助けて他の惑星へ移住させる、という命令書をもとに、相談して12人を選択していく。移住者としてどのような人を選ぶのか、という会話をして、12人を決定させる。

 

2/26 火曜

•  カードに書いてあることを話す。裏返しにして並べ、引いたカードに書かれてあることについて自分の国の事情について話す。カード内容は、自分の町、自分の好きな場所、趣味、お国料理、自分の国の政治、自分の国の映画、自分の国の伝説、店の営業時間、住居、気候、交通機関、祭り、人柄など

•  写真を見て、お話をつくる練習。

 

2/27 水曜

 現代スペインの抱える社会問題、高齢化、物価高に直面する年金生活者の姿、急増するドメスティック・バイオレンスの被害者などをテーマに、スペイン現代映画監督が集まりショートストーリの映画を作成した。それを鑑賞しながら、討論。映画の中身を要約する、テーマについて映画で内容把握ができたか確認、不明点の説明、および討論、自分の国との比較、などをクラスで話し合う。

 

2/28 木曜

•  カードに対立するテーマが書かれてあり、それに沿って二手に分かれ、ディベートをする。「古い家具対モダンな新しい家具のどちらがいいか」など。

•  ガリシア地区で起きた石油タンカー事故による環境汚染特集の雑誌記事を読み、その内容についてそれぞれが説明、議論する。「浜辺に住み着いていたドイツ人が浜辺に彫刻を作成していたが、それがすべて汚染され悲観のあまりに死亡してしまい、記念作品として残されることになった話」「日本人青年が一ヶ月石油除去作業に加わった話」「政府が事故に対して対応せず、汚染が拡大した話」など

 

2/29 金曜

•  裁判形式の討論。紙に裁判で争う内容が指定してある。夫婦が離婚することになり、子供の養育権、財産一覧、家族経営のアパレル産業の株、スイスの山小屋と山、名馬、ビーチにある土地、自家用飛行機、家族の写真全部、古城、海外旅行券、自宅、などを話し合って、どのように分けるかを議論する。夫役、妻役、二人の共通の友人、裁判官と三者に分かれて話を進めて行く。友人は議論の途中で思いがけない証言をしなければならないことになっている。

•  実際にあった新聞記事を渡される。要約をした上で、記事に出てくるニュース該当者へのインタビューを5つ準備する。要約が終わった時点で、要約を読み上げ、残りの人がインタビュー内容当事者という役柄になり、テレビ報道記者としてインタビューをする形式。新聞記事内容は「漂流した人をサメの攻撃からイルカが守った話」「俳優ジョージ・クルーニーのペットの豚が死んだ話」など

 

2/30 土曜 学校遠足 サンチアゴ・デ・コンポステーラ

 現地に向かい、世界的に有名な巡礼の地を訪ね、建物の説明、町の説明を受ける。キリスト教を布教させるための伝説だけで町ができあがっていった歴史を学ぶ。この巡礼の教会横の建物がサンチアゴ大学学長の部屋になっていて、向かいが市庁舎、横が名士の建物、など。

 

3/3 月曜

 実際の新聞記事の最初の一行を教師が読み上げる。そのあとのニュース内容を自分たちで創作する。その後、発表し、討論。「ローマでサンタクロースに反対する抗議集会が開かれたーーーー」と読み上げられ、その後を創作する。どういう集会で、なぜ開催されたのかを自分で作り上げ記事を作成する。

 

 

3/4 火曜日 感情の言葉の一覧 読み合わせ、番号の振ってある表に音楽を聴きながら、それからイメージする言葉を書き込む、それとマッチする写真を選ぶ。机の上にいろんなイメージの写真を広げておいてある。13曲聴く。主に民族音楽風のものが多いが、クラシックではなく、最近の人のもの。演奏者の説明もあとでコメントされる。最後に写真を一枚選ぶ、ストーリーをひとつ語る。

二つ目 

小さなカードに絵とその裏に言葉。各自5枚ずつ。フォーク、ろうそく、鏡、皿置き、針、ボタン、首飾り、など。それを当てる。すぐ分かるヒントではなく、分かりにくいヒントを言う。どこの家にでもあるもの、など。当てっこをしていく。

 

3/5 水曜日

 アクティビテイ1

 表現20個程度を読み合わせ、その意味の説明。物欲しそうな顔、指をしゃぶる子どもではないのだから騙されないよ、飴と鞭、などの表現。レフレインとはまた別。そのあと、二人が言い争う場面を想定し、二人が言い争い、それぞについて表現を使って第三者がコメントする形で表現を使う練習。母親が娘にパーティに良い服を着るよう説得する場面、銀行で借金を依頼する男とそれを断る銀行側、などの言い争い。

15枚の絵カードを3人で並べてひとつのお話を作る。ひとつの絵についてそれぞれが話しをして話しを進めて行く。上級だと、カードを裏返しにして、開けた絵の順に話を作っていくなどするともっと難しくなる。

ミスタービーンズを見ながら、それをスペイン語で話していく。先生が単語や言い回しを終わった時点で修正。ビーンズはセリフがなく短いので使いやすい。

 

3/6 木曜日

•  タブーゲーム:ある言葉を当てるゲーム。カードにその言葉が書いてあるその言葉に関連する類義語もしくは対語が5つ書いてあり、カードを持ってる人はその言葉を他の人が当てるようなヒントを出すが、その際に関連する5つの言葉を使用してはならない、と言った設定。感情表現する語彙のカードが使用された。

•  ゲームの後、自分たちでそのカードを作成し、自分たちで作成したカードで同じゲームを行う。

「鉛筆:手紙、書く、筆記用具、事務用品、学校」とあれば、鉛筆を当てさせるのに、「どこにあでもあるもの」「この部屋にあるもの」など、のヒントを出して行く。

•  スペイン観光局が作成した宣伝用ビデオを鑑賞。まず、カステジャーノ地区の5分程度の観光促進ビデオを見る。そのあと、ガリシア地区のビデオを見るが、台詞の音を消音で見る。その内容に関する台詞をみなで創作していく。

 

3/7 金曜日

ガリシア出身の作家 マヌエル・リバスの小説「家具職人の鉛筆」を映画化したものを鑑賞。実在したコルーニャの医師とビジネスを営む家庭の娘との恋愛を中心にスペイン内戦の様子を描く。二人の孫がパラライアの学校長の友達でスペイン語教師をしているとのこと。ところどころ停止しながら教師が説明をする。コルーニャの灯台のところで共和党員が射殺される場面では、現在その場に弔いの石碑が建っていることや、現在も建物として利用されている当時の刑務所建物などを説明。また、サンチアゴや、刑務所として利用されていたビーゴ近くの島などの説明がなされた。

鑑賞後、映画内容に関する質問が 10個。

 

カードに書いてある内容の言い訳を答える練習。

「きのう、テレビを窓から投げているのを見たけど」「泥だらけになってるけど」「パジャマと部屋靴でクラスに来てるけど」「ポルノショップに入ってるところを見たって言ってるけど」「きのう車を追っかけてるとこを見たけど」など

 

3/8 土曜日

遠足 コルーニャの北に位置するサンアンドレ地区:サンチアゴ・コンポステーラが世界的にキリスト教徒の巡礼地になったのとは裏腹に誰も訪ねてこないので、サンアンドレが悲しんだら、神が「心配しなくてもいい、死んだ人たちが巡礼に来るようにするから」と答えたという伝説から、死んだ人を連れて行く巡礼の地として知られる。「生きてるうちにそこを訪れなかったら死んでから訪れる」と言われている。死者を連れて行くときは、墓を3回叩いて「今から巡礼に行きますよ」と声をかけて、サンアンドレに着くまで、声を頼りに付いてくる死者が迷わないように、ずっと話し続けなければいけないとのことで、バスなどで、隣の空いてる席に話しかけてる人がいたら死者を連れて行ってる最中だとのこと。

 

文化クラス

ガリシア文化2回

スペイン現代史2回

 

ガリシア文化

スペインの文化とされるものを絵にしてあるものを見てスペイン文化について語る。フラメンコ、闘牛、広場、ドンキホーテなどの絵が書いてある。

スペイン事情として10個程度の質問を並べ、本当か嘘かを答えさせたあとで、それぞれの事項について説明がなされる。「 17の自治区がある」「温暖で冬がない」「スペイン人はフラメンコを踊る」などと言ったステレオタイプな事実を並べ、事実がステレオタイプなイメージとは異なることを指摘していく手法。

細長い紙切れに説明文が書いてあるもの、写真の一覧、語彙、の三種のものを手渡され、その三つを組み合わせて行く。説明文を読み、それに該当する写真と言葉を選ばさせながら、文化知識を獲得していく手法。

 

スペイン現代史

19世紀後半の共和制から現代までを手短に説明。特色は共和制樹立から常に連邦制と統一派で常に対立を続けてきたこと。

1936-1939の内戦は大義というよりはそれを理由として日頃の恨みをはらすような醜い戦いとなり、後に大きな傷を残したこと、75年以降の民主化への移行はフランコ独裁政権のもとにあった国王主導のもとで独裁時代を清算するような手法でない方法で進行していったことが大きな特徴である。内戦で深く傷ついたため、独裁から民主化へ移行するのに再び内戦に陥らない方法を選択した。現在では、東欧などの民主化移行のモデルとされている。

 

ガリシアとスペイン

学校を中心にコルーニャの町の建物を巡りながら、コルーニャの歴史とスペインの歴史に触れる。コルーニャは港町で19世紀に英国が攻めて来た時に、町の女性が先頭を切って戦い、英雄となっていること。スペイン内戦では市議会が軍隊に攻められ市長からとらわれた歴史があること、 60年代にサラという企業を起こし、世界企業となるまでになり、繊維産業を町にもたらしたこと、石油精製基地であること、造船業があることなどを学ぶ。